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織田信忠ー奇妙丸道中記ー Lost Generation  作者: 鳥見 勝成
第二十八話(藤島編)
191/404

191部:岩崎城

そこへ伴ノ一郎左の弟、伴ノ三郎左衛門が物見から帰還した。

奇妙丸の護衛に徹する桜と目で挨拶を交わし、奇妙丸の前に片膝で控える。

「ご苦労だ、三郎左」

「はい。若様、岩崎城周辺に軍団が出現し、城を包囲し始めているようです」

「今度は岩崎が狙われた?」

驚く一同。

「いったい何処の軍勢だろう?」

今度は手薄になった岩崎城を狙う一党が現れたということだろうか。

次から次へと玉突き現象の様に各地で抗争が起きる様だ。出発してきた沓掛城は大丈夫なのか?と不安のよぎる簗田出羽守。


「旗印を観るかぎりでは林家に間違いないかと」

三郎左が続けた。

「林家だと!?」

簗田が目をくわっと見開いて驚く。

奇妙丸とは清州城の一件で揉めたばかりだ。すっかり臍を曲げてしまって腰の重い秀貞が、奇妙丸の為に動くとは思えなかった。

「まさか、佐渡守の別心か?」

林佐渡守秀貞は信用が置けない人物だ、と思う奇妙丸に於八、於勝、桜の四人。

那古屋城に引き上げた林家が、独立を画して挙兵し、周辺の各城を配下に加えていっているのか?

その可能性も考えるが、そのような面倒な事はせずに、まずは尾張の拠点である下守護所の清州城や、上守護所の岩倉城を占拠にでるのが普通だろう。

「荒川殿を救援するための援軍と考えるべきかな」

全員がそう思い直していた。


そこへ、三郎の引き返した後も現地に残っていた弟・伴ノ四郎左衛門が戻った。

三郎左と同じく、先に戻った三郎左と、桜に眼で挨拶を交わす。

そして、奇妙丸の前に片膝をついて控える。

「よく戻った、四郎左」

四郎左は、確認した事を報告する。

「岩崎城の目の前に陣地を構築しているのは那古屋勢と守山勢、それに末盛勢と下社勢です。本陣の旗印は間違いなく林佐渡守秀貞殿の様です」

「「おおー」」

想定していたので納得はしているものの、改めて驚く一同。

「では、林伝助勝吉と山内猪右衛門一豊達も来ているかもしれぬ」

清州での出会いを思い出す四人(奇妙丸、於八、於勝、桜)。

「周辺の城からも、後詰軍が駆けつけたのだな」

「かねてより、岩崎丹羽家は油断できぬ存在と警戒していた、柴田殿の成果ですね」

柴田の居城である下社城から、各城へ連絡が回ったのかもしれないと読み、簗田も納得顔だ。


*****


藤島を囲む岩崎軍の陣

岩崎丹羽氏織の馬印がある陣幕に、早馬が駆け込んできた。

「どうした?!」

氏織が馬上の母衣を背負った武者に質問する。

母衣武者は主を確認し、慌てて報告する。

「大変です!岩崎城が織田軍に囲まれています!」

岩崎城の方角に振り返る四人。


「丹羽殿、ほれ、岩崎の辺りから狼煙があがっているぞ」

「なに?!」

形相の代わる氏織。

「見張られておったか」

息子たちが伊勢に参陣しているので、警戒は解かれているだろうと安心していた丹羽氏織だったが、考えが甘かったようだ。

それどころか、伊勢出兵に従って岩崎城が手薄なのを見越して、信長が柴田の軍勢を仕向けたのかもしれぬと、自分の事は棚に上げて怒りに震え始める。

「丹羽殿、ここは我らに任せて、城に戻った方が良いのではないか?」

「う、うむ」

動揺している氏織。しかし、この挙兵の首謀者でもある自分が、ここはしっかりせねばと気持ちを落ち着かせる。

「あと一息で、荒川も退散しよう。我々は囲み続けます。ここは、丹羽家の旗を置いて行っていただけますかな?」

人数が減ることを藤島に知られぬように篠田が策を練った。

「うむ。そうしよう。織田軍を追い払って、すぐに戻る故、藤島城を頼んだぞ」

ここは一旦、三河の三人衆に陣を預ける事に決める。

「手練れの我らが、荒川の青武者に負けることはない」

「そうであった。では!」

「おう!」

「しっかりおっぱらって下され!」

「打倒、織田!」

三人からの声援を受けて、昔に戻ったような気分で勇躍する氏織だった。


*****


「岩崎丹羽勢が引き上げてゆく」

森の向こうの陣営を指さす於勝。

「藤島の包囲陣が、手薄になりましたな」

簗田も思わぬ敵軍の動きに、有利になったと自信の戻った表情になる。

「偶然かもしれぬが、林殿の一手、凄い効果だ」

於八も織田軍の動きを頼もしく感じて、嬉しい表情をしている。


「岩崎を包囲している織田方は、丹羽勢が戻るのを気が付いているのだろうか?」

ふと、不安がさす汎秀。汎秀は用心深い性格の様だ。

「狼煙があがった時点で、どこかから後詰が来るのではと読まれているかと思われます」

汎秀の言葉に返事したのは、森から戻って来た弥富服部の政友だ。

「政友」

奇妙丸が、戻った政友を迎える。

「この先の丘から、岩崎の状況も見て取れますよ」

「よし、見に行くか」

政友はひと足先に岩倉の様子も観察していたようだ。

「全軍、目立たぬ様に静かに待機していてくれと伝えてくれ」

簗田と平手そして山田に、奇妙丸は次の指示まで待機することを連絡してほしいと頼む。

「「はいっ」」

三人は、配下の隊長達に指示を伝達する。

一行は、政友に案内され岩崎城が望める丘へと向かう。


*****


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