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織田信忠ー奇妙丸道中記ー Lost Generation  作者: 鳥見 勝成
第二十四話(安祥編その2)
153/404

153部:五徳姫

三河国要所図

http://17453.mitemin.net/i208683/

挿絵(By みてみん)

1569年8月織田家は伊勢攻めの真っ最中。北畠氏との対陣が続く中、奇妙丸は尾張の抑えとして清州城に派遣される。

掛川城に籠城する今川氏真の降伏により、浮足立つ東海道の諸豪の様子を見るべく、西三河の抑えの城、安祥城に向かった奇妙丸一行。

<安祥城下町>


高橋政信の手術は成功し、身体に刺さった矢はすべて抜き取られていた。

「政信殿、傷は浅いぞ」

「うむ。しかし判っているのだ。私はもう長くはない」

「いや、心の持ちようで傷も治る」

「そうだな。虎松や於政に、一目会いたい・・」

「服部衆が迎えにいっている。もうすぐ高橋家の者が皆来るぞ」

かたじけない」

部屋の外に人の気配がして、静かながら複数の足音が聞こえる。

「入っても良いか?」

奇妙丸の声だ。

襖がそっと開けられた。

桜を先頭に、奇妙丸に於八や於勝達が入ってくる。


「政信、無理をしなくてよいぞ」

「若様、無様な姿をみせて申し訳ございませぬ」

「いや、あの親子を庇ったのだろう?」

「私も子を持つ親ゆえ」

そこへ高橋家の者達も合流する。

「ちゃん!」

「貴方」

「於政、済まぬ」

「どうされたのですか」

「済まぬ。私を庇って負傷されたのだ」

奇妙丸が謝ろうとするのを、政信が否定する。

「私の行いが悪かったのです。皆様に責任は御座いませぬ」

於政の手を握る政信。

「すまない、於政」政信が頬を涙が伝う。

「そんな、高橋党を養う為だったのでしょう。謝らないで下さい」と於政。


ちゃんは、どうすれば元気になる?」

虎松が、弱りはてた父・政信の姿に動揺している。

「そうだな、虎松の元気な姿を見れば、私も元気になるぞ」

「そうか。ちゃん、明日神社で相撲大会があるから、それで優勝してくる」

虎松の言葉に、顔を見合わせる奇妙丸達だった。


*****


<翌日、安祥八幡宮>


義兄上あにうえ!」

信康が駕籠を先導して奇妙丸の待つ八幡宮までやって来た。

停止した駕籠から降りて、奇妙丸の所に小走りでまっすぐ向かってくる五徳姫。

昔、奇妙丸の兄弟姉妹は生駒御前の下で一緒に養育されている。


五徳姫の母については「一族内でも秘密」だが、母親の出自により冬姫の姉とされた。

織田と徳川の不戦同盟の為、徳川家に早くして嫁ぐこととなったが、

奇妙丸の同母の妹であると皆は認識している。


「五徳姫、良く会いに来てくれたな」

五徳の手を握る奇妙丸。

五徳は久々に身内に会えた事で、最初は笑顔だったが、次は目に涙を浮かべて裾で目頭を抑えながら泣き始めた。

息災そくさいだったか?」

「はい。信康様に良くしてもらっています」

「そうか」

離れる奇妙丸。

「信康殿、妹を大切にしてくれて有難う」

「良き妻です」と照れる信康。

信康の言葉に、同じく照れて顔を赤く染める五徳姫。

既に笑顔に戻っている。

奇妙丸は信康の両手をとって、がっしりと握手する。

その光景をみた境内に居た人々は、織田・徳川の未来と三河ノ国の静謐を見ていた。


「ところで義兄上、お手紙のケヤキの木探しですが」

「うむ。建築用の木材が必要なのだ、協力してくれないか」

「うむむむ。承知いたしかねます。我々は武士ゆえ、山の木々は樵に任せれば宜しかろう」

奇妙丸の申し出は、信康には武士の品格に関わるものだと判断されたようだ。

「そうか、まあ、気にしないでくれ」

材料調達の難しさを知る奇妙丸だった。



*****


*五徳姫の生母について

奇妙丸・五徳・茶筅丸は同母で、生駒殿の子供と歴史上では認識されています。

しかし、茶筅丸が織田家嫡流を称するために本能寺の変後に、信忠に系譜を近づけたという話もあります。

ということは、徳川家にしても信長の娘の中でも嫡流に近い姫に、縁組をしていただいたという格付けがあってもおかしくないと思えてきました。徳川史観の下では、300年の間にどんな捏造があってもおかしくないでしょう。

五徳姫が信長の子であることは確かでしょうが。

信秀の側室だった女性が、信長の子供を産んだり、ややこしい関係の様でもあり。

ひょっとしたら、信秀の子を信長が養子にして、

信秀の側室が信長と関係があったと、断じられるような感じもあるのかもしれません。

家族関係の謎の多さも、信長様の魅力という事で。


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