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織田信忠ー奇妙丸道中記ー Lost Generation  作者: 鳥見 勝成
第二十四話(安祥編その2)
161/404

161部:鵜殿八郎三郎長信

大相撲の本戦を前に、小相撲の表彰が始まった。

奇妙丸の居る陣幕の前に進み出る二人。

「虎松、与平次、頑張ったな。まるで虎と竜の戦いの様だったぞ」

奇妙丸が立ち上がり、竜虎と表現した二人を迎える。

「奇妙丸様、どうぞ」

大会を取り仕切る小瀬清長が、褒賞の品物と目録を奇妙丸に差し出した。

「小相撲の優勝者には褒美として、この愛染国俊をとらせる」


・・・・・愛染国俊、鎌倉時代の名工・国俊の作刀で、茎には愛染明王が刻まれた小刀だ。

奇妙丸が風邪をひいた時に、父・信長が邪気を払う効果があると言って譲ってくれた刀だ。


「光栄です!」

「それから、この小袖が副賞だ、そしてその他の品物の目録だ」

伴ノ一郎左衛門が折り畳んだ小袖を持ってきた。

「有難うございます」

陣幕を覗いている観衆から、虎松に拍手が送られる。

虎松は愛染国俊を空高く掲げて、声援に応える。


ついで、準優勝の結果となった三宅与平次を傍に呼ぶ。

「与平次も見事だった!」

「優勝できなくて残念です」

眼を潤ませて悔しそうな与平次だ。

「これを着るが良い」

奇妙丸が愛用していた織田木瓜の家紋入り小袖を与える。

「有難き幸せ」

と言いつつも、満足できず本当に悔しそうな与平次。


「私は広く人材を募集している。三宅与平次、お主は見所がありそうだ、どうだ、私の所に出仕しないか?」

「大鹿毛に乗せて貰えますか?」

「乗せてやる変わりに、お主が大鹿毛の世話をしてくれるか?」

「はいっ!屯倉の牧で鍛えた腕で、大鹿毛を竜の如くしてみせましょう」

「よし! では明日、安祥城に私を訪ねて来てくれ」

「よかったな、与平」

「ありがとう虎松」

ガッシリと握手する二人に拍手を送る観衆。


こうして、虎松と与平次は奇妙丸の傍に上がることが決まった。

拍手の中、陣幕から出る二人。

奇妙丸には、それぞれが竜虎を背負う後ろ姿に見えた。

(二人に虎と竜の羽織を着せたいな)

いつか実行に移そうと決める。


虎松の雄姿を笑顔で迎える於政と桜。

「父上のお守りに、この愛染国俊を届けます」

虎松を抱きしめる於政だった。


*****


大相撲の本戦前、会場が緊張と期待に包まれる中、新たな一行が奇妙丸の陣幕に訪れた。

三河の頭領・鵜殿八郎三郎長信が、相撲大会の盛況ぶりを聞いて駆け付けて来た。


・・・・・三河蒲郡には上郷の鵜殿家に対して、下郷の鵜殿家があった。

上ノ郷の領主、今川義元の甥である鵜殿蔵太郎長照が最後まで家康に抵抗した。下ノ郷の鵜殿八郎三郎長信は、織田信長や家康により擁立されて鵜殿氏の惣領家となっていた。1567年正月の岡崎城での反今川決起の集いには、鵜殿長信は席次筆頭に挙げらる程の影響力を持っている。


長信が信成の案内で奇妙丸の陣屋に通される。

「これは鵜殿様、わざわざご足労頂き有難うございます」

線の細い若者で、いかにも大事にされて育った貴公子の風がある。前線で指揮を執る武人向きではない体格だ。

「奇妙丸殿、突然の来訪で驚きました。家康殿にはご連絡済みで?」

「いえ、織田家は伊勢攻めの最中故に隠密で参りましたが、こうなりました」

「はっはっは。奇妙丸殿がお越しとあれば皆集まる。ただで帰る事はできぬでしょう。いやしかし、私も奇妙丸殿に会えて良かった」

「何かお困りのことが?」

「それは、おいおい・・。今は、相撲を楽しませて貰いましょう」

やや伏目にがちになるも、再び微笑して奇妙丸を見る鵜殿八郎三郎長信。

「そうですね・・」

何か言いたげな長信を案ずる奇妙丸だった。


*****


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