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織田信忠ー奇妙丸道中記ー Lost Generation  作者: 鳥見 勝成
第一話(奇妙丸) 『奇妙丸道中記』第一部 武田松姫
5/404

5部:宝刀・相州貞宗

小さな峠を越えると、大きな集落が眼前に現れた。

整然と区画整理され、壁板が全て黒く塗られた建物の街並みが続く。


「この村はどうなんだろうな」

「昔の明智家の領地だな。たしか長山村」


「明智長山城は弘治2年(1556年)、斎藤義龍の攻撃を受け落城したんだ。

道三様と義龍親子の抗争で、道三方に与力した明智光安・光久兄弟と一族870余人が籠城し、3700余の義龍軍による2日間にわたる力攻めにより、明智勢は滅亡したという・・・」


奇妙丸の〝うんちく”に、於勝はあいかわらずの無反応だ。

「さっすが!長秀殿」と講師の丹羽長秀を讃える鶴千代。


http://17453.mitemin.net/i185835/ 鶴千代イメージ

挿絵(By みてみん)


集落を抜けたところから、小さな森が見えた。

「あの森のあたりに、この村の菩提寺があるんじゃないか?」

「おい、あいつら」於勝が指さす。


薙刀なぎなたをもった怪しい奴らが寺の中入って行くじゃないか」

「警護にしては、なんか人数多くないか」

「よくみれば僧兵のなりをしているが」

「様子をみてみるか・・」

「みつからないように、そっといこう」


長山明智寺本堂。覆面の男が本堂に入ってきた。

「弾正さま」

「長山村の身重の者、ほぼ全員です」

「ご苦労!」

「お願いです、うちに返して下さい」

「うちは貧しくて、私と交換できる財産など何も御座いません」

「お願いでございます、和尚さま」

「黙れ!黙れ!黙れ!」

「身代金がほしいわけではない。返すことはあいならん」

「お主達、ありがたく思うのじゃ。お主達は選ばれたのだ」

「いったい、なんのことですか」

長島願証寺ながしまがんしょうじ住持、証意様の命じゃ、お主達の死後の極楽浄土は約束されておる」

「いやー!」

極楽浄土ときいて皆、死の恐怖におののく。

「止めて!、殺さないで」

「赤ちゃんだけは返して下さい!」

騒がしさに苛立つ弾正。

「はやとちりするな! 黙れといっておろう!」

シーンと静まる境内。

「これから生まれる子も、我ら本願寺がちゃんと教育して、顕如様のために、御法の為に戦える僧兵に育ててやる。安心するがいい」

首領・山路弾正少弼やまじだんじょうしょうひつは、子供は甲高く泣き叫ぶから嫌いだった。

その点、妊婦を攫えば一石二鳥、織田から住民を奪えば一石三鳥なので、織田領内で手早く人狩りをすることにしたのだ。


戦場では職業武人とはいえ、

人として斬ることを躊躇する十代の若年の者を集め、本願寺門徒の少年部隊を造る事、

これからも子供を孕むことのできる健康な母体を手に入れる事。

庄内川を下って、東海道方面の根拠地、長島願証寺で「御法守護隊」の人数を養成することが目的だった。


「これは捨て置けん」奇妙丸の正義に火が付いた。

身をひそめていた場所から、一気に寺の本堂に向かう

「「若 ×3」」あわてて追いかける三人。

「作戦は?!」

「えい、一か八かか」


「まてぇ~い!」奇妙丸は本堂前で大音声に呼ばわる。

「怪しい奴らめ!」つづけて於勝が叫ぶ、

「その人たちをどこへ連れて行くつもりだ!」


「出あえ、出あえ、出あえ!」僧兵たちが正門に詰め寄る。

「その紫直垂は織田の手の者だな」


「織田領内の大事な住民を、どこへ連れて行く気だ!」

山路弾正が侵入者が何者か見極めようと前にでてくる。

「伊勢長嶋に安産の祈祷に行くだけよ」

「でたらめを!」と於八。

「ここを動く事は、まかりならん!」制する鶴千代。

僧兵たちが罵る。

「その人数で何ができる」

「好きにさせてもらう!」


奇妙丸の顔を見てから於八が叫ぶ。

「控えい、控えい。頭が高い! この宝刀を存ぜぬか!」

「伝家の宝刀・相州貞宗である!」

と太刀を頭上に掲げる奇妙丸。


「そ、それは織田の」

「信長様の嫡男、奇妙丸どのであらせられるぞっ!」    ・・・(オマージュです)

顔を見合わせる僧兵たち。

弾正は動じず不敵に身構えた。

「捕まえて、武田に売りとばしてやれ!」

「そうきたか」

「やっぱりね」

「鶴、勝、八、やっちゃいましょう!」


「十連針兼定、斬る」これは森家の名刀。


「相州正宗、参る!」これは貞宗の師匠・正宗作で蒲生の家宝の刀だ。


「国友銃槍、打ち貫くぜ!」これは梶原家が近江国友の鉄砲鍛冶に特注したものだ。


「うおおおお!」という掛け声とともに皆各方向に跳躍し、目の前の敵を切り倒すや

後方の足場に一斉に退く。

「あのさ、なんで刀の名前を叫ぶの」

「若様につづけというか」

「勢いで」

「まあ、気合がはいるから、よしっ!」再び一斉に跳躍し、敵との間合いを詰める。

立て続けに各自四人ほど切り倒した。


当初、一話完結の短編のつもりだったので時代劇風に取り組んでみました。

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