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織田信忠ー奇妙丸道中記ー Lost Generation  作者: 鳥見 勝成
第二十七話(知立編)
180/404

180部:黄金武者

<安祥城>

岡崎城からは、城外の丘に駐屯する小瀬清長軍二千と合流し安祥城へと向かう。

帰りの道中は、基本的に陸路を進み、川を横断するときだけ渡舟場を利用することにした。

美濃の諸豪達も帰路が同じ方向の者は、一緒に鎌倉街道を西へと移動し、南北に自領がある者から挨拶を交わして別れてゆく。皆、奇妙丸に必ず良い木材を贈るので安心して下さいと約束していった。


やがて、城主・信成の待つ安祥城が見えてきた。安祥周辺はいたって平穏だが警戒態勢は解いていない。奇妙丸の両横には、厚い鎧で身を固めた黒武者と白武者が付かず離れず護衛している。

於勝と於八は紫直垂の正装をしているが、二人の鎧姿を羨ましそうに見ている。二人は冬姫から拝領した防具を装備しているが、やはり調度の整えられた馬廻衆の武者鎧は憧れの対象だ。


「奇妙丸様。我らもそろそろ、お揃いの甲冑を準備しないといけませんね」

「そうだなぁ」

「山田殿と楽呂左衛門、父上の考えは、二人の適正的に弓衆を黒、鉄砲衆を白で統一せよということなのかな?」

「そうですね」

「二人に弓頭と鉄砲頭を任せるとして、あとはなんだろう」

「私は赤武者で」すかさず於八が自己主張する。於八は炎が燃えるような赤がすきだ。

於勝も好きな色は決まっている。

「じゃあ、俺は目立つ黄金武者で!!」


服部政友が、

「いざというとき奇妙丸様の身代わりが出来るように、お側の何人かは奇妙丸様と同色がよろしいかと」ともしもの事を考えて助言する。

「体格的に、政友殿があうんじゃないでしょうか」

と、二人の後ろ姿を見比べて於勝が言い出した。

「え?」

「じゃあ、政友殿に私と同じ紫鎧を着ていただくことに?」

「いっ、いつでも身代わりになりましょうぞ!」

政友が引くに退けなくなった姿を見て皆笑う。

「影武者に選んで頂いて光栄ですとも!」

「あははは、そのような窮地に会うことはないようにしよう」

そのような話をしながら安祥にたどり着く。


「清長殿、後詰の任、ご苦労であった」

そこへ信成も迎えにやってきた。

「無事に戻られてなによりです、岡崎の様子はどうでしたか?」

「しばらく、徳川家が独断で何かすることは無いと思う」

「それならば良いのですが」

「信成殿は大変だと思うが油断せず目を光らせていて下さい」

「ええ、今は畿内平定が優先ですからね。東の平穏を壊すものは早めに対処します」

「心強い」


「安祥でゆっくりされますか?」

「いや、熱田に戻って大工の岡部殿と松姫御殿の設計を詰めたいと思っているんだ」

「松姫御殿ですか、武田家との同盟は大切です。私も協力しますのでなんなりと申し付け下さい」

「有り難い」


「では、弟の信昌に知立まで護衛させましょう。」

信成が弟を呼ぶ。

「よいか、信昌?」

「お任せ下されぃ」

相撲大会の時にも出会ったが話をすることは少なかった。口数は少ないが背中で語る豪傑風な弟だ。少し照れ屋なのだろう。

「寄りたいところがあるので、町外の門で待っていてもらいたい」

「ははっ」

こうして、安祥から知立城までは、清長に代わり織田四郎三郎信昌と行動を共にすることになる。


奇妙丸一行は、政信が治療されている安祥城下の医者宅に立ち寄った。

旅の汚れもあるので庭から入り病室の縁側に向かう。虎松が、政信の病室に駆け寄る。

母のお政が襖を開けて部屋の空気を入れ替えていた。政信は布団で横になってはいるが起きていて、奇妙丸一行の到着に気付いていた。

枕元には、奇妙丸が虎松に与えた愛染国俊がある。

「政信殿、お加減は如何でしょうか」

政信は、妻のお政の献身的な看病で驚異的な回復を見せている。

しかしまだ、旅をするほど体力は備わってはいない。

「奇妙丸様」

お政が奇妙丸を呼び止めた。

そして、虎松を立たせる。

「虎松を尾張へ連れて行ってやって下さい」

「良いのか政信殿」

「傷が回復したら我々も必ず、刀を持って清州に向かいます」

「よし、待っているぞ」

於八が虎松の肩を抱く。

「では清州で」

政信が奇妙丸の手を強く握る。虎松を託された重みを感じる。


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