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織田信忠ー奇妙丸道中記ー Lost Generation  作者: 鳥見 勝成
第十七話(荷之上城編)
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99部:行軍

清州城二ノ丸奥御殿。軍議の後、足早に冬姫の部屋に来た奇妙丸。

「冬姫! 叔父の信興殿のいる小木江城に行ってくる」

奇妙丸とその傍衆の緊張した面持ちに驚く冬姫達。

「どうかしたのですか?」

「市江島周辺で海賊が出没しているようで、岐阜からの物資が桑名に届かぬ様子なのだ」

「海賊ですか。お供の方は?」

「於八に、於勝、伴ノ衆」

「では、桜も?」

「そうだな」

「はい、行ってまいります、冬姫様」

「分ったわ、気を付けてね、桜」

「留守居だが、本丸は生駒、二ノ丸の留守居は金森甚七郎(於七)に頼む」

金森の目が輝く。責任は重大だが、ようやく城代に抜擢されたのだ。

「今回の清州城の守備は私が責任を持って貫徹いたします」

「うむ、任せたぞ」

金森が留守居をするということで、美濃系の与力衆が清州二ノ丸に残留する事になる。

岐阜の頃から冬姫とも親しい者たちなので、冬姫達も安心できるだろう。


虚無僧の姿をした呂左衛門ロルテスが奇妙丸の出立を玄関で待っていた。

「お嬢さん宜しく」

「また一人、お供が増えたのですね」桜が新しい仲間が異国人であることに少し驚いている。

「若様の専属家庭教師です」と呂左衛門。

「まあ、軍師ということだな」と於八が侍言葉に訳す。

「南蛮人に兵法が分るのか?」と素朴な疑問を於勝がぶつける。

「手取り足取りおしえてあげるねー」大きく手を拡げて於勝に迫る呂左衛門。

「アハハハ」大笑する呂左衛門に於勝が担ぎ上げられて振り回される。

呂左衛門の前では於勝も赤子の様に扱われている。

どこまでも陽気な異国人だ。


*****


三百騎の騎馬で先を急ぐ奇妙丸一行。全員、馬に負担を掛けないように、鎧を着用していない。軽装の準戦闘装備だ。味方であることを識別するため、全員身体の一部に紫の布を巻いている。

奇妙丸は大鹿毛に乗り走る。その横には於八、於勝、桜。後ろには、笠を取り紫の頭巾を被り鎧の頬当てを付けた巨漢・呂左衛門が従う。

関家に居候していたので北伊勢に詳しくなった呂左衛門。

「若様、小木江の方向ではありませんが、どこへ向かうのですか」

「荷ノ上城だ」

「若様自ら物見を?」

「小木江に向かう前に、荷之上が気になる。百聞は一見にしかず! だ」

「清州の物見衆はどれほど用意されていますか?」

「五人一組で、十部隊。いろはにほへとちりぬ組に分けている」

「隠密は?」

「御庭番の伴ノ衆が担っている」

「伴ノ衆の規模はいかほどで?」

「桜、判るか?」

「最重要の秘密ですが、教えても宜しいのですか?」と問い返す桜。

桜はまだ呂左衛門の正体をいぶかしんでいる。とても奇妙丸に忠誠心があるとは思えない異国人なのだからだ。

呂左衛門が怪しい動きをすれば抹殺する覚悟でいる。

「お嬢ちゃんに信用されるまで、まだ知らなくていいかな」

桜に目で合図をして、あっさりとあきらめた呂左衛門。

「今回は、若様のお手並みを拝見させていただきますよ」

新参である呂左衛門は、自分の売込みよりも、主一行の力量を見極める事に目的を切り替えた。


*****


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