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織田信忠ー奇妙丸道中記ー Lost Generation  作者: 鳥見 勝成
第一話(奇妙丸) 『奇妙丸道中記』第一部 武田松姫
2/404

2部:濃御前、奇蝶(帰蝶)

http://17453.mitemin.net/i186276/ 岐阜城イメージ図


挿絵(By みてみん)

<登場人物>

 奇妙丸=織田信長の嫡男、元服前の織田信忠。

 奇蝶=奇蝶御前。織田信長の正室。斎藤道三の娘・帰蝶。民衆からは通称「濃姫」、または「濃御前」と敬愛を込めて呼ばれる。

 冬姫=織田信長の娘。

 鶴千代=近江の豪族・蒲生賢秀の長男。奇妙丸の側近。いざという時の人質でもある。のち元服して忠三郎氏郷と名乗る。

 於勝=森可成の次男。奇妙丸の側近。正式には勝法師だが略されて於勝。のち元服し勝蔵長可。

 於八=奇妙丸の守役・梶原景久の長男。奇妙丸の側近。正式には八郎丸。のち元服し平八郎忠正。


奇妙丸は金華山きんかざん山頂での政務を終え、ふもとの居館に戻り、

一日のしめくくりに<濃御殿>にある義母・奇蝶きちょう(帰蝶ともいう)の部屋へ向かった。


側室の子である自分を、我が子のように慈しんでくれる美しい母に、朝夕に挨拶の目通りをするのが奇妙丸の日課だ。

帰蝶きちょうは、名前を揶揄からかわれる奇妙丸の為に、名を「奇蝶きちょう」と改名した程に溺愛している。

しかし美濃国の民衆からは、旧国主・斎藤道三様の“忘れ形見”「於濃御前おのうごぜん」、または「濃姫のうひめ」の愛称で呼ばれ親しまれている。


「母上様」

「なんじゃ、奇妙丸?」

いつもの優しい声で返事がある。

「明日は、少し領内を見回りに出かけて来ても宜しいでしょうか?」

「だめじゃ、そなた何を言いだすのだ、この母を一人にして置いてゆくか?、母の事を嫌いになったのか?」

奇妙丸を見つめる奇蝶。

(そのような目で・・母上のこの瞳に弱いのだ。これは離してくれそうにないので御座る)

「申し訳ございませんでした」

畳に手を突いて謝罪する。

「わかってくれたのなら良い、ささ、今日の話をきかせておくれ」

押しても無理と諦めて、外出の話しはここで切り上げ、涌いた湯を移して母の為にお茶を煎れる。


母が侍女に銘じて用意した茶菓子を頂きながら談笑するのがいつもの習慣である。

その後、半刻ほど城内の者の失敗談などを語り談笑した。


「母上に心に掛けてもらえて、奇妙は幸福者に御座いまする」

「またおいで」

恭しく頭を下げ、養母・奇蝶御前の間を退出した。

(こうなれば、最終手段だな・・)


*****

翌日の明朝。


奇妙丸は傍衆そばしゅうの三人を自室に呼び出した。

「のう鶴千代(のちの蒲生忠三郎氏郷)、於勝(森勝法師、愛称として「於」が付き「於勝」)、於八(正式には梶原八郎丸)。相談したいことがあるのだが」


「なんでございますか?」

三人を代表して年長の於八が聞いた。

「実は、自分で領内を検分して回りたいのだ」


全員が難しい表情になる。

「問題がございまするな・・・」

いつも冷静な於八が答える。

「お殿様(信長)の直筆の御教訓状だな」

於八の言葉に、鶴千代もつづく。


・・・・鶴千代は先年、北伊勢の豪族・神戸具盛かんべとももりの説得によって降伏開城した近江国日野城主・蒲生賢秀がもうかたひでの嫡男で、現在は織田家へ人質として岐阜城に預けられている。

奇妙丸は、鶴千代と年齢が近い事もあり、人質や客人としてよりも「友」もしくは「兄弟」の心積もりで遇している。


「その一、 我々の子弟たるものが伴の者をもつけず・・・、」

ひねりだすように言葉を思い出す於勝。


・・・於勝は、織田家の重臣・森可成の次男だ。重臣の子弟が奇妙丸付きの乳兄弟・小姓として奉公していた。


「でござりますな」

於勝に相槌を打つ於八。


・・・於八も織田家の重臣である梶原景久の息子だ。奇妙丸と年齢が近く幼少の頃から出仕している古参の傍衆だ。母が奇妙丸の乳母であり、ほぼ兄弟といえる関係である。


「それに、若様は城を空けるのでございますか?」

心配気に鶴千代が問うた。


「教訓状にはこうも書いてある。戦に備え地形を確認するための検分は許す」

「しかし、岐阜城留守居という大役が」

と奇妙丸を戒めるように於八が返す。

「そうそう、問題はそこだ。  しかーし、お主達が承知してくれれば問題はない!」

「「なんと?!(×3名)」」


開き直りともいえる奇妙丸の発言に驚きの三人、信長様が知ったら、連座がとわれ皆ただごとではすまない。

「こういう時の為に、用意したのだ!」

(ポンポン)

と両手を叩く奇妙丸。


それが合図であったようで、

「御免!」

スッと、小姓達の控える武者隠しの間から、奇妙丸と同じ身なりをした若者が現れた。

「こっ! これは?!」

驚く三人。


「どうだ!」

してやったりと喜色満面の奇妙丸である。

「これは~!」

「なんと、若様に瓜二つではないですか、どなたでございますか? 弟君の茶筅丸様?いやそんなはずがない」

まじまじと二人の奇妙丸を見比べる。


「わからぬか?」

思案顔の三人に満足気な奇妙丸である。

「実は、冬姫だ!」


「「え? えええええ~!(×3)」」


***********


岐阜城、麓の居館は、

信長が政務を行う場所を岐阜御殿、

奇蝶御前の居る場所を濃御殿、

奇妙丸や冬姫の居る場所を奥御殿と設定しました。

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