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織田信忠ー奇妙丸道中記ー Lost Generation  作者: 鳥見 勝成
第二十六話(岡崎城編)
175/404

175部:徳川家の席次

<岡崎城、本丸の大広間>

「さあさあこちらへ」と奇妙丸を案内する家康。

奇妙丸の護衛は、伴ノ一郎左衛門から楽呂左衛門に代わり、楽呂左衛門は常に奇妙丸の背後に控えている。とにかく人目をひく二人になるが、呂左衛門が衆の中で珍奇な扱い(質問攻め)を受けるよりも、奇妙丸が防壁となった方が良いという判断も働いている。

一郎左衛門と桜は、目立たぬ姿で隠密警護の任にあたることとなった。

於八に於勝や政友と勝盛達は、下座で控える。

奇妙丸に何かあったときは身体を張って守るつもりだ。

三河衆に囲まれても気合が入っている。


「信康と並んで座って頂けますかな?」

信康と奇妙丸を同列に置いて、自分は二人の父であるという立場を、三河衆に強調する家康。

奇妙丸は特に無礼でもないので、従って信康と挨拶をかわし床机に座す。

楽呂左衛門がそのままついて行き、奇妙丸の後ろに立つ。

(南蛮人なので礼儀をしらないのか・・・?)

という雰囲気が漂うが、本人は何食わぬ顔をしている。

苦笑いする家康だが、周囲にもまあ良いだろうという顔をして器の大きいところをみせようとする。

そして、家康はしっかりと中央に座して、上座の配列を岡崎衆の代表・長沢松平康忠に読み上げさせた。


「鵜殿八郎三郎長信殿はこちらへ」

家中の筆頭に座席を置かれ、今川家滅部後の地位の現状維持に安心する鵜殿長信。

まだ、家康からも軽んじられてはいない事が確認でき、一安心している。


次に、いつもなら二番の席次に入る三河守護代家の西郷義勝と陣代の清員は、遠江国の前線、見付城に当番で詰めている為不在なので、次席の東条松平甚太郎家忠(1545年生まれ)が繰り上がる。東条松平は家康の4代前・長親の4男・義春から始まる。


三番に桜井松平忠正・忠吉兄弟が呼ばれた。桜井家は長親の3男・信定から始まる。

次に大給松平親乗・長乗親子、大給親子は桜井兄弟が上席なのが気に食わない。大給は長親の兄・乗元から始まる。


四番に信康の守役でもある長沢松平康忠。長沢家は家康の6代前・信光の11男・親乗に始まる。

その次は、深溝松平家忠(1555年生まれ)が着座する。深溝は信光の7男・忠景の後裔だ。

上座を占める松平一族はここまでである。他の松平一族の者は下座で譜代家臣たちと同格扱いだ。


次に、所領が渥美半島の重要な地にあるため加えられた、戸田虎千代(のち康長:1562生まれ)と、戸田一門で後見人でもある陣代・戸田吉国。


そして、家康にとって煙たい御意見番となりつつある本多豊後入道広孝、そして東条陣代の松井忠次(のち松平康親:1521年生まれ)が呼ばれた。


最後に呼ばれたのは東三河の大領主・牧野氏だ。父が一昨年急死したため幼少ながら跡を継いだ康成(1555生まれ)が着座する。牧野氏の与力である稲垣氏等は席を与えられていない。

「この順番でよろしいかな」

各人を見渡す家康。


この席次に慣れず、不満げな本多豊後入道だが、酒井・石川の両家や、鳥居・内藤といった豪族よりも格上ということで納得せねばなるまいと、自分に言い聞かせる。

数多くいる本多一族の中でも「自分が惣領である」と、確認できるのは大事なことだ。


席の用意されていない者は下座に居並び、更には、この座敷にも入れない者もいる。

徳川家では厳格に、武士団に格付けがなされている様子だった。

近親関係や、家康への忠節度で、順位は上下するのだろう。上座に昇りたい者は家康への忠節を示すしかない。家康の家臣団統制の重要な儀式のようだ。


東条家忠も、東条家関係者が二名も座席を用意されている強力な一党であるという誇りよりも、陣代である松井忠次が直接的に家康の指揮下に入り、家中が分断されるのではないかと疑いを抱いているので、その胸中は複雑だ。


奇妙丸は、この場を客観的に観察して、家康の家臣団掌握の手法を興味深く見る。

流石、今川の軍師・太原雪斎に学んだだけのことはある。


家康が、広間の様子が落ち着くのを見計らってから、立ち上がる。

「それでは山田左衛門佐勝盛殿、伊勢国司・北畠家御成敗の陣立てのご説明をお願い申し上げる」

得意げな家康の声が響き渡った。


設定集にて三河国で登場する人物を整理してみました。

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