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織田信忠ー奇妙丸道中記ー Lost Generation  作者: 鳥見 勝成
第二十三話(安祥編)
149/404

149部:宴

安祥北の宿場では、次々とやって来る諸豪とその従者たちが、

入れ替わり立ち代わり宿に荷物を運びこみ大変な混雑を見せている。


織田信成の呼びかけで、知立ちりう城からは信成の弟・織田信昌が駆けつけた。

知多半島に勢力を持つ水野氏の苅谷城からは、伊勢国に出陣した当主の水野信元等、惣領家の主要な人物はいないが、留守居組の水野藤十郎忠重、水野藤次郎分長、藤三郎重央兄弟。

そして、水野家と対抗する勢力を持つ久松家の久松三郎太郎康元、源三郎勝俊兄弟がやって来た。


近隣からは、西三河の旧族である長田おさだ喜八郎尚勝、大河内おおごうち金兵衛秀綱と、その一族の善一郎正綱。

誓願寺に蟄居する内藤入道清長の一族・内藤甚五左衛門忠村や、鳥居伊賀入道忠吉、四郎左衛門忠広の親子。

内藤・鳥居に劣らぬ軍事力を持つ本多豊後守広孝、彦次郎康重の親子。

三河一揆では石川家を抑え込んだ宇都宮氏の支流・大窪おおくぼ家から彦十郎忠為、平助忠教(のちに大久保)兄弟。


今や桜井松平をも凌ぐほど有力になった大給だいきゅう松平和泉守親乗、深溝ふこうみぞ松平又太郎家忠(水野分長の義兄弟)、於北御前の甥・桜井松平忠吉等の松平一族が集まる。


矢作川の上流からは旧守護の家柄の中条藤太夫秀清、鈴木越中守重愛等や、三宅孫介、高木長次郎広正、

下流域からは元吉良家の重臣だった夏目次郎左衛門吉信、小栗又市吉忠、浅井六介道多。

酒井・石川家からは、留守居の酒井与四郎重忠兄弟、石川左衛門大夫康通等が参集してきていた。

その他にも、三河一揆に参加し上京して足利義昭の奉公衆となり、故地に復帰した加藤広明もやって来ていた。


広間の上座に奇妙丸が腰を据え、両隣には森於勝、梶原於八が控える。

「この暑い中、皆良く来た」

(今更隠しても仕方ないが、隠密行のつもりがえらい事になった)


「奇妙丸様、水臭いですな、一声かけて下されれば、清州までもお迎えにいきましたものを」

最長老の誓願寺内藤入道が妙に親しく話しかけてくる。

「いや、この非常事態だ。皆に余計な軍費・兵糧を使わせるわけにはいかぬからな」

「もったいないお言葉」

(朝廷に献金した事の皮肉を言われていると思う入道や、身に覚えが有り恐縮する鳥居に石川)

「ところで、今回は何様で三河国に?」

早々と話題を切り替える大給松平の親乗。


「なに、大した用ではないのだ、妹の五徳姫に会いたくなってな」

「五徳姫様は、信康とは仲睦まじいとお聞きしますぞ」

「それは、良かった」

安心した表情の奇妙丸を見て、

ふと、岡崎松平(徳川)に嫉妬を覚える親乗。

「それよりも、若様。最近の家康の増長は、私は我慢ならぬのです」

「ほう?」

「ひとり徳川を名乗り、我ら松平一族を侮り、信長公の親族であることを傘に、理不尽な物言いをしてくることがあります」

「なるほど。しかし、そのあたりは信成殿がしっかりと目付をして下されるはずだ、これからは信成殿に相談するがよいと思うぞ。父から家康に注意が行くはずだ」

「奇妙丸様が早く成人されて、こちらの方面の旗頭になっていただけると、我らも嫌な思いはせぬのですがのぅ」

「うむ、考えておく」

「家康ごときに大きな顔をされては迷惑なのです」

「うむ。父上と家康殿は、幼少の折は遊び仲間だったらしいからな。信用されておられるのだろう。父上と良く話し合うので、その方達も、父から要請があれば協力をお願いしたい」

「ははーっ。我ら、御公儀の為に惜しまず働きまする」

(織田家の為にと言わないところが、流石だな)

於八が微妙な言い回しに心の中でツッコミを入れる。


「新しき将軍が就任され、今川家が滅亡したとはいえ、世は未だ乱世。天下に静謐をもたらすためには皆の協力が必要だ。これからも宜しく頼む」

奇妙丸は感情を表に出さず対応している。

「ははーっ」


「では、では」

城主の市郎信成が手を叩くと、広間の横戸が一斉に開く。

隣の広間には、豪勢な料理が揃えられていた。

「それでは皆様、御膳を用意しましたので、奇妙丸様を囲んで一献やりましょう」

「それは良い!」

こうして、安祥城の広間で歓迎の宴がはじまった。


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