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織田信忠ー奇妙丸道中記ー Lost Generation  作者: 鳥見 勝成
第十四話(一宮城編)
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81部:みのう屋包囲

於高姫の誤解も解け、胸を撫で下ろす小十郎。

「しかし、私の監督不行き届きで、周辺の皆様にご迷惑をかけている事には変わりありませぬ」と城下に怪しい店が出店されていることを知らなかった小十郎が自分を責める。

「和田は、こういったやり方で他家の責任にして荒稼ぎをしているのではあるまいか? 森家の侍で半殺しなら町民の客などは泣き寝入りをするしかあるまい・・」於八が客観的に分析する。

「娘達を救い出して、それぞれの手当てもしてやらないと」と先の事も考える三吉。

「事情はよく判りました。私達森家の手勢で、その店を破壊しに行きましょう。於勝、貴方もついてきなさい!」

於高姫はあくまで自ら店を取り締まるつもりだ。

「では、私もお供します」と関小十郎も一緒にその店に行くことになった。


*****


「外が騒がしいわね」旅の土埃を落とすために先に入浴を済ませた冬姫と桜。

髪を乾かして、廊下に出ると、於高姫に従えられて後に続く森於勝と於九の三人にばったり出会った。

「これは冬姫様。御無沙汰いたしております」

「あら、於高姫。勇ましい姿でどちらへ?」

「これから、我が家臣をたぶらかしたお店を取り締まりに行って参ります」

「まあ」

「於勝もその店の被害にあっていたとかで。まったく困ったものです」

於高姫は、風呂上がりの冬姫に見とれている於勝をじろりと睨み付ける。於九はその様子を見て笑っている。

頭をぼりぼり掻きながら、なんとか誤魔化そうとする於勝。

「だって、男の子なんだもん」バシ!と於高に頭を一発叩かれる。

「では、行ってまいります」とお辞儀する於高姫。

桜が、私も行きますと名乗り出る。

「がんばってきてね」

冬姫は皆を笑顔で見送ったが、少しさびしげな表情を残した。


*****


一宮城下。城外では伴ノ衆が待機していた。桜も忍び姿で人数に加わっている。

御庭番・伴ノ衆が奇妙丸の周りを固める。

「若、御想像の通り摂津・甲賀の和田衆が店を経営している様です」

伴ノ一郎左が代表して奇妙丸に報告した。

「もう調べがついたのか? やはりそうなのか」と読みが当たった事に困り顔の奇妙丸。これは将軍直参和田氏と織田家家臣団との政治的な問題に発展しかねない。

「はい、兄者たちも既に御店にいった事があるそうです」と桜。

伴五郎左が「だって」と何か言おうとするが、桜が制する。

「だってじゃありません!」

桜の兄たちを見る目が冷たい。


町中の、店がある区画を取り囲むように手勢を配置する於高姫。一人残らず捕縛するつもりでいる。

「おい、外がやばい」

「たいへんだ、店が囲まれている」

「関の奴等か?構わぬ、やってしまえ!」

「囲みを突破して逃げるぞ!」二階から、頭がはげた大男が降りてきた。

「親分、売り上げは?」

「そんなもの、後だ」額に汗をかいて苦い顔をしている。

「女達は?」

「余計な事を喋られたら面倒だ、始末して行こう」隣にいた娘をいきなり懐刀で刺し貫いた。抜いた刀についた血を分厚い唇で挟みとる。

「「「キャー!」」」と店内から娘たちの悲鳴が聞こえてきた。


一方、店前の通りでは、外にいる三十人程の和田衆の取り立て隊が、森・関追捕衆の囲みを突破し店中の仲間と合流しようと、囲みの外から斬りかかり乱戦が始まった。この他に店内にも二十人近くの和田衆が居て、娘達に向けて凶刃を振るっている。

混乱した客や、和田衆から逃げ惑う娘たちは裏木戸から逃れようとする。

火花と金属音に怒声、町中が騒然とし始めた。


正面では森勢と関勢が、和田衆の取り立て隊を囲んでいる。

「店には入れないぞ、逃れられると思うな!降参しろ」と取り立て隊を説得する森於九。

それでも刀を収める気はないようだ。なんとか店に突入して仲間と合流することを試みる和田取り立て隊。動きに纏まりがあり、やはり訓練された侍達のようだ。

「かかれー!」取り立て隊の頭が叫ぶ。

森於勝が「十連針兼定、斬る!」というなり、向かってくる取り立て隊の先陣の一人を切り捨てた。


*****


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