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織田信忠ー奇妙丸道中記ー Lost Generation  作者: 鳥見 勝成
第八話(勝山猿啄城編)
45/404

45部:川尻与四郎

先ほどの喧嘩で実質被害の無かった長男・下野守の家来たちは、勘九郎から下野守吉治に伝言を頼まれ勝山城に引き上げてゆく。伝言の内容は、奇妙丸一行が下野守に至急面会したいので下屋敷で待っているというものだ。

「驚いたな」と予想外の奇妙丸一行の登場にまだ混乱している吉治の家来衆。

「あそこで、若が仲裁に入って頂いて良かったかもしれぬ」

「あのままでは城下で斬り合いになり、秀隆様に合わせる顔がない」

「そうだな」と頷き合う家来衆達。

「しかし、与蔵はどこへ行ったのだ」と事件の原因者の行方などを話し合いながら山道を登る。

勝山猿啄城中腹の〈三ノ丸〉の一ノ門に差し掛かったところで、おもむろに高所から矢が滝のように降りかかり、長男の家来衆達を襲う。

次々と倒れる家来衆。

「何奴っ」矢の第一波から生き延びた者が、矢を降らせた敵を捜す。

襲撃者を見極め、反撃の機会を見つけようとするが、矢の第二波が生存者に狙いをつけて降り注いできた。

町から引き揚げてきた家来たちは、〈三ノ丸〉門前で一人残らず討ち取られてしまった。

「若が来ている事を報告されると面倒な事になるからな」と多治見与蔵とその配下の*透波すっぱ衆。*甲州系の忍者集団。

「川尻一族は邪魔だ、殺し合ってもらう」

与蔵達は、始末した吉治の家来衆の死体を引き摺り、証拠隠滅のため山中へと消えて行った。


*****


勝山猿啄城下、川尻屋敷。

川尻秀隆の屋敷は決して華美ではなく色合いの基調は黒、秀隆の人柄を現すような質実剛健のどっしりとした門構えと、落ち着いた風情の広い庭に囲まれた武家屋敷である。現在は兄が勝山猿啄城に詰めているため、町中の屋敷は与四郎が預かっている。

「若、すべては誤解から始まっているのです。私は兄と争う気は全くありませぬ」四人に向かって深々と頭を下げ、家中の混乱を詫びる与四郎である。

「私の剣の師匠の御家の大事だ、私が明日、そなたの兄・下野守と話を付けよう」

「私も兄と話をします」

「うむ、誤解が解けるとよいの」

そこへ隣の客間を与えられ、隠密おんみつ姿に着替えた桜が現れた。

「勘九郎様、私は先に城の様子を探ってまいります」

桜は隠密である自分の任務を果たさねば、と決意の表情である。

「頼んだぞ。しかし、決して無理はするなよ」

「はい」と返事をして桜は庭先へ駈け出して行った。

「明日の会談では、勝蔵、平八、正九郎は与四郎殿を護衛してくれ」

「承知しました、我君」

勘九郎達の頼もしさに、与四郎は心強い気持ちになった。

「かたじけない」深々と四人にお辞儀をした。


*****


桜は兄達、伴ノこうがの目印を頼りに拠点と決めた神社で皆と合流し、事のあらましを説明した。

「兄上、多治見修理の家臣・与蔵が流言を流している様子です」

「判った。どうやら多治見家が絡んでいるようだな」

「四郎左の方は何か情報を掴んでいるか」と一郎左。東美濃の諜報活動を続けてきた弟だ。

「一郎兄、多治見城に甲州の透波すっぱらしきものが出入りするところを確認しています」

伴四郎左の報告では、多治見修理亮は武田家の後援を見込んで謀反の心を抱いた様子である。

どうやら、伊勢出兵により手薄になった勝山猿啄城を奪取するつもりのようだ。

「勝山猿啄城に私が潜入してきます」と桜。

「では、透波は私たちが引きつける。桜は人がいなくなったら潜入してくれ」と兄達。

一郎左は、桜が城内に潜入しやすいように、相手の隙を造ることにした。


*****

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