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織田信忠ー奇妙丸道中記ー Lost Generation  作者: 鳥見 勝成
第十六話(勝幡城編)
92/404

92部:連枝衆

清州城本丸御殿、来客接遇の間。ここには織田家の一門衆が呼ばれていた。

信長の弟の中では三十郎信兼が伊勢方面に主力として出陣中だ。その次の弟たちが尾張防衛を分担している。

「織田九郎信治、野府城主に任命されております」二十五歳を迎え城主になったばかりだが、城を任される程に武勇に評価がある。その勇猛さは小豆坂の英雄・織田信光に通じると評される。

「織田彦七郎信興、小木江城主に任命されております」齢二十四歳の若武者だ。一門中では兄たちよりも祖父・信秀の面影があると言われている。兄・信治につぐ武断派だ。

「織田半左衛門秀成、御馬廻衆を勤めます」二人の兄に負けないほど体躯が大きく怪力の持ち主だ。今は馬廻り身分だが、いずれは一軍を率いる青年将校として期待されている。

「同じく、織田源五郎長益」今年で二十二歳。長身の若者だ。平手家で養育され、一門きっての数寄者である。

「同じく、織田又十郎長利」二十歳になる信秀の末子である。細めの身体つきだが貴公子風の品がある。奇妙丸とは5歳違い。末子相続の時代ならば織田家を継承していたかもしれない。

「津田九郎二郎元嘉、小牧城留守居を勤めます」信長の妹婿・津田元貞の長男で、一門きっての吏僚派である。誠実な人柄なので信長に重く用いられている。とにかく仕事が出来る人物だ。

「津田秀重の息子、小平次秀政に御座る」今年二十三歳。文武に秀でており一門の中では将来が楽しみな逸材だ。信長にも何かと目をかけられている。

織田家一門の錚々たる面々から挨拶を受けた奇妙丸。

血の繋がりが濃い一団ではあるが、それだけ近親者であるということは、逆に彼らが奇妙丸の器量に見切りを付ければ、とって代わる事が可能な地位にある親戚だ。

年上の親戚ばかりで、奇妙丸の表情に緊張感がみられる。

それぞれの扱いに少しでも不備があれば、自分に跳ね返って来る。

「皆様との連枝の繋がりを大切にしたいと思っています。これからもどうぞ宜しくお願い致します」

「お役に立つように我々粉骨励みまする!」と彦七郎。

「織田家をもっと大きくして見せますぞ!」と勇ましく応えたのは九郎だ。

「皆様、頼りにしています」と叔父たちにお辞儀する奇妙丸。

「「「お任せ下され!!」」」

これから天下に羽ばたく年齢の武将たちなので、若々しいその情熱が伝わってくる。

奇妙丸の世代とは、年齢的には十歳から五歳以上の開きがあるので、年長である彼らが切り開いた道を、後について進んでいくことだろう。

奇妙丸は叔父たちの存在を恐れつつも、とても頼もしく思った。


*****


清州城二ノ丸奥御殿。冬姫の間。

冬姫の周りでは、侍女としても仕えることとなった桜に冬姫の着物の着付け方を池田姉妹が教授しながらワイワイと歓談していた。

そこへ奇妙丸が足早に入ってきた。

「冬姫、良い知らせがあるのだ!」

「そんなに慌てて、なんですか兄上様?」

冬姫同様に、きょとんとした顔で、池田姉妹たち奥女中が奇妙丸丸を見る。

「信興殿が教えてくれたのだが、津島天王社の例祭が、今年は戦の為に開催が遅れているそうだ」

「祭りが遅れているというのにそれが良い知らせ? ですか?」

「今から津島例祭の宵宮を見に行こう」

「え?! まあ、それは嬉しい」意味が分り、手を合わせて喜ぶ冬姫。

「なっ」ニコリと微笑む奇妙丸。

「私たちも是非みたいです!」と奇妙丸の提案に乗る池田姉妹。

「よし!皆で行こう!」


突然の出立が決まり、冬姫と奇妙丸の傍衆達が慌ただしく準備を始める。しかし、清州城の守備も重要だ。

昔、守護・斯波義統の代に、義統の嫡子・義銀が家来を引き連れて出かけた隙をついて、清州織田家の達広が斯波氏に下剋上した事件がある。

万全を期すため、本丸には生駒三吉とその与力達、二ノ丸には梶原於八と清州与力が入り、奇妙丸の供には森於勝達、岐阜から同行した小姓衆・傍衆が従うことになった。


*****


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