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織田信忠ー奇妙丸道中記ー Lost Generation  作者: 鳥見 勝成
第二十ニ話(池鯉鮒編)
145/404

145部:星

一行は政信の案内で、高橋の根城のある池鯉鮒の森に入った。

出会ったばかりの高橋政信を、奇妙丸は骨のある武士と見込んで信用している。傍衆達は、高橋衆よりもこちらの人数が上回るので、不意打ちすることはないだろうと一応は安心している。

今はこうして、同じ屋根の下で一緒に休んでいる政信の家族、高橋虎松が人質という意味でも、その存在は大きい。

皆、旅の疲れで早々に眠りについている。

しかし、

奇妙丸は寝付けずに居た。

一日いろいろな事があったと、今日の出来事を回想する。

奇妙丸は目を閉じていたが、先刻、高橋家の盆栽を観たことで、武田松姫の事を思い出していた。

(姫は元気にしているだろうか)

松を贈られてから、盆栽で松姫を思い出す不思議な習慣がついていた。

(今回の旅は、盆栽は持ち歩けないからな・・。松姫のあの笑顔を、またみたいな)

皆を起こさないように、そっと夜具から抜け出す。

(東に向かっているからか、少し距離が近づいた感じがする・・)

窓から星が見える。秋が近いからか空気が澄んでいて、星がいつもより多く見える気がする。

(松姫も夜空をみているかな・・)

右手の平を開いて、自分の手相を月明りの下で見てみる。

(この気持ちは・・、恋しい というものか?)


於八が、奇妙丸が眠りにつけない様子に気が付いて、自分も起き上がる。

「どうかしましたか、若様?」

「すまない、起こしてしまったか?」

「眠れないのですか?」

「少し考え事をしていた」

「散歩でもしますか、お付き合いしますよ」

「そうだな、夜風に当たるのも悪くはない」


二人が周囲の者を起こさぬ様に外に出ると、伴ノ一郎左が槍をかかげて番をしていた。一郎左は木ノ刃丸を気に入った様だ。

「いつも、すまないな一郎左」

「私のやるべき事ですから」

「ありがとう。少し風に当たる」

「はっ」


奇妙丸が反芻する。

(私のやるべき事は、この世に生まれたときに決まっている。しかし・・)

「織田家が天下に武を布く事は、果たして正義なのだろうか?」

於八に、今日感じたことを聞いてみた。

「高橋殿のお話ですか?」

「うむ」

「信長様は天道を進んでおられると思います。

誰かが道筋を造らねば日ノ本はひとつになりません。誰かが移ろいやすき世の流れを堰き止める事で日ノ本の秩序、静謐が生まれるのではないでしょうか。そうすれば高橋様の様な方をお救いできるのでは」

伴ノ一郎もいつのまにか傍に居る。

「日ノ本の民衆の為に、我らの子孫の為に、国を一つにしましょう」

一郎左が自分の思いを告げるのは珍しい。


「そうだな。織田家が日ノ本をひとつに纏めて、新しい国を作ろう」

「新生日本国」

「そうだ、日本国を作ってからは、世界へも静謐を広げようと、呂左衛門と約束したからな」

「明日は、安祥に入りましょう」

「うむ」

「安祥城は、祖父・信秀公が、尾張の武将達をひとつに纏めて、今川家から取り戻した城だな」

「今の東海道の諸豪は大義の下動かず、私利私欲で動き、バラバラになりつつあります」

「新たな大義を示さねばな!」

「「期待しています、若!」」

北極星がひと際輝き、三人を見下ろしていた。


*****


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