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織田信忠ー奇妙丸道中記ー Lost Generation  作者: 鳥見 勝成
第二十三話(安祥編)
152/404

152部:徳川二郎三郎信康

安祥の家老・小瀬清長は、安祥周辺に八幡宮で催される八月場所の案内を配布した。

矢作川を渡った先の岡崎城でも、奇妙丸の安祥来訪の話題で持ちきりだった。

「なに!義兄上あにうえ様が安祥にきていると?」

傍衆から奇妙丸来訪を伝え聞いた二郎三郎信康。

信康は二年前に五徳姫と祝言を済ませ、奇妙丸の義弟となっている。現在は11歳だが筋肉質で、身長も既に周囲の大人たちと変わりない偉丈夫だ。

「いい身体つきをしている」と父・家康に面会する度に褒められるので、それが嬉しくて鍛錬を怠ることはない。


妻の五徳姫が頬を膨らませ怒った表情をする。

「まあ、なぜ来るなら来ると先に連絡して下さらないのかしら」

「伊勢攻めの最中なので、騒ぎにならぬ様に周囲を見て回っていたのではないか?」

ここでは信康が義兄の立場を思いやって五徳姫を宥める。


信康は乳兄弟の大草松平善平衛康安に尋ねた。

「で、義兄上はなんと?」

「三河のケヤキの大木探しを手伝ってくれないかと」

「意味が判らないな。あって直接聞くか」

「織田信成殿からは早馬で、明日、安祥八幡宮で奉納相撲大会を開催するとのことで力に覚えの有る者は、参加せよ!と」

「フフフフ」

相撲大会と聞いて血が踊り始める二郎三郎。


「観に行くのですか?」五徳姫が訪ねる。

「いや、参加する!」

「ええっ?」

十四歳年長で守役ともいえる長沢松平甚太郎康忠がたしなめる。

「何の準備もしていませんが?」


「相撲の準備ならいつもしている。身がひとつあれば、なんの問題もない!」

「奉納品や奇妙丸様への贈り物など何の準備もできていません」

「義兄上も堅いことは言わないだろう。安祥の用事が済めば、岡崎に誘ってそれから準備すれば良いではないか」

「はっ!」


家康の嫡男、二郎三郎信康には、家中から選ばれた優秀な子息たちが傍衆に付けられている。

これからの岡崎を中心になって担って行く世代だ。

長沢松平、大草松平の松平一族を始め、石川家からは四郎春重、鳥居家からは重正、本多家からは重冨、榊原家からは清政等、三河の有力家の子弟達が顔を揃えている。


「お主達も、乗り込む準備をせよ!」傍衆に声をかける信康。

「ははっ!二郎三郎様!」

一斉に頭を下げ退出する傍衆。二郎三郎の下、守役の康忠により厳しく教育がなされているのが判る。


「久々に兄上様に会えるのですね」

五徳姫も出発する気でいる。

「うむ。ついてくるか?」

「もちろんです!」

そう行って、五徳姫は奥へと足早に退出した。

「まぁ、仕方あるまい・・」

二郎三郎は五徳姫に何か言いたげだったが、夫婦とはいえ、その義父・信長の存在感が大きすぎて、二郎三郎信康は五徳姫に上手く自分の気持ちを伝えきれないもどかしさを常に感じていた。


*****


<安祥城本丸館、奇妙丸の滞在する客間>


「若様、我らは奉納相撲に参加しても良いのでしょうか?」

「参加させてください、若様!」

奇妙丸に詰め寄る梶原於八に、森於勝。

二人は、三河に来ても相撲を取る気で満々だ。


「私は参加しないが、祭りだ、お主達の好きにすると良い」

「有難うございます!」

「久々の力試しだな」

「於八、この勝負は負けないぞ」

「ふん、決勝までにお主が残っていればな」

気持ちが上がる二人だ。


「伴ノ衆も参加しないか?」

奇妙丸が、いつも日陰の仕事をしている伴兄弟に気を使って声をかける。

「ここは三河、油断はできませぬ。我らは奇妙丸様の御警護に徹しまする故、安心してご観覧を」

一郎左衛門がいつもの冷静な声で応える。

「そうか、すまないな」

一郎左が一瞬優しい目となって静かに頷いた。


第23話 完


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