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織田信忠ー奇妙丸道中記ー Lost Generation  作者: 鳥見 勝成
第二十三話(安祥編)
147/404

147部:城

*****


「政信殿! 大丈夫か!」

服部弥右衛門尉政友が、政信を抱きかかえて呼びかける。

政信の背中には弓矢が5・6本刺さったままだ。これは当たり所が悪いと致命傷になる。

「虎松達をお頼みします」

「なにを弱気なことを。傷は浅いですぞ!」

本人が気力を失うことが一番まずいと、政友はとにかく励ます。


政信に町の中まで案内してもらった事を後悔する奇妙丸。

政信配下の者達は町外で、念のため待機している。彼らには町へ踏み込まぬ様に連絡しなければなるまい。


「その者は、手配書にある山賊の首領にそっくりなのです!」

巡回兵が、奇妙丸の仲間とされた政信に疑いの気持ちを払拭できないでいる。

「今、城主を呼んでまいりますので、ここでお待ちいただきたい!」

巡回兵の隊長・土肥助次郎が慌てて本丸に駆けて行った。



桜は政信の手当てをしているが、政友ともに返り血で真っ赤だ。

「誰か、政信を医者に。誰か案内してくれ、至急だ!」

巡回兵達が政信を戸板に乗せ、医者へと運び出す。

「伴、いるか?」

「はっ」

「高橋の部下に引き上げるように伝えてくれ」

「はっ!」


織田市郎信成が、騎馬に乗ってやって来た。

城下の騒ぎを聞きつけて、出てきたところを土肥と合流したのだった。

「これは、本当に奇妙丸様だ、小木江以来ですね」

「うむ。あの時は留守居をご苦労だった」

「今日は、そのようなお姿で如何されたのです?」

「内々で、三河の様子を見に来たのだが、そうはいかなくなった」

「助次郎が何か粗相を?」

「いや、助次郎殿が優秀すぎたのだ」

助次郎は皮肉を言われているようで苦い顔だ。

「では、若、これからどうなさいますか?」

「負傷者の見舞いをして、城に参る」

「分りました。お迎えの準備をしておきます。助次郎、若様の護衛を頼む。粗相のないようにな」

「はっ」


「助次郎、すまぬな、あれは高橋政信殿。一時は山賊まがいの事をして暮らしを繋いでいたのだが、今は改心して私に忠誠を誓ってくれたのだ」

「若が謝罪しないでください。運が悪うございました」

町医者の屋敷前まで行ったが、現在手術中ということで、外で無事を祈り。政信に後を任せ引き返す奇妙丸一行。

複雑な心中のまま安祥城に入城する。

城門では、城主の織田市郎信成と股肱の臣・小瀬清長、若き二人を支える織田信光の旧臣・守山衆を中心とした家臣団が出迎えた。

桜井松平の郎人衆達も、安祥衆として新たに編成され控えている。


「織田家嫡男、織田奇妙丸だ。皆、出迎えご苦労!」

「よくぞお越しくださいました若様!」

一斉に片膝をついてお辞儀する家臣団。

織田信成は良く家臣団を統制している。流石、信光公の血筋だと感心する奇妙丸。

小瀬清長が、奇妙丸の傍衆の列にそっと並んだ。

「桜殿でしたかな?」

「はい」

「そなたの姿に、皆驚いているようだ、風呂を用意してあるので、自由に使って下され」

奇妙丸を見る桜。桜の衣服は、政信の血で黒や赤に染まっている。

奇妙丸はうんと頷く。

「では、頂きます。ありがとうございます」

桜は入り口に控える奥女中衆に案内され、先に本丸館に入って行った。

「若様は、まず物見楼閣の方へご案内致します」

信成が先頭に立ち、奇妙丸一行を本丸に案内する。


安祥城城下では、先程の騒動が既に知れ渡った。

奇妙丸が安祥城に居る事は、各大名が城下に潜入させている忍びにより把握されている。


奇妙丸の動向について、東海道の各地の諸豪に、忍びからの伝令が発せられていた。

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