第十五部最終回 前作!
前作を最後まで読んだ方向けの実質サービス回です。
前回までのあらすじ!
大激戦の末、寿司屋のオッサンとの早食い勝負に勝った高田浩二!
しかし、試合終了後に普通の強盗のフリをしていた刺客による予想外の不意打ちを受けてしまい、射殺され重体となってしまう!
さらにやってくる暗黒なろうファイターの追っ手達に高田を守りつつ追われることとなった二藤とヤス!
ついでに、伊勢海町全体が暗黒なろうファイターに制圧されてしまい大ピンチ!
世界の明日はどっちだ!?
「ねえちょっと!! この車、もっとスピード出ないのかしら!?」
「急いでください二藤さん! このままでは追いつかれます!」
荷台で血塗れの高田をしっかり放置しつつ、焦っているのはテンプレのヤス!
「そんなことを言っても、この車じゃこれが限界速度なんだよ」
「じゃあなんでこの車をわざわざ選んだのよ! 他にも沢山候補があったじゃないの!」
Bol-L-Golと書かれたオンボロのガーデニング車を走らせるのは二藤新人!
「お前ら高田浩二の知り合いか……よくわからんが助かったようだな……」
「私は違うわよ! これ以上この男と知り合いたくも無いわ!」
息も絶え絶えに荷台から話し掛けてくるのは銀竜寺翼斗!
かろうじて意識はあるが、寿司の食い過ぎによる致命的な重傷を負っていた!
「――というか、もう降ろして頂戴! 砂丘から帰ってきて早々、なんで私がこんな目に合わないといけないのよ! もう本当に気が狂いそう……」
助手席に座って最初から会話に割り込みつつ砂と血だらけの継ぎ接ぎドレスを着ている女が悪嬢令子!
何故か拉致され巻き添えにされてしまった、ごく普通の転生した一般人である!
「まずいです二藤さん! 奴らに追いつかれます!」
「仕方ない……二刀流奥義! 打舞流通韻汰阿拇ダブル・ツインターボ!」
二藤の執筆能力が発動!
2WDのタイヤ跡で、物語を執筆しつつ走り続けるガーデニング車!
「……ね、ねえ。あなた。今の動きって、何か意味があったのかしら……」
「特にないよ。これは僕の自信作さ!」
何か言おうとした令子を遮って、突然鳴り響くマイク音!
『あ、あ~。あ~。聞こえますかねェ~~~ッ。中々良い感じに筆を走らせるじゃあないノォ~~~~~。コイツの続きを書きたいならさァ~ッ……高田浩二くんをこっちに寄越してくれよォ~~~~~ン! そいつはさァ……俺達暗黒なろうファイターにとって邪魔な存在なのよ~~~。こ・ん・な・と・こ・ろで、エタりたくないだろォオオオオオオオ?』
その声を聞いて戦慄する銀竜寺!
「クソ……アイツは……考え得る中で最悪の敵だ……“ジャックハンリー”……異世界ものに執着する狂気の伊勢海ピエロ。真のテンプレ――普通すぎる異世界作品を書き続けることしか認めない、完全な異常者だ! 少しでも流行ブームからズレると対象を即抹殺してくる、テンプレの悪鬼だ!」
銀竜寺の言葉を聞いて、それでも尚アクセルを踏み続ける二藤!
「だから何さ! みすみす敵に親友の高田を渡すものか! あいつらが高田を確実に殺せる保障なんてどこにもないんだ。でも、今の僕なら確実に高田を殺せる自信がある! だから最期まで高田は渡さないよ!」
「――ねぇ。アンタ達って本当に親友の間柄なの!?」
『聞こえてないのかなァ? しょうが無いねえ~~~。異世界特有の魔法マジックでも披露しちゃいましょうかぁ~なァ!! HAI、注目ぅ~~~! これから目の前のガーデニングの車が消えちゃいぁま~~~~ッす!』
そう言ってライトバンから身を乗り出したジャックハンリーが構えたのは伊勢海町の住人の自宅に常備されている、携行無反動砲!
「なるほど……どうやら向こうはまだ“遊び”のようだな」
「ちょっと! 本気なの! あんなもの撃たれたらこんなオンボロの車、只じゃ済まないわ!」
「何言ってるのさ。あんなの伊勢海町じゃジャブみたいなものだよ。僕もよく街中で車いすとかベビーカーに向かって撃つよ?」
「アンタには良心ってものが無いの!?」
『発ァ~……射ャァあああああああああああああああ!』
「ヤレヤレ、仕方ない。あれは僕が何とかするから。代わりに運転お願いね」
「そんな……車の運転なんてしたことないわよ! 私、まだ1〇歳なのよ!」
一方的に令子に運転を押しつけて荷台に飛び出す二藤!
「ふぅ……………………二刀流奥義! 『寡二少双かじしょうそうッ!』」
二つのボールペンを使って発射される砲弾を踊るように打ち落とす二藤!
――が、しかし二藤の持っていたボールペンにひびが入るというあり得ないハプニングが発生!
(なんだ? いつも僕が伊勢海の人々に撃たれている砲弾の威力じゃ無い! これは何かの執筆能力が影響しているのか!?)
間髪入れずに迫り来る悪鬼の咆哮ほうだん!
しかし、それを凄まじいドライビングテクニックで回避する令子!
「普通にすごいですよ! ここまでのドライビングテクニックを持っているのはなろうファイターの中にもそうそういませんよ!」
ヤスの声を無視して集中! 奇跡的な運転を続ける令子! ここで意外な才能が開花した!!
「苦戦は必至か……クソ……こんな時に……『アイツ』がいてくれれば……!!」
「『アイツ』って一体誰の事よ! ――――――いけない!!」
突然目の前に飛び出してきたのはおなじみ! コンビニ帰りの高校生!
そう! 伊勢海町で運転をしていると事故が起きる確率は250%!
これは二人を轢き殺して、三人目が転生する確率が約50%という意味である!
伊勢海の常識を知らなかった令子に運転をさせてしまった二藤新人の致命的なミス!
さっさと轢き殺せば良いものを、わざわざハンドルを切ってしまったためガーデニングの車がバランスを崩して対向車線の車と激突する!
――――――――――――――――――――――――――――――――
一方! ここは伊勢海町の一般的な路地裏!
何かを並べてナイフで切り刻んでいる伊勢海町の革ジャンチンピラ達!
はしゃいでいるチンピラ達の横をフラフラと通り過ぎるのは、ボロボロの外套を纏った薄汚い格好の無精ひげの男!
なぜか十字架の紋章が刻まれた棺桶を背負って歩いていた!!
「おい、汚えぞ! この浮浪者がよ! 蝿でもたかってんじゃねえのか!?」
チンピラの挑発に無精ひげの男が歩みを止めずに呟く!
「――今日の蝿はいつもと違って、随分と羽音がうるせえな」
「おいおいおい、待てよ。てめえ、どうやら死にてえようだな。伊勢海のチンピラはマジで殺るぜ?」
そう言って革ジャンチンピラが蹴っ飛ばしたゴミバケツの中から飛び出したのは、殺害され胴体から切り離された大量の老若男女の頭部!
「俺達さ、なんかこう久しぶりに『サッカー』がやりたくてな! ルール知ってるか? 名前は知ってるのに何故か思い出せなくてよォ!」
ちなみに、実際にやっている動画を見てみればわかる話であるが人間の頭は全体体重の10分の1と滅法重量があるのでサッカーをやるのにはあまり向いていない!
つまり、この発言は異世界ものにありがちなチンピラ特有の相手をびびらせるためのくだらないブラフにすぎないのである!
「――アンタら、イカレてるな。俺が山に籠もっている間にこの町は一体どうなっちまったんだ……?」
「どう見てもイカレてるのはテメエの方だろうが! おいおいおい、大丈夫か? しっかり死ねや!」
浮浪者の喉仏に革ジャンチンピラのナイフが迫る!
「――ク……オブザ――――」
咄嗟に巨大な本を懐から取り出し、何かを呟く浮浪者!
もしかするとこの落ちぶれた男――ひょっとすると………………………………ひょっとするのでは!?
――――――――――――――――――――――――――――――――
一方こちらは二藤達!
奇跡的に対向車線の車が転生に成功した為、彼等は正面衝突を免れた!
しかし、ガーデニングの車はそのままキャッツアイでバネてガードレールに激突!
座席ごと一人だけぶっ飛んだ悪嬢令子は、内政無双用に準備されていた堆肥運搬車の“積み荷たいひ”に頭から突っ込んで精神的ダメージを受けて気を失ってしまった!
残された面々は、ジャックハンリーのライトバンに追い詰められてしまう!
高田の持っていたノートパソコンだけが中空に放り出されて地面に転がった!
『はぁ~い。そこまでェ~!! 楽しい物語はプロローグでお終いだァ~~!!』
「そうはさせるか! 二刀流奥義――」
『【二藤新人のインクがキレてしまった】』
そう言ってから、取り出した羊皮紙に突然何かを書き込むジャックハンリー!
「そ……そんな。僕のボールペンのインクがもう無い……そんな馬鹿な……寿司屋の醤油で補充しておいたのに……僕は…………僕はもう駄目だああああああ!」
「二藤さんッ!」
筆を失って倒れ込む二藤新人!
『これがぁ。ボォクの執筆能力。“王道物語”主人公のボォクが必ず勝てる王道文章を声を出して書くことでそれを現実に“ある程度”反映できるのサァァァァァァ!』
今適当に考えたんじゃ無いかというくらい適当な設定の能力の前に、まさに絶体絶命の二藤達!
しかし! 突如ジャックハンリーのライトバンの横っ腹に革ジャンのチンピラが音速で突き刺きささり、そのまま貫通する!
その衝撃に耐えきれず吹き飛ぶライトバン!
驚愕する銀竜寺!
なぜなら、その視線の先に爆風を背に、棺桶を引きずりながら悠々と歩いてくるあの浮浪者の姿があったからである!
「あいつは――あの男は――――――――――お前はまさか!」
「おい。久しぶりだな…………………………翼斗よ」
そう、まだこの男がいた……! ――――――――帰ってきてくれていたッ!
「前作強一ッ!」
銀竜寺のその呼び声が、伊勢海町に轟とどろく!
そう! 前作強一!
前作『なろうファイト アークライト!』の主人公がまさかの戦線復帰!
偶然とはいえ、二作目主人公である高田浩二のピンチに駆け付けたのである!
「へぇ~~~~なっかなぁ~か面白いねェ~~~~…………【ライトバンが高速で射出される】」
「安心して下がってな銀竜寺……。――――――――――――――――本ノ心ッ!」
前作を知る者達にとって馴染みの深い、あの懐かしい執筆能力が発動!
前作の持っていた本から影が飛び出して銀竜寺達を守る!
「『純真極楽乙女ノ絶対防御同盟』の主人公の能力……『シフォンバリア』……」
そう呟く前作を、舐めるように見つめるジャックハンリー!
「なるほどねェ~~~……今ので理解したよォ。前作強一とやらァア。貴様の執筆能力はその影ってわけだァ。物語の“主人公の技を影として使役する能力”。察するに、自分で書いた物語に何か未練があるんだぁねェ~~~~?」
執筆能力の内容は、本人が手がけていた作品のジャンル! 執筆時の作者の生活環境、時代背景! そして、その精神状態が大きく影響されるのである!
「フン……道化風情が余計な事を詮索しないほうがいいぜ。後ろめたいのはお互い様だろう。アンタだってその能力から察するに、普段書いてる文章は“真っ当すぎて一周回って異常者のそれ”だ。長く生きれる考え方してねえな」
「馬ァ鹿言え! 今ボォクは最ィッ高の気分さぁ!! 異世界テンプレの中の超テンプレは万物“全て”を舐めてかかれる! 真の王道の物語の前では全てが地に伏すのさぁ! HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!!」
「――そうかい、これからお前にたっぷりと舐めさせてやるよ……この街のアスファルトをたっぷりとな」
ジャックハンリーの挑発に一切動じない前作!
前作主人公の貫禄である!
「【前作の持っている本は激しく燃え上がった】」
ジャックハンリーが呟いた瞬間! 前作の持っている本が発火!
その炎が前作の服に延焼し! 全身が炎に包まれる!
「前作ィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!」
腹を押さえながら絶叫する銀竜寺!
「はぁ~~~~~イィ! 死んだァアアアアアアアアアアアア!!」
勝利の余韻に浸るジャックハンリー!
「作品ものがたりは決して――消えねえ」
懐かしの名台詞が炸裂!
燃え上がる外套を放り投げて接近する前作!
その格好は、前作お馴染みの“あの格好”そのままであったが、鮮やかだった服の色が落ちておりこれはこれで味があるッ!
完全に燃えたはずの本から出た影にぶん殴られ、壁面に叩きつけられるジャックハンリー!
「な……なぁぜだァ……なぜこんなことがぁ~~……アンタの能力である本は焼却してやった……はァずなのにィイイ…………」
「甘いぜ……。俺の執筆能力は能力付きの影を本から取り出すことじゃあない。“影を使役する本【そのもの】をいつでも物語ごと具現化させる”能力だったってわけさ。本そのものを吹き飛ばそうが、焚書しようが持ち去ろうが、関係の無い話ってわけだ……。物語は人の心に残り続ける。何より大切なのは、物語を作るテメエの脳味噌ってわけだな……」
「凄いです! あんな能力は見たことがありません!」
驚愕するヤス!
「銀竜寺さん。あの能力は強すぎませんか?」
そしてナイスタイミングな二藤の質問!
前作を全く知らないでここまで読んでしまった人々の為に、丁寧な解説を始める銀竜寺!
「いや、そう簡単な話では無い。ヤツが"読び出せる"能力元の作品は“埋もれて”いなければならないのだ。具体的には①『ブクマ数が1以下でPTは2以下』で尚且つ②『10万字以上で執筆者の強い想いが込められている』作品であるということ。そして最後に③『あの男の好みに一部合致している作品で無いといけない』いう条件。この全てをクリアしていないといけないってわけだ。そして一度発動した主人公の能力は原則、二度と使えない」
「なかなか使いこなすのが難しいのですね!」
「つまりアイツが"読び出せる"作品は当然マイナーなジャンルになる。……只でさえアイツの感性が今のなろうと合致しない上に、今は主人公が強い作品はすぐブクマが付くからな……昔とは違ってアイツの能力は相対的に弱体化しているといえるだろう……」
「何を言っているんですか銀竜寺さん。昔からなろうはこんな感じじゃ無いですか」
二藤のツッコミに口ごもる銀竜寺!
「――ん? そうだったか? あ…………そう……だったな? ……すまない」
「【前作の知っている作品の記憶は、全て失われる】」
「――――ッ!」
慌てて本を起動させようとする前作!
しかし、本から影が出る気配はなくジャックハンリーに殴り飛ばされる!
「流ァ石にィ……全ての記憶を消滅させるのは無理だったようだがァなァ……テェメエはもうこれで終わりなんだよォォオオオオオオオオオン!! ヒャHAHAHAHAHAHAHAHA!!」
勝ち誇り前作をいたぶるために、馬乗りになってその顔面を殴り始めるジャックハンリー!
「(どうしましょう二藤さん! 加勢します?)」
「(いや、なんかここで手を出しちゃいけないような気がするんだよね。なんか物凄く水を差してしまいそうな気がする。時間稼ぎくらいはやってもいいと思うけど。それ以上やると、なんか色々台無しな気がするよ)」
「ず~~~~~いぶんとやわな肉体だァねェ!! この町の人間とは思えないなァ~~~~。そしてこれがトドメだアアアアアアアアアアアアアアアア!」
トドメの瞬間に、殴られる者と殴る者! その目線が交差する!
そこでジャックハンリーが見たものは……前作の眼球を覆う黒い影!
前作の不敵な表情に、慌てて飛びのくジャックハンリー!
「な……なんだとォォォォ! コイツの目の中に! 馬ァ鹿なッ! 影が動くはずがねェ!! 俺は物語の記憶を完全に奪ってやったんだァアア! コイツが能力を使えるはずがネエエエエ!」
「この影を纏った……濁った色の眼で――俺が何を見ていると思う?」
前作の視線の先を咄嗟に振り返るジャックハンリー!
そこにあったのは――開いたまま故障して、自動でスクロールを続ける高田浩二のノートパソコン!
「攻撃を受ける前に既に発動しょうかんしていた……本ノ心……。『マサイ族 in 大航海時代』の主人公の能力『超視力』を一つだけな……。そして、どこの誰だか知らんが、さらに一つだけ新しく物語を読めたぜ“高田浩二”……テメーの物語を。文体がイカレているおかげで――0PTだったおかげで、なんとか救われたぜ……」
「高田浩二メェェェェェェ! 余計な事をッ!!」
ジャックハンリーの強烈な蹴りで、高田のパソコンが今度こそ完全に破壊される!
「無駄だ。記録を壊しても物語は壊れねえ。コイツでトドメだ。『いせかいでむそうするよ』の主人公の能力『ちょうすごいじげんせつだん』ッ!」
意図せぬ主人公二人のシリーズを超えた奇跡の合体攻撃!
本から現出した影が次元を切断し、ジャックハンリーの右腕と物語が吹っ飛んだ!
「ボギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「ゴミのような文体と文章だったが、テンプレとはほど遠い――節々に妙に個性のある作品だったぜ“高田浩二”。内容自体は、俺のセンスに合致した。少なくとも、俺のインスピレーションにはビビッと来た。なあ? ジャックハンリーとやら。――駄目だな。ビビっちまってる」
「ひ……ひいいい、こっ……こォんなことがァ……ボォクの王道の物語がぁ~……偶然とはいえェ……こォんな掃き溜めの集まりに遅れをとってしまうなんてェ…………そんなことがアアアアアアァァァァァァァゥゥゥゥゥ……」
「どうやら、今ので右手が使えなくなったようだな……。もうテメエは物語を書けねえ。てめえの意志で世界は勝手に動かねえ。――残った左手は、マスでもかいてろ」
「ゆ……許してくれェよォ! もう俺に戦う意志はねぇぇぇぇぇえんだよォ!! あんたの記憶は既に戻っているはずだ!!」
そう言って羊皮紙を――その物語を放り投げて足蹴にするジャックハンリー!
「――やりやがったな。…………俺が一番嫌いなことをやりやがったな。手前てめえ自身が手前てめえの物語を地面に投げ捨ててるんじゃあねえッッ!!」
「ヒョエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」
「本ノ心ッ!」
――――――――――――――――――――――――――――――――
こうして、全てが終わり! 伊勢海の赤い空が夕日で赤く染まる!
「久しぶりだな。前作。俺はもう戻ってこないものかと……」
「これを伊勢海で見つけて“終わらせるため”に俺は戻ってきたんだ。見ろよ、翼斗。俺達の罪を」
そう言って前作は持ってきていた十字架の紋章のついた巨大な棺桶の蓋を開ける!
中に入っていたのは永遠に起きぬ少女! ソフィア=ネヴァリ!
「強一……お前ッ! まだソフィアの事を……!」
そう、前作であまりにも衝撃的だったあの痛ましい事件!
あの恐ろしい事件の記憶が未だに強一を苛み、贖罪の旅に追いやっていたのである!
「本ノ心……。『死の床に伏す死神はそれでも嗤わない』の主人公の能力『安楽死』」
――強一の能力によって、前作からの長き因縁に決着!
メインヒロインがついに完全に絶命し、その苦しみから救われた。
「――これで終わりだぜ翼斗……これで、ようやくソフィアは狂気から“解放される”」
「前作。なんと言ったら良いか……」
「……この町は何もかもおかしくなっちまった。“お前も”だ。“今のお前”とこれ以上、話すつもりは無い――――――――あばよ……翼斗」
物凄く意味深なことを呟いて、棺桶を引きずりながら夕日に消えていく前作!
「なんだッ! 一体、俺が満腹で寝ている間に何があったんだッ!?」
前作が立ち去った途端に、息を吹き返し他のメンバーに倣ってその背中をじっと見つめる高田浩二!
そう! 二人の主人公は、決して出会わないのである!
宙を見上げる彼の物語の夜明けは遥か遠い!
時間帯はまだ、ほんの夕暮れ!
前作は気が向いたら執筆します。
本来、『人気だった前作主人公が活躍する』というお話は今作の読者ではなく前作ファン向けの物なのですが、大前提である『前作の存在』が丸々すっぽ抜けてしまっている癖に『普通に無理の無い展開で前作主人公が綺麗に活躍して去っていった』為。
作品のあり方としては『一見さんお断り』なのに他の話と比べると『初心者向け』というメタ的に見ると実に矛盾した、意味不明なお話が出来上がってしまいました。
また、今まで各部がお話らしいお話としてろくすっぽ成立していなかった事も相まって今回“物語路線”というパワーワードが誕生しました。




