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第十六部最終回 挿絵!

挿絵(By みてみん)





今日も伊勢海町は平穏!

太陽がとてもまぶしい!


「もうすっかり夏だな!」


水しぶきを上げて全力クロールをしているのは高田浩二!

この物語の主人公である!








「ねえ高田。君は道路の真ん中にある水たまりの中で何をやっているのさ? 時期もまだ春だよ」


そう言いつつ遊泳中の高田の上に座り込んでざる蕎麦を啜っているのは二藤新人!

高田浩二の友人である!


「実は、俺には今悩みがあるんだ……。なろうで投稿した作品が……全くといって良いほど評価されないんだッ!!」


「高田の作品はぶっちゃけ面白くないからね。読んだことすら無いけど」


「高田さん! 心配は要りません! うー、冬は本当に寒いですね!」


そう言ってから水深3センチの水たまりの中から這い出てくるのはびしょ濡れ騎士鎧(防寒タイプ)のテンプレのヤス!


ちなみに現在の本当の季節は――多分、秋!


「さておき高田さん! あなたの作品には致命的な弱点があります!」


「何だとヤス!? 俺の作品に致命的な弱点……!」


「それは――見てくれですッ! 高田さんの作品は読んでも印象に残らないんです!」


「ヤスの言うとおりさ。見た目のインパクトは大事だからね。とりあえず作品に挿絵でも入れてみたらどうかな?」


「なるほど……挿絵かッ!」


早速地下室に戻って文章に挿絵を入れる高田浩二!

それから、1時間が経過した!


「おや、大分早かったじゃ無いか高田。もう完成したのかい?」


「ああ! 早速作品に挿絵を入れて再投稿してみたぞ! これを見てくれッ!」












挿絵(By みてみん)














「まず『ぼくのおかあさんは、とってもやさしいけれど。ぼくはすてきないせかいに、いきたいなあ』という文章に入れた一枚だッ!」


「――――――――高田。君の幼少期に一体何があったんだい? というかこれ絵じゃなくて写真じゃないか! 自作の小説なんだから自分で絵くらい描きなよ!」


「わかっているさ。心配は要らない! これは前菜だ! きちんとヒロインくらい自分で書いてきたさ! これが主人公が異世界で出会う最初のサブヒロイン。『鹿児島カナミ』だ!」



















挿絵(By みてみん)











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「た……高田…………………………ッ」


「なんだか高田さんの作品が、悪い意味で有名になっているみたいです! 外部掲示板で『呪われた作品』とか『自殺する前の少女が書いた作品』とか散々な言われようです! 終いには考察サイトとか作られている始末です! まだ死んでいないのに感想欄で作者の冥福を祈られてます! 二重の意味で作品が死んでしまいました!」


『これを見たおばあちゃんが心臓麻痺で死にました。来年のお年玉弁償して欲しい。どこに訴えればいいの?』


『絵心以前に人としての心が無い』


『印象派とは真逆の造りで悪い意味で印象的である。大衆に対して公開する絵画としては如何なものか』


「チクショウッ!! 駄目だ! 俺には絵のセンスがひょっとすると無いのかもしれんッ!!」


寄せられた考察を見て水たまりの上に寝転がってじたばたする高田浩二!


「仕方ないね。こうなったら、他の人に描いてもらうしかないみたいだ」


二藤に連れられて、アスファルトの上を2時間ほど泳いだ高田はボロボロのアパートの前に到着した!

そう、ここに住んでいるのは絵挿年老えさしとしろう

伊勢海町で最も有名な年配の絵師で、プロアマ問わず注文を受け付け表紙と挿絵を描きまくる、正しく神のような存在である!


「絵挿先生に可愛い女の子の絵を描いて貰えば確実に高田のなろう小説に人気が出るはずさ。僕もよく高田が拷問されている絵とか描いて貰っているよ」


「なるほどな。だがどうやらその先生の様子がおかしいぞ! 見ろッ!」






「先生~~ッ! ようやく見つけましたよ絵挿先生! お願いしますよ! あの作品の絵を描き直してください!」


そこには、廃アパートの部屋のドアをバシバシバシバシバシバシ叩いているスーツの男性!

中から年寄りの声が聞こえてくる!




『あ~いやじゃいやじゃいやじゃいやじゃいやじゃ! ワシはもう描かん! 帰ってくれッッ!』




「おい! そこのスーツのアンタ、一体何があったんだッ!?」


「実は私はラノベの編集者でして。絵挿先生に依頼した担当ラノベの挿絵の『メインヒロイン』が注文と違う状態で返ってきたのです。ヒロインが美味しそうに料理を食べる一枚絵を頼んでいたはずなのに、実際の絵はヒロインが逆に料理されて食卓に並んでいるものだったのです! この絵を見てくださいよ!」


「おお! 凄いな! 血抜きもちゃんとされているし実物と大差ない! 素晴らしいリアリティだ!」


「異世界でヒロイン飯ですね!」


「どうなんだろうね。これはこれで需要があるし、別にいいんじゃないかな?」


「実は私も結構そういうのが好きだからそれはそれでいいのですが、絵挿先生が行方をくらましてしまいまして。……ようやく見つけたはよかったものの、拗ねてこの部屋から出てきて貰えずに困っているのです」


スーツの男――編集者の言葉に納得する二藤!


「まあ、絵挿先生は暗黒のなろうファイターに命を狙われているからね。伊勢海では珍しく割とテンプレが嫌いな人みたいなんだ。僕ももし彼が絵を描いてくれなかったら今頃とっくに排除していたよ」


「なるほどな! 確かに、玄関ドアの前に配達の牛乳瓶と新聞紙が溜まっている……絵挿年老はここに引っ越してから長期間外に出ていないようだなッ!」


そう推理してから牛乳瓶を一つ取り出し蓋を開け、新聞紙をたっぷりと湿らせておやつ感覚で口の中に放り込む高田浩二!


最近流行(ブーム)の孤独死でも狙っているんじゃないかな?」


「このままでは、部屋が死体で汚れてしまいます!」


「いや、立地も良いしこの部屋が事故物件になるならむしろ俺が住みたいッ! 今は夏だし、事件性を高めるために死体が液状化するまで是非粘ってほしいものだな!」


「まぁとにかく。私は先生の説得を諦めました。本の方は出版社と私がろくにチェックしないからそのまま書籍化されちゃったし、作者さんにはこの絵の『ヒロイン調理路線』でなんとか頑張って貰おうと思います」


「ああ、頑張ってくれ! この“先生”は俺達に任せろ!」







スーツの男が去った後、間髪入れずにその腕力で鍵のかかった鉄のドアを片手で引きちぎり侵入する気弱な高校生高田浩二!

部屋に踏み込んだ瞬間! 仙人のような年寄りに、持っていたノートパソコンを強奪されて壁に投げつけられる!


「何するんだこの野郎! 器物破損罪だぞッッ!」


「やかましいわい! オヌシはそのパソコンでワシに物語を見せるつもりだったんじゃろう!? 『こういうベタな物語でこういうヒロインを描いて欲しい』って言ってくるつもりだったんじゃろうッ!? ベタなんてイラストだけで充分じゃッ!!」


キレる高田にキレ返す仙人のような見た目の老人、絵挿年老!


「あんたが絵挿年老か! 正しくその通り! 貴様に俺の作品の女キャラを描いて貰うぞッ!」



「あ~~~いやじゃいやじゃいやじゃいやじゃ! もう美女を描くのは嫌なんじゃ! いっつもそうじゃ! プロでもアマでも可愛い女の娘を描いて欲しいっていう注文ばっかりじゃ! 最初はそれでよかったわい! だが最近はもっと別の物を描きたいんじゃ! 現代とかメカとかオリジナリティ溢れるモンスターとか!」


「それはもう仕方ないですよ! ラノベは表紙の可愛さが売れ行きの9割だし、選ばれる作品は異世界ファンタジー一強だし、オリジナルのモンスターなんて出しても読者がよくわからないから編集が嫌うんです!」


「絵挿年老とやらッ! 金なら言い値で出す! だから頼む! “悪魔”に魂を売って可愛い女の子の絵を描いてくれッ!!」


そう言って二藤の頭を力づくで押さえつけて、自分の代わりに土下座させる高田!


「あれれ? 高田がお金を払おうとするなんて意外だね。高田は高田の癖に暴力で解決しないのかい?」


「俺は絵を描く大変さをよく知っているからな! 『無料(タダ)で描いてくれ』なんて実際虫が良すぎるッ! 言語道断だろッ!」


「金なんぞいらんわいッ! どいつもこいつも女、女、女! ワシもたまにはもっとちゃんとした絵を描きたいんじゃッ! 主人公が男二人で馬に乗って地平線の彼方に去って行く絵とか描きたいんじゃ~~~~ッ!!」


「なるほどな……わかった! じゃあ、間を取って“主人公が美女に乗っかっている絵”でどうだッ!」


「ふぅむ、それなら描いてやってもいいわい!」


「高田さん!」


「高田! まずいよ!」


突然乗り気になる絵挿を静止するヤスと二藤!


「こうなったら、絵挿先生が描きたくなるようなヒロインを登場させるしか無いよ高田。何か良いアイデアは無いの?」


「じゃあそうだな……騎士鎧を着た美女だが実はマッチョな元男っていう設定の可愛い女の子はどうだ!」


「ちょっと奇を照らしすぎてて、気持ちが悪いですよ高田さん!」


「そんなキャラクターなんぞイメージできんわ! というかどんなヒロインでも可愛い女ならもう絶対に描かん! 描くとしても顔から下だけじゃ!!」






「ああもう! こうなったら、俺がお前の要望に合わせてあえて全然メジャーじゃない作品を一本書いてやる! 可愛い普通の女の子の媚びた絵とか絶対に描かせないから、その作品のイラストはもうお前が好きなように描けッ!!!!! 金もちゃんと払うッ! その代わり、報酬として一枚でいいから俺のテンプレ作品のために普通のヒロインを描いてくれ!」


「ほほう……そこまでやってくれるのならワシもお前の願いを聞いてやるわい! その話のジャンルもワシに決めさせて貰おう。そうじゃの……ジャンルは『VRMMO』でどうじゃ!」


(ジャンル自体は流行りの物だ! 俺なら書けるッ!!)


「いいぞ! 作品内容の要求はなんだ!?」


「主人公が無双して女の子にモテまくる展開は排除せい! 女はこれ以上描きたくない!」


「えッ!?」


「あとそうじゃな……実際のMMOプレイヤーでも納得できるくらいのリアリティ重視でやっとくれ! デスゲームとかオリジナルスキルとかそういうありえないのは一切禁止じゃ!! ヒューマンドラマこそMMOの華じゃッ!」










「――グエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!」


マジで冗談抜きに無理難題を吹っ掛けてくる絵挿年老に喘ぎ苦しむ高田浩二!


「こうなったら、もうやるしか無いよ高田!」


「頑張ってください高田さん! 私はテンプレ専門なんで今回は管轄外です!」


かくして高田浩二による絵挿主動の滅茶苦茶しんどい執筆が始まる!

絵挿が読めないとイラストが描けないため、平仮名しか使えない高田に代わって今回は二藤が間に立って原稿による変換執筆を行うことになった!!



「高田とやら。時代設定は現代の延長で書け! 今より若者の収入が低くて経済が冷え切っていてワシのような年寄りが滅茶苦茶負担になっている世界じゃ! ワシの描きたかったディストピア物じゃあ!」


「自分で言っていて悲しくならないのかッ! だが書くぞッ!!」


「それでいいわい! VRゴーグルはワシが絵として描きたいから開発経緯から製作秘話まで全部書け!」


「難しいッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!」


「主人公はパッと見、何の取り柄も無い若者で書くんじゃ! 主人公に実は隠れた才能があったとかそういうのは無しじゃからな!」


「どうやって盛り上げるんだそれはッ!!」


「ゲーム内で知り合う仲間は皆精神がぶっ壊れた大人で頼んだぞ! 草臥れたキャラを描きたいからの! 具体的にはそうじゃな――」


「ええい! ――可愛い女の子と見せかけて中身が中年の関西人のオッサンっていうのはどうだッ!?」


「よし! それなら採用してやるわい!! メインのヒロインは別に出しても構わんが顔は一切描かんからな!」


「そういえばラノベのイラストだと主人公の顔を描かないこともあるだろ!? ならむしろヒロインのほうがラノベ主人公っぽい感じにすればいい! 主人公を逆にヒロインっぽく書けば良いな! これならヒロインの顔を読者に一切見せなくて良くなる!」


「いいぞ! いいぞ! ワシも筆が乗ってきたわい!!」


「ああ! なんだか一周回って面白くなってきたし、もうこうなったら俺もやりたいようにやるぜッ! どうにでもなりやがれ!! オリジナルモンスター投入だ! 滅茶苦茶キモいデザインで行くぞ! お前も好きに描けッ!」






「高田さん。なんだか楽しそうですね。絵挿さんにちょっとだけ嫉妬しちゃいます……。私との異世界テンプレ執筆もあんなノリでやってほしいです……」


「高田も絵挿先生も、本当に異端だよね。この世界で、今一番浮いている二人だと思うよ」







「できたぞ絵挿年老! お前の望むマイナー作品が完成したッ!」


完成した物語が絵挿のパソコンを介して満を持してなろうに投稿される!

そして、わずか一瞬で数日が経過した――














































挿絵(By みてみん)



「「ウギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」」



おそらくどんな残酷な画像よりも、作品投稿者にとって空前絶後、前代未聞の酷すぎる挿絵登場ッ!!

世界のどんな歴史的名画よりも心に刺さる究極の一枚ッ!!


当然のように誰にも読まれなかった事実に、体中から血を吹いて叫ぶ高田浩二と絵挿!


「当たり前だよ高田……この作品はなろうで受ける要素を排除しすぎているよ……大失敗しているじゃ無いか! 代筆だから頭は使わないけど原稿書かされるこっちの身にもなってよ……」


「高田さんが鼻くそほじりながら投稿した作品とブクマが大差つけられて負けてますね!」


死にかけの状態でよろよろと立ち上がる高田浩二!


「ど…………どうだッ……わかったか絵挿年老! この作品が“やりたいことやった”男の末路だッ!! 時に男はな…………やりたくないこともやらないといけないんだよッッッッッッッッッッッッ!!!!!!! だから読者ウケのために、可愛い女の子を描いてくれッ!! 俺のテンプレの為にッ!!」


「そうか……それをワシに教えるためにここまでやるとは……高田浩二とやら。よくやってくれたのう。……わかった。いずれにせよ、ワシは描きたい絵を沢山描けて満足じゃ! もう充分じゃ。ワシも開き直って今度はオヌシのために描いてやる。ベッッッッッッッッッッッッタベタで、読者に媚びを売りまくる究極のクソみたいなヒロインを描いてやるわい!」


「やったぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおあああああああああああああああああ畜生………………………………………………畜生アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」


しかし! やっぱりちょっとさすがにこの結果はショックだったのかメンタルダメージを食らいまくった高田!







かくして! 高田は全力で執筆した作品を踏み台にして、絵にかいたような美少女の絵を描いて貰えることになったのであった!






果たして、それでいいのか? 高田浩二!

いや――それでいいのだ! 高田浩二ッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!








挿絵(By みてみん)

と、実際の悲しい実体験を元に当時半ギレしながら書いた第16部ですが、

元ネタの作品をどうにも捨てきれずめげずに70万字近く書いていたら927PTになりました。

要するに『ちゃんと読み切れたら名作系』のお話ですので、良かったら是非読んでみてください。

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