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織田信忠ー奇妙丸道中記ー Lost Generation  作者: 鳥見 勝成
第二十四話(安祥編その2)
157/404

157部:5番勝負

久松三朗四郎は、これまでの取り組みを観察し、虎松の出方を研究している。

四戦目を終え、休憩場所で喉を潤す虎松。額から汗を流し肩で息をしている。

「大丈夫か?虎松!」

虎松が心配で駆け寄った於勝。

「大丈夫!」

「そうか」

「二人に稽古をつけてもらったからには、それに応える!」

「よし!その意気だ!」

於勝が虎松の肩をパシンと叩き気合を注入する。


「次、急いで!」

行司が対決を即す。

汗を拭いて土俵に戻る虎松。

久松三郎四郎(定勝:1560)が、自信あり気に中央で仁王立ちして待っている。

虎松よりも拳ひとつ程身長は高い。虎松は山野で育っただけあり日焼けして筋肉質の精悍な身体つきだが、三郎四郎は恰幅の良い、いかにも大将格らしい身体つきだ。

両者の視線が一瞬交わり、火花を散らす。

「両者、見合って!  八卦良―い、残ったぁ!」

両者の激しい張り手の応酬。みるみる上半身が赤く染まる。

続いて、肩と肩がガシッとぶつかり合う。

互いの片手が相手の腰紐に届き掴み合った。

先に三朗四郎が投げの体勢に入るが、虎松は相手の内股から足を絡めて体勢が崩されることを拒む。

続けて三朗四郎が外掛けに虎松の膝裏に足を回し、虎松の投げ技を事前に防ぎにかかって来た。

「ええぃ!」

虎松が両手でがっしりと三朗四郎の腰紐を掴む。そして渾身の力を込めて三朗四郎を持ち上げた。

自分よりも小兵と心の片隅で舐めてかかっていた三朗四郎。

「なにぃ?!」

三朗四郎の回した足がはずれ、虚しく宙を蹴る。

虎松が三朗四郎の体重を持ち上げてしまった事に仰天の観戦者達。

「おおっ!」

虎松は相手を持ち上げたまま土俵際まで歩き、俵の外へ押し出した。

「五人抜いたぁー!」

会場が拍手で湧く。虎松の本戦出場が決定した。


於八に於勝が、虎松を出迎え代わる代わる抱きしめる。

「やったな、虎松」

「いえっ、目標は優勝!」

「そうかっ、決戦までゆっくり休めよ」

「はいっ」

両拳を胸の前で握りしめ、押忍!と気合の仕草を見せる虎松。

小相撲の本戦は、大相撲おおずもう予選が終了してからだ。


於八、於勝も虎松の激闘を見て、血が昂ぶっている。

於勝は早くも袖から手を抜いて、上半身裸となった。

「よし、俺たちの出番だな!」

「うむ」

二人とも、昨日から虎松の稽古に付き合い、身体の方は準備万端だ。

相撲の感覚は、これほどはない程に研ぎ澄まされていた。


*****


「八卦良い」

奉納相撲ですので、縁起を担いでいると解釈して、掛け声は「八卦」にしました。

相撲(力比べ)をした出雲野見宿根の例もありますし、古来(弥生時代頃から)、道教思想というか、仙人の思想で日本国家は成り立っていると考え使用しています。


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