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織田信忠ー奇妙丸道中記ー Lost Generation  作者: 鳥見 勝成
第十話(飯羽間城編)
58/404

58部:友政戦、友重戦

奇妙丸一行が来ているとあって、剣道場に飯羽間いいばま遠山氏の身内が続々と集まってきていた。

試合は実戦形式で行い、真剣の代わりに木刀を用いて戦う。木刀といっても当たれば死ぬ場合もある危険な試合だ。

各組の代表一人が前に出たら、戦場では敵に礼をして斬り合う事などないため、礼はせずに向かい合い、木刀を正眼に構え、蹲踞そんきょ(屈伸状態)の姿勢のまま開始の合図を待つ。防具は付けず打ち合い、誰が見ても当たれば相手が致命傷だという形で止めるか、または打ち負かし戦闘不能にした時点で一本勝利とする。試合とはいえ、自分の身は自分で守らねばならないので、万が一木刀にあたり死んだ場合でも負けである。


〈一番勝負、先鋒〉

三男の三郎兵衛友政が前へ一歩出る。勘九郎方は森於勝(勝蔵)が志願して先陣をきった。同年代同士の対戦だ。

蹲踞そんきょで呼吸を整える二人。一番勝負の重圧は重い。

友政の父・友忠の合図で両者試合に入る。

「始めっ!」

たがいに詰め寄り、木刀と木刀の先端がカツ、カツと乾いた音を出して触れ合う。

友政が息を吸ったその瞬間、於勝が猛然と前進し、木刀で木刀を回転するように巻き込み、剛力で木刀を撃ち落とした。

カラーン! 床に叩きつけられる友政の木刀。

カラン カランと道場の床板に木刀の転がる音が響く。

友政の手には防御するものも攻撃するものも何もない。

一瞬で勝負がついた。

「さすが、森家の・・」と観客。

三郎兵衛友政の顔は青ざめてしまっていた。

於勝が木刀を叩き落として手を止めたから良かったが、於勝が小手、突きと続けざまの技を繰り出していれば手のひらの骨が粉砕されてしまっていたかもしれないし、命を失っていたかもしれない。

「うむ。お見事!」友勝が手を叩いた。表情には出さないが心の中で舌打ちしている。

於勝が木刀の先端で友勝を指し、続けて道場の飯羽間衆にむけてぐるりと回ってみせた。

「俺の実力をなめるな!」と言い放ち仲間のいるところに戻る。道場は静まり返った。


*****


〈二番勝負、次鋒〉

次男の次郎兵衛友重と、同じ年の池田九郎丸(正九郎)が前へ一歩出る。

蹲踞そんきょの姿勢で試合を待つ二人。

友忠が合図する「始め!」

木刀を下に向ける友重に対し、九郎丸は木刀を上段に構える。

九郎丸の構えには王者の風がある。天下一の名物“備前大包平”の所有者として、それに相応しい武士になろうと九郎丸が王者剣技の修練を重ねてきたためだろう。

「いざ!」と大音声を上げる九郎丸。

「参る!」と挑発に乗った友重が跳躍した。

九郎丸も友重とほぼ同じ瞬間に飛び出し。空中で二人が交差する。

カーーーーン! 木刀と木刀がぶつかり、乾いた音が響く。

ダダーーーン!と次の瞬間には、友重が後方に弾け飛んで、跳躍した場所に仰向けに転がっていた。

九郎丸が木刀を弾き返した勢いのまま友重に強烈な体当たりをみまい、弾き飛ばしたのだ。

カランカランカランと友重の木刀が転がる。

「ううむ。お見事!」友勝が手をひとつ打った。頬がひきつっている。

友重は何が起きたか判らぬ顔をしている。九郎丸は手を差し出し、次郎兵衛友重を起こしていた。


*****

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