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52部:共同作戦

木曽川沿いの街道を馬で走る四人組。小栗衆の帰城する方向を追っていくと、途中に伴ノ衆の五郎左が四人を待っていた。

桜の残した甲賀の目印を追うと、誘拐犯の目的地が御嶽城であることがほぼ確実であるとのことだ。一郎左達は御嶽城にすでに向かっている。

五郎左も加わり街道を走っていると、御嶽城近くで同じように城にむかって騎馬を走らせる一団があった。騎馬隊の一人が四人組に気付き近寄ってきた。

「馬上失礼する。高山城主の平井頼母ひらいたのも光村と申す。その直垂ひたたれ姿、織田の森家の方々か?」

「そうで御座る」と勝蔵。

「血相を変えて、何を急いでおられる」と尋ねる光村。

勝蔵は森家の騒動を平井に伝える。

「私は森家の次男・於勝(勝蔵)です。我が身内と仲間が、小栗衆により誘拐された事が判ったので犯人を追っていたのです」勝蔵の必死な表情は光村にも伝わり、光村は同じ境遇であることに共感した。

「なんということだ。我らと同じではないか!」と小栗の卑劣な振る舞いに頭に血が上る。

「どういうことだ、光村殿」

ドウドウっと馬を止め、地上に降りる勘九郎。

「こ!これは、若様」勘九郎が奇妙丸であることに気付き、光村も慌てて馬を降りて片膝をついて挨拶する。馬を降りた主を見て、平井家来衆も相手がただ者でないことを悟り一斉に下馬し礼をした。家来衆は陪臣の身であるため奇妙丸の姿を近くで見たことがなかったのだった。

「私は高山城主・平井頼母たのも光村に御座います。織田・武田両家の和睦が成って以来、織田家にも出仕しておりまする。

平井と小栗は、父の代より敵同士の間柄。我々は小原城を築き御嶽城を監視しておりましたが、我が母と妻が、先祖供養の為に出かけた寺にて誘拐され、今は小栗教久の御嶽城に人質となっております。教久から使者が参り、人質を殺されたくなければ小原城をよこせと脅迫され、まずは家族の無事を確認する為に御嶽城に直接交渉に行く途中で御座いまする」

「小栗め、織田家の旗の下でなんという無法な振る舞いだ」姑息な手だと勘九郎は怒りを覚えた。

「お互いの家族を、なんとか無事に救出せねばなりませぬな」と平井は、御嶽城についての情報を説明した。

「以前、我々が御嶽城に攻撃をかけた時は、その度に俄にわかに濃い霧がかかって、土地勘の無い我々は攻め落とす事ができませんでした。蛇神の加護がある城と言われ、非常に攻めづらいです」

「不落の霧城か」と正九郎。

一瞬、思案した勘九郎が作戦を思いついた。

「平井殿、私に策があるのだが」

「御嶽城攻略の策ですか?」

「そうだ、これで人質も救えると思う」

自信ありげな勘九郎に驚く光村。この人数で攻略できるというのだろうか。

「一体、どのような作戦ですか?」自分たちが力攻めして何度も失敗した城をなんとかできるものだろうかと首をかしげる。

ニヤリとする勘九郎。

「光村殿、小原城を小栗にくれてやってくれ」

「そ、そんな」とやはり城を渡すのかと思う光村。

「聞いてくれ、御嶽城が呪われた城なら、そこから小栗を引きずり出せばよい。小原城を奪いに来た小栗教久の裏をかいて、御嶽城をこちらが奪い取るのだ」

光村も作戦を理解した。

「なるほど」確かに一理いちりある。そうと決まれば判断の速い光村である。

「では、引き渡す準備をして、小栗に使者を送ります」

「よろしく頼む。」

続けて勘九郎は、男平八と正九郎に振り返り

「平八と正九郎は小原城の方に行き、小栗勢をなんとかしてくれるか」と二人に頼む。

「お任せを、私にも一計があります」と男平八。

「なんでも協力しよう」と正九郎。

勝蔵は家族と桜の身を案じ、小栗信濃守への怒りをなんとか抑えている様子がありありとしている。

「三人を助けたい。力を貸してくれ」と皆に頭を下げる勝蔵。

正九郎が勝蔵の肩に手を置く。

「兄弟を持つ身としては捨て置けぬからな、任せろ」そう言うと正九郎は胸を張った。勘九郎も男平八も五郎左も気持ちは同じだ。勝蔵は気持ちを共有して共に戦ってくれる仲間の気持ちに感謝した。

「勝蔵・五郎左、いこうか」と勘九郎が馬に乗る。

「承知、我君」二人も馬に飛び乗る。

続いて平井衆と、正九郎に男平八も次々と馬上の人となる。御嶽城に向かう者、小原状に向かう者それぞれが「御武運を」とお互いに声をかけあい、目的の場所を目指し、馬に鞭をいれた。


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