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織田信忠ー奇妙丸道中記ー Lost Generation  作者: 鳥見 勝成
第二十三話(安祥編)
146/404

146部:安祥

池鯉鮒ちりうの森、高橋の根城で休息をとったのち、奇妙丸の一行は高橋政信の案内で、矢作川やはぎがわの右岸にある安祥城あんじょうじょうの城下に到着した。

かつて信長の兄・織田前三河守信広が拠点とした、織田家の三河支配の本拠地だ。

三河進出を目指す尾張の武士達で賑わい、津島・熱田の商人たちも大挙しておしかけて、未曽有の建築景気が起きたという。しかし、織田信広は今川義元の軍師・太原雪斎だいげんせっさい軍団の猛攻の前に捕虜となり、安祥の城は今川家の抑える処となった。

信広は織田家に人質として保護されていた松平竹千代(のちの家康)と、交換され尾張に戻ったのである。


その後、信広は斎藤義龍と結んで、弟の信長に対して謀反を起こしたが、尾張国内では敗軍の将・信広に従うものは少なく、己の器を思い知った信広は織田家惣領に返り咲くことを諦め、降伏している。

信広本人は出家隠遁を望んだが、信長は兄を赦し、信長代役として武将を続けることを望み、将軍との交渉相手や、敵対国との和睦交渉などを任せ、外交的な部分で活躍し、現在は再び信頼を得て、犬山城を預けられている。

信広の娘は、信長の一ノ寵臣・丹羽五郎左衛門長秀の室となり、信長は丹羽長秀を「弟」と呼んでいる。

その影響で信広の安祥衆の旧臣達は、自然と丹羽家に集まってきていたのだ。


そして、現在の安祥城は、信長の叔父・信光の息子である市郎信成が城主を勤めていた。街道の要所である知立城には、信成の弟・四郎三郎信昌が入っている。

市郎信成の母は、かつて松平清康と対立していた桜井松平信定の外孫にあたる。

清康の死後、広忠が義元の援助で岡崎城主に復活するまでは、安祥城は桜井松平信定が惣領として君臨していた。

その後は、岡崎松平広忠を傀儡かいらいとする今川家の支配に対して、桜井松平信定一族や、その婿・織田信光、大給松平親乗、上野城主・酒井忠尚、小川城主・石川康正が、吉良家の助勢を得て安祥を手に入れるべく戦ったという。


安祥城下に入る一行。武装した兵団が城下を巡回している。

(おそろしく物々しいな。織田市郎信成殿は流石に境目の城を任された武将。常時、臨戦態勢のようだ)

巡回兵が、高橋衆に気付き近寄ってくる。

「お主達は、何処から来た?」

「お主の人相、どこかで見たな」

「手配書にある、政信ではないのか?」

立て続けに、身元を尋問してくる巡回兵。

(これでは、奇妙丸様達に迷惑がかかる)

突然、巡回兵を振り切って来た道を戻るように逃げ出した政信。

「御用だ!」

「待て!」

高橋政信を追って、巡回兵達も走り出す。

あたりが騒然とし始めた。

慌てて奇妙丸も追いかける。


政信の走った先に、親子連れの町人が居る。

(しまった!、巻き込むわけにはいかん)

「止まれ!逃がすわけにいかぬ。構わぬ射よ!」

「撃て、撃て」

弓兵達が矢を放つ。

「ぐうっ」

無数に道路に突き立つ矢。


「待て、待て、まてー」

奇妙丸達が駆け付けた。

「なんだ、お前たちは!」

兵士が尋問する。猛った者たちは今にも斬りかかりそうな勢いだ。

「そのほう達は、仲間か?」

「そうだ!」

躊躇いなく奇妙丸が答える。

「なに?!」

「こいつらも盗賊団だ!」

弓を携帯する兵士たちは、矢先を奇妙丸達に向ける。


「違う!盗賊ではない!」

「なに?」

「私は、織田弾正忠信長の嫡男、清州城城代の織田奇妙丸だ!」

「私は、奇妙丸様の乳兄弟・梶原八郎!」

「俺は、森三左衛門可成の次男・森勝法師!」

「何故、若が此処に居る? 証拠はあるのか?」

兵士の問いに、奇妙丸が腰の物を天に高く掲げる。

「証拠はこれだ!相州正宗」

「同じく、国友銃槍」

「同じく、十連針兼定!」

続けて於八が啖呵を切る

「奇妙丸様の御前である!その方達、頭が高い!!」


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