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織田信忠ー奇妙丸道中記ー Lost Generation  作者: 鳥見 勝成
第二十六話(岡崎城編)
176/404

176部:大河内城包囲、陣立

http://17453.mitemin.net/i235692/ 伊勢大河内城イメージ図

挿絵(By みてみん)

「信長様の「大河内城攻め」での陣立てに御座いまする」


山田左衛門佐勝盛が、一同を見渡してから、畳一枚分はあるかという絵図を披露する。

この大河内城陣立の絵図面は、信長がこの栄えある陣立てを各所で宣伝せよと、諸将に文書で送られたものから図面に起こした。

昨夜、勝盛が宴を退席して、書状を読み返して描き上げたものだ。


小姓達が絵図を受け取り、糊を四方にぬって、取り外した広間の板戸に急いで貼りつけた。


「これは伊勢大河内城周辺の絵図に御座います。大河内の東にある立野城に「信長様御本陣」が据えられました」


「おお~」っと絵図面に感心する三河衆。


勝盛が一度、奇妙丸の表情をみてから説明を続ける。


「大河内の南の山には、信長様の御舎弟・織田上野守(北伊勢長野家の養子に入り長野信包)、後見人の瀧川左近将監(一益)、津田掃部(一安)殿。

与力に北伊勢衆が従軍しています。


更に、尾張衆の丹羽五郎左衛門(長秀)を旗頭に、戦傷した秀吉殿に代わり木下小一郎(秀長)、池田勝三郎(恒興)、和田新介(定利)、中島豊後守殿。

美濃衆の稲葉伊予守(良通)。

近江旧六角衆の進藤山城守(賢盛)、後藤喜三郎(高治)、蒲生右兵衛大輔(賢秀)、永原筑前守(重康)、永田刑部少輔(正貞)、青地駿河守(茂綱)、山岡美作守(重綱)、山岡玉林(景猶)が在陣しています」


折畳んだ扇で、要所要所の位置を指示しながら説明する。

貴重な最新情報なので、広間に座す諸将、居合わす者達は皆、聞き耳を立てて無駄口を叩くものは一人もいない。

勝盛が続ける。


「西の包囲軍には佐久間右衛門(信盛)を筆頭に、美濃衆の氏家卜全、伊賀伊賀守(安藤守就)、飯沼勘平(長継)、市橋九郎右衛門(長利)、奇妙丸様陣代の塚本小大膳殿。


北の包囲軍には、東美濃旗頭の斎藤新五長龍殿、後見人に坂井右近(政尚)殿、美濃衆の蜂屋伯耆守(頼隆)、尾張衆の簗田弥次右衛門、西三河衆の中条将監(家忠)、中条又兵衛殿。

浅井家からの援軍の将には、浅井家中の磯野丹波守(長昌)殿」


北近江の浅井家からも、主力と言っても良い精強な部隊が、義兄・信長の為に送られている。流石に北に陣する旧六角勢とは、同陣とならないように配慮がされている。

それに西三河中条家の一族も、援軍として遠路出征していた。


東の包囲軍には、「信長様御座所」立野城の前面に、両翼を柴田勝家殿と森三左衛門可成殿の両大将が陣を構える。

北伊勢に入った神戸三七殿の陣代として山下三右衛門*1。

尾張衆の長谷川与次(可竹よしたけ*2)、佐々内蔵介成政、佐々隼人(政次)、梶原平次郎、丹羽源六(氏勝)。

美濃衆の不破河内守(光治)、不破彦三(勝光)、丸毛兵庫頭長照(光兼)、丸毛三郎兵衛長隆(兼利)。


織田軍の総勢は、七万人で御座います」


「「おおぅ」」広間に嘆息の声が響く。

七万人という飛び抜けた動員力に驚く三河衆。今、織田信長の勢いは山をも動かしそうだ。


「これらの陣所前には、国司・北畠側の出入りを監視するために、二重三重にしし垣を巡らせ、大河内城を包囲しております。

更に、しし垣を巡らせた柵際さくぎわと各将の陣所を、時間制で見回り当番を交代する廻番衆が信長馬廻から選抜されました。


名簿にある者は、

①菅屋九右衛門(長頼)、②赤幌衆・塙九郎左衛門(直政)、③赤幌衆・前田又左衛門(利家)、④赤幌衆・福富平左衛門(秀勝)、⑤黒幌衆・中川八郎右衛門(重政)、⑥赤幌衆・木下雅楽介(嘉俊)、⑦黒幌衆・松岡九郎二郎、⑧生駒平左衛門、⑨黒幌衆筆頭・川尻与兵衛(秀隆)、⑩湯浅甚介(直宗)、⑪村井新四郎(貞成)、⑫中川金右衛門。


⑬佐久間弥太郎、⑭黒幌衆・毛利新介(秀高)、⑮赤幌衆・毛利河内(秀頼)、⑯黒幌衆・生駒勝介、⑰神戸賀介、⑱荒川新八、⑲猪子賀介、⑳野々村主水、㉑山田弥太郎、㉒瀧川彦右衛門、㉓山田左衛門尉、㉔赤幌衆・佐脇藤八(前田良之)。


以上の24名に御座います」


三河衆とも縁の深い者もいる。皆、知り合いの名を聞いては、うんうんと頷いている。

24名の武辺者に選ばれた侍達と血縁関係のあるものは、他人事ながら鼻が高い。


奇妙丸は、蒲生鶴千代の名前は交名になかったが、周囲の荒武者に揉まれながら頑張っているのだろうと想像する。

塚本小大膳は長陣で老齢の身に風邪などひいていないだろうか?と心配になる。

於八に、於勝も一族の事が胸に去来する様子だ。


「上方の情勢は、将軍の威勢届き、いたって静謐に御座います」

最後は「はったり」だが、勝盛が三河衆を安心させるために言った言葉だ。


説明が終わり、奇妙丸にお辞儀する勝盛。

「うん」

奇妙丸は再び、勝盛の描いた絵図面を凝視した。


*****


*1)山下三右衛門尉・・神戸信孝の家臣です。事績は詳しくは分りません。『信長公記』では陣立てには山田三左衛門と記されているのですが、後の秀吉の記事介入などで、信孝家臣の活躍などは削られているのかもと思い、小説では山田勝盛に代わり挿入させて頂きました

(ケガをした秀吉の名前が挙がっている時点で、『公記』の陣立ては怪しいと思います。柴田や佐久間に丹羽の地位も「ぼかし」がかかっていると思えてきます)。

*2)長谷川秀一の養父である、長谷川丹波守可竹または嘉竹ですが、「よしたけ」と読めるのかとふと思ったので「よしたけ」にしておきました。信長様配下で家畜って・・ありそうだけど、やめときます。

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