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織田信忠ー奇妙丸道中記ー Lost Generation  作者: 鳥見 勝成
第八話(勝山猿啄城編)
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47部:川尻下野守吉治

一郎左が、与蔵率いる透波衆を始末したその頃、

勝山猿啄城〈本丸〉の〈吉治の間〉。

「「ダン!ズズーーーーーン!!」」と城内にまで響く爆発音。

川尻下野守吉治は、天空に響く轟音に跳びはねた。

「な!、何事だ?」酔っているとはいえ吉治も並みの侍ではない。耳を澄まし、五感を研ぎ澄ます。

何か天災がおきたのではと、領主として城下の様子も気になる。

特に“地震なへゆる”のような揺れはない。

「この地響き、山崩れでは」と本丸の家来衆が心配して集合してきたが、窓からも城下町の方向に火災が起きたような変化はない。

「地震ではないようだな。小規模の地崩れの様なものであろう」

「では、明日の下屋敷の様子見は」

「うむ、決行する。明日明るくなったら地崩れの方も早速確かめねばならぬな」

とりあえず、本丸詰めの家来衆には明朝までに準備し待機する様に指示した。


勝山猿啄城〈二の丸〉。

多治見修理亮も轟音に驚き飛び起きた。

「誰かあるか?」と控えの間に呼び掛ける修理亮。

「お召ですか」と多治見の側近が駆け付けた。

「さっきの音は、城下からか、与蔵がもう下屋敷を襲撃しておるのだろうか」

「判りませぬが、城下の方です。与蔵かもしれません」と答える修理亮の側近。

「では、明日は下野守吉治を討ち取れば川尻家は断絶じゃの。それから猿啄城も取り戻して、これは、明日が楽しみじゃ」

修理亮は、透波衆が味方についていることから完全に優位に立ったつもりでいる。

さっきの音も、透波衆の狼煙のろしや、忍術のたぐいの音だろうと判断し深くは考えなかった。

城内に潜入していた桜は、多治見修理亮が裏で関わっている事を確信する。


*****


夜が明けた。

「吉治殿、昨夜我らの手勢が下屋敷を襲撃したようです、今頃はもう弟殿は討ち取られていることでしょう。検分に参りますか」

「うむ、参るか修理亮、見事討ち果たしておれば我が重臣として厚遇することを約束するぞ」

「それは楽しみで御座います」とあくまで下野守の為に働いたことを演じる修理亮。

川尻吉治、多治見修理亮の二人が配下を従えて、本丸を出発する。

桜は、二人のやり取りの様子を天井裏から確認していた。


*****


勝山猿啄城〈三ノ丸〉に到着した下野守吉治と、多治見修理亮は、三ノ丸の城門が解放されたままで、松明は燃え尽き、守備の兵が全くいないことに何か異変があったのではないかと気付いた。

家来衆達にも神隠しかと緊張が走る。そのまま〈三ノ丸〉に入ると郭の中央広場に遺体が積み重ねられていた。

「この死体は何事だ。織田家の家来衆には見えぬ装備だが・・」

昨夜、伴ノ衆の襲撃により討たれた透波衆の遺体だ。

「修理亮、どういうことだ」矢が突き立った死体の山を見て驚く下野守吉治。

「与蔵、与蔵はどこだ」修理亮が辺りを見回すが、与蔵の返事はない。与蔵は一郎左達の起こした地崩れによって谷底へ落ちている。

そこへ、夜が明けるうちに登城した勘九郎と与四郎が現れる。

「与四郎!」

「兄上、これは甲州の透波衆の遺体ですぞ」と与四郎が指摘する。

「何?」

「川尻下野守、私の顔を見忘れたか!」勘九郎がズイと前に出た。

「こっ!?、これは若様」勘九郎の剣術の打ち込み相手として吉治は何度となく勘九郎の練習相手をしていたのだ、その顔を忘れるわけがない。急いで片膝をつき挨拶する。

不意の来訪者に動揺を隠せない修理亮。

「何をされているのです吉治殿、そやつらは若の偽物じゃ、皆の者、討て、討て!」

「侵入者だ!やってしまえ!」と騒ぐ多治見修理の側近。

「聞き分けのない奴だな」と正九郎。言い抜きざまに、腰から刀を引き抜き

備前大包平びぜんおおかねひら、お主らたたっ斬るぞ!」と太刀を天にかざした。

「だ、大名物だいめいぶつ!?」

その輝きを見ては誰もが確信した。

(嗚呼、このお方達はまぎれもなく本物だ。あのお方も本物の奇妙丸様に間違いない)

大名物の登場に時が止まったような中に、

シュバッ!と屋根から飛び降りて勘九郎の傍に桜が着地した。

「若様、多治見修理亮が下野守殿を騙して、皆を殺害するつもりでいます!」

「お前は誰だ?! 何を根拠にそのような嘘を言っておる!」と動揺する多治見修理亮。

「嘘を付く人間ほど自分の事を棚に上げて、真実を言う者を“嘘つき”と呼ぶよな!!!」と勝蔵。

そこへ一斉に伴ノ衆が現れる。

「多治見修理亮、お主の悪巧みしかと見届けたぞ!!」

動揺する多治見。

「下野守様!こやつ等は嘘を言っておるのです。御手討ちにしてやって下さい」

そう言いながら企みが露見したと覚悟した修理亮が、一番近くにいた下野守吉治を背後から刺し貫こうとする。

その動きに気付いた与四郎が、吉治に駆け寄る。

「兄上、あぶない!」兄を突き飛ばそうしたが、吉治が何かを感じそれよりも早くその場を飛び退く。

そこへ修理助の切っ先が向かう。

与四郎の肘に、修理亮の切っ先が刺さった。

「与四郎!」と吉治。

「吉治殿、これでも弟を信じられませぬか!」と勘九郎。

「おのれ修理亮!」と下野守吉治も抜刀する。

奇妙丸達も、修理亮にジリジリとにじり寄る。

四方から追い詰められ、「もはや、これまで。武士の作法の手本とせよ!」

修理亮は覚悟を決め、自らの刀を飲み込むようにくわえ、石垣から飛び降りた。

「ああっ!」と修理亮の家来衆が驚きの声をあげる。修理亮は谷底へ落ちていった。


皆、石垣の際に駆けより修理亮の姿を探す。

「あっぱれだ、多治見修理亮!」勘九郎は振り返り「多治見衆、修理亮の一命をもって罪は無きものとする!」と宣言する。

残された多治見衆は武装を放棄して項垂れた。

石垣から下を見下ろす勝蔵。

「これほどの闘志がありながら・・」できれば刀を交え決着を付けたかった。しかし、それ以前に、織田家に忠節を尽くし命を張った武功を挙げて恩賞として領地を得る事も出来たはずだと思う勝蔵。

「下野守殿、弟君は貴方の事を心から心配されておられましたぞ」と池田正九郎。

「すまなかった」と自分の過ちを悟った吉治だった。


*****

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