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織田信忠ー奇妙丸道中記ー Lost Generation  作者: 鳥見 勝成
第十一話(岩村城編)
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65部:伝説の忍者

ザツ!仕込刀を地面に突き差し、片膝をつく熊若老人。

「油断したのう・・・。一人しか討てぬとは、儂も耄碌もうろくしたわい・・」

熊若老人が天を仰ぐ。一緒に戦ってくれた桜のことが気になり、視線を移す。

「お嬢ちゃんは、ケガないかい?」

「はい」

「忍者の世界からは、出来るだけ早く足を洗いなされ」

「私は、これしか、生きてゆく術をしりませぬ」

「忍者はやはり、男の世界だ。女子にはお勧めしない」

「里では皆、生まれた時から忍者になるしかないと・・」

「儂もそうだった。生まれた時から訓練され育った。忍びの人生は、見ての通りじゃ」

そう言うと、熊若は顔面蒼白でその場に倒れ込む。

「熊若さん!」

桜に上半身を抱きかかえられ、虫の息の熊若老人。毒にやられ、もう手も上がらぬ様子だ。

「坊丸は、我が主・飯富兵部虎昌様から預かった大切なお方なのだ。どうか、助けてやってくれないか。義信様の忘れ形見なのだ」繰り返し呟く熊若老人。

「承知しましたよ、熊若さん」

「儂は忍びにしては長く生きた。最後に、儂の命も役にたった・・・」

そう言うと熊若は、静かに目を閉じた。伝説の透波・熊若老人の最後を桜は看取った。

熊若老人を囲むように、伴ノ兄弟衆が立っていた。桜の横に立つ一郎左が、片手で拝みながら呟く。

「忍びの任務を全うされたな。命を捧げられる良き主にお仕えされていたのだろう」

「甲賀の黒川衆とも、いつか対決する時があるやもしれん。覚悟しておかないとな」意味深なことを言う伴ニ郎左。

「はい」

桜も思いつめた表情をしている。


*****


夜も白み始め、勘九郎達四人組に連れられて、坊丸もやってきた。

粉々に吹き飛んだ岩石によって倒れている透波衆を見る。

「凄いな。爆裂の威力、見事だ」と勘九郎。

「男平八殿の鍛練のたまものです」と伴一郎左は謙虚に答えた。

「いや伴ノ衆が、民家の軒下で硝石を集めて来てくれるから、仕事が出来るのだよ」と平八。

「お主達、その道を究めてくれ」男平八と伴一郎左は似たところがあるのだなと感じた勘九郎。

「はっ」と頷く二人。


*****


岩場から、熊若の倒れている洞窟前までやってきた。

熊若の遺体を見つけ、駆け寄る坊丸。

「爺ぃーーーーーー!」

動かない熊若に抱きつき、坊丸が泣いている。

「強くなれ、坊丸」遺体にすがる坊丸に池田正九郎が声をかける。

「坊丸、歩けるか」

「う、うん。爺の、爺のお墓を作ってあげたい」

「そうだな、ちゃんと埋葬してあげよう」

それから全員で、熊若の為に穴を掘り、遺体を埋葬する。

「爺、おやすみなさい。いい夢を見てね」と坊丸が集めてきた山の花をそっと置いた。

(坊丸は心優しい子だな)勘九郎が坊丸の頭を撫でた。


*****


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