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織田信忠ー奇妙丸道中記ー Lost Generation  作者: 鳥見 勝成
第二十五話(安祥八幡編)
169/404

169部:徳川三河守家康

「なに?! 家康?!」

土俵中央の奇妙丸を囲んで集まろうとしていた当主達が、騎馬の方へと振り返る。

「はっはっはっは、盛り上がっておりますな」

徳川三河守家康が、奇妙丸に馬上から呼びかける。

旅装姿に、籠手・脛当てを付けただけの簡単な武装をした色黒い武将だ。顎には髭を少しだけ蓄えている。

信康は慌てて立ち上がる。

チラリと信康を一瞥しただけで、再び土俵の上を見る家康。

家康が信康を見る目が冷たい。今までに味わったことのない屈辱を覚える二郎三郎信康。

奇妙丸の周りの面々を見渡す家康。

「はっはっは、皆の衆、顔を揃えておるなあ」


境内では岡崎に奉公している侍達が、家康の来訪を民衆に伝える。

「ご領主様だー」

「控えよ、控えよー!」と各所で声が起きて、観衆達がにわかに静かになり、地面に伏して控える。


伴ノ一郎左衛門が、奇妙丸の傍に駆けつける。

「若様!どうやら三河守の連れて来た浜松勢に囲まれつつあるようです」

「なんと?!」

自分を人質にとるつもりか、こうなることを想定していなかったので油断していたと、反省する奇妙丸。同時に、これからどう対応するか考えを巡らせる。

奇妙丸が、五徳姫の方へ振り返る。

五徳姫の居る陣幕内には、於八達と伴ノ衆が駆け付け、身辺を守っている。


奇妙丸の傍で、伴の報告を一緒に聞いていた豪族たちは、怒りの表情に顔色が変わっていた。

「家康、余計な事はするなよ!」大給松平親乗が家康を一喝する。

気の早い水野忠重は刀の鍔に親指をかけている。

「我ら、今回は織田奇妙丸殿をお守りいたす」本多豊後入道広孝が数歩前に進みでて家康に向かって宣言する。

内藤入道清長、鳥居伊賀入道忠吉、大河内金兵衛秀綱も、家康を睨みつけて顔付きが真剣になっている。


「はっはっは。私は奇妙丸殿が来られていると聞いて、浜松から急いでご挨拶に来たまでじゃ」

「この兵士共はなんとしたことじゃ?」

鵜殿長信が裏返った声で家康に抗議する。

「要人が揃っておるので、警護の為に配置したまでのこと、」

フッと鼻で笑って家康が答える。


次々と、波紋が広がってゆくように、八幡神社を囲む民衆が伏していくので、周囲の見晴らしが良くなる。

土俵の上から周囲を見渡してみると、旗印を立ててはいないが浜松軍とみられる旅装姿の武士団が、神社の四方を取り囲みつつある。


「あっ、あれは何だ?」

遠目の利く、於八の声を聴いて、奇妙丸以下全員が於八の指さす方向を見る。

浜松軍の囲みの外から、浜松衆とは違い、完全武装をした織田家の旗印「永楽銭」の旗を立てた一行がやって来ている。その人数500ばかり。


織田家の旗印の前に、浜松軍は潮が引く様に道を開ける。

「のけ~!のけい!道を開けろ!」

先頭を行く黒い鎧の武者の声を聴いて、

急いで道をあける民衆たち。


更に速度を上げて、

20騎の騎馬の一団が境内の中まで駆けつけてきた。

黒い鎧武者の横に、対となるような白い鎧の武者がいる。


「奇妙丸様!」

白色の鎧を着た先頭の体格の良い武者が、兜と面当てを取り外す。

「おお、楽呂左衛門!」

にこやかに応える奇妙丸だが、周りの者達は騎馬武者の異相に驚愕する。

「南蛮人だ!」

「南蛮人の武将がいるぞ!!」

三河衆達は、初めて間近に見る南蛮武将に大騒ぎになった。


*****


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