7部:帰城 (第一話 完)
日が暮れはじめていた。
「長島の動き、気になるなあ」奇妙丸はふと今日の出来事を回顧する。
「河川沿いの湊の警備もザルなんじゃないか?」
織田領内に点在する本願寺寺院の動きを案じる鶴千代。
近江にも多数本願寺系寺院があり、蒲生家にとってもただ事ではない。
「うむ、瀧川殿に確認をとろう」奇妙丸にとっては、上洛した父が、伊勢方面をどう考えているのかも気掛かりだった。
四人とも今回の事件はこれだけに済まない何かがあると、不安を覚える。
「ところで鶴千代、於勝、於八。ついて来てくれて有り難うな」
「当たり前の事をしただけで御座る」
「しかし、笑えるのは、全員“先駆け型”の人間だったな」と奇妙丸。
「いやいやいや」と鶴千代。
「貴方が言いますか」と於勝。
「殿が一番あぶない人間でした」と断じる於八。
(冬姫様との約束を守るために、この人より前にでなければ)と心で誓う三人だった。
「おかえりなさい、皆様ご苦労さまでした」
「はっはっは冬姫様、私がいれば安心でござる」と鶴千代。
「いやいや、殿の御供は私ひとりでも十分でござった」と於勝。
「おぬし、もうだめだと半ばあきらめかけておったではないか」と於八。
「なにを、おぬしこそっ」と於勝が高じる。
「はいはい、後で皆様からお話をききますから」
「すまなかったな、冬姫」と奇妙丸が一日の身代わりを詫びた。
「解決したのですか」
「ああ、本願寺が背後で動いていた様子だった。後でゆっくり話すよ」
「私も城内の出来事をお伝えしますね」
「あぁ、では先に、母上様に目通りしてくる」と席を立ち部屋をでていく奇妙丸。
一度決めたら行動は迅速だ。
「まあ、仕方ないですわね」取り残された冬姫は、兄を見送る
「じゃあ、私が姫に今日の私の武勇伝を」と前に膝をつめる於勝。
「いや、私がっ」と更に前に詰める鶴千代。
「おいおい」と制す於八。
「はい、三人順番に!」
「はい」すべてを制するのは冬姫だった。
*****
それから三日後の山城国、京都一条 妙覚寺。
「*殿様 梶原殿から書状です」
小姓の万見仙千代が書状を捧げる。
(*天正3年の任官以降を“上様”とします)、
書状に目を通す信長。
「ふむ、奇妙のやつ・・・・であるか」「ひきつづき奇妙を頼むと伝えてくれ」
「はっ」
第一話 完
始めての投稿でした。最初は短編の一話完結のつもりで投稿させて頂きました。
その後、読み切りのつもりで何編か投稿して「奇妙丸道中記シリーズ」ものに纏めていましたが、
読者の方から、読みづらく、小説家になろうのシステム的にもったいないと、助言を頂きました。
考えた上で、再度、一話に戻り「連載中」に切り替えて、他の続編を削除し、一話文章を「章」として区切り、各話を続けさせてもらいました。
・・・・
「小説家になろう」運営の方、検索サイト運営の方には穴を開けてしまい申し訳ありません。どうか御寛怒のほど宜しくお願い申し上げます。
更に読者の方々には、ブックマーク等いろいろとご迷惑をおかけして申し訳ありません。
今後ともどうか応援の程、宜しくお願い致します。
温かい目で見守って頂ければ幸いです。