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織田信忠ー奇妙丸道中記ー Lost Generation  作者: 鳥見 勝成
第十六話(勝幡城編)
94/404

94部:津島牛頭天王社宵宮

津島牛頭天王社に到着した一行。

http://17453.mitemin.net/i192375/

挿絵(By みてみん)

津島神社は建速須佐之男命が祀られていたが、のちに別名、牛頭天王社ごずてんのうしゃといわれ、牛頭天王の民間信仰と結びつき人々を厄災と疫病から守る神様として、多くの人々から信仰を集めた。

この牛頭天王は、京都の祇園祭で有名な八坂神社と同じ神様で、全国の鎮守社の祭神である。

「よくぞお越し下さいました」津島神社社家には氷室、堀田、河村、服部、平野、村主がいる。

年老いた神職が出迎える。

「氷室五郎右衛門尉秀重にございまする」

「織田弾正忠家の嫡男・織田奇妙丸です」と慇懃に礼をする奇妙丸。

「津島天神祭りをどうぞ楽しんで下さりませ」

気分を変えて、有名なお祭りを見る事が出来るので喜んでいる冬姫。

神職が二人に言う。

「織田家の皆さまはいつも向島にかかる天王橋の上で見物されています」。

「そのような伝統があるのだな」

「信定様、信秀様、信長様、奇妙丸様で四代です」

「そうか、この伝統を絶やしたくないものだ」織田家の繁栄を願う奇妙丸。

「それにしても長い橋ですね」とその規模に驚く冬姫。

「三町(330m)ばかりですか」と桜の推測。

「この橋の上を織田家歴代当主が歩いてきたのだな」と感慨深い奇妙丸。

日が暮れはじめ周囲が暗くなり、いよいよ祭りが始まる。



http://17453.mitemin.net/i204116/ 尾張国津島のイメージ図

挿絵(By みてみん)


宵祭。

別名、川祭は車河戸くるまこうどと呼ばれる入り江に、津島五車(下構・堤下・米之座・今市場・筏場の五ケ村の車楽)の乗る巻藁船まきわらぶねが準備される。

巻藁船とは、船二艘を横に連結し板を渡し、その上に屋台を乗せ、その上に井垣を組み、その上に坊主(巻藁を詰めた木枠)を乗せ、これに竹の先につけた提灯三百六十五個(閏年は三百六十六個)を椀傘に飾り付ける。

船の中央には、真柱(如意竹)を立て十二個の如意提灯を掲げる。

五百の提灯が、五艘分で二千五百個の灯りが、川面に映し出され反射し、五千個以上の火が波間を移動してゆく。

車河戸くるまこうどより津島笛を奏しながら、天王川を御旅所おたびしょまで漕ぎ渡り、神社に参拝して、悠々と車河戸に戻ってくるのだ。


天王川の両土手には、津島近隣の民衆がこの儀式を一目見ようと集まっている。

船が来るまでは、領主・奇妙丸に気付いた民衆が手を振り、奇妙丸や冬姫の名を呼ぶ。それに応えて二人が手を振ると歓声をあげる民衆。しかし、船が近づいてくると皆、そちらに関心が移り押し黙ってその光景に見入る。


池田姉妹、桜もその美しい光景に息を呑んでいる。

於勝も口が開いたままだ。

「美しいな、冬姫」

「兄上様と観た今宵の幻想的な風景は生涯忘れるものではございません。私の宝物です。ご先祖様と同じ様に津島を守っていきましょう」

「先ほどの話だが、私は冬姫の為にも生きたいと思っているよ」と冬姫を見つめる奇妙丸。

「兄上様、私も思いは同じです」と冬姫。

色んな思い出も分かち合い育ってきたので、

お互い、どちらが欠けてもダメな気がする二人だった。

奇妙丸と冬姫の傍で、会話を耳にした桜は二人のほうを振り返る。

数千個の提灯の灯りに映し出された二人の横顔は、この世の人とは思えぬほどの美しさだった。


*****


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