14部:大垣城下町
大垣城下町。通りにはいろいろな屋台やお店が居並ぶ。
勝蔵(於勝)は食べ物にめがない。「団子、干し柿、お饅頭」いちいち派手な店看板に反応する。
「大垣名物だな」と返事する俵三郎(鶴千代)
そんなところへ
「おらおら、おら!」通りの突き当りから騒がしい声が聞こえる。
〈於台屋〉という尾張では「瀬戸物屋」でお馴染みの看板の店から、男たちが大勢飛びだしてきた。
商品を道にぶちまける男たち。
「やめてください」店主が店から出てきて、慌てて止めようと足にすがる。
「城代様の許可なしに、なんでこんなものを売っているんだ」と店主を振り払おうとする侍。
「尾張でご領主様が於台商人の大垣町出店を免除して下さったのです」
「ここは美濃国だ!」と蹴り飛ばす侍。
「ご領主様に訴えてやる!」
「誰がお主のいうことに耳をかすか」と侍衆の中からひとり身分の高そうな姿をした武士がでてきた。
「ここで商売するには、十貫文の敷金が必要なのだ」
「法外すぎる」
「なんかいったか?」手下の侍が、店主の襟をつかんで問いただす。
「いえっ、なにも」
(ちくしょう)店主には解決できる程の蓄えはない。
「氏家卜全様の代官である小野城主・横幕帯刀信兼が命じる。明日夕刻までに十貫上納するか、お主の娘を引き渡すか、どちらかに決めて小野城まで来い」
「そんな無茶な」
「お前に拒否権はない!」と言い捨てて、ガラの悪い集団は去っていく。
「待って下さい。お代官様~」下っ端の侍がとって返して店主を蹴り飛ばした。
店のものたちが店主を助け起こす。皆、あきらめたような暗い表情だ。
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四人は群衆のうしろからこの様子を見ていた。
「斬ってやりましょうか」勝蔵(於勝)が腰のものに手をかける。
「いや、待て」と勘九郎(奇妙丸)。
「ここの領主、卜全殿に知らせる前に理由をつきとめないと」
「歯がゆいですね」と返し、刀から手を離した勝蔵。
「下手したら内乱になるからな」俵八郎(鶴千代)が思案顔になる。西美濃三人衆が手を結んで反乱した時の場合を予想し模擬戦しているのだろう。
「裏付けをとらないと、情報収集しましょう」と男平八(於八)。二手に分かれて大垣町内を見て回る事にした。
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勘九郎は男平八とともに、於台屋を訪ねた。
割れて散乱する商品を片付けている店主に声をかける。
「店主、先ほどの件、いったいどうしたのだ?」
「お侍様は、どちらさまで?」
「私は見ての通りの旅の者、津島社家の九男坊の津田勘九郎というものだ」
「ああ、尾張津島の」
「御主人はなぜあのような目に」
「氏家様は良いお方で、我々小田井の商人達が、昔の縁を頼って大垣で商売をすることを許して下さったのですが、留守居に残られた代官・横幕様は、まず上納金が必要とのことで、店に押しかけられたのです」
「娘を出せとは?」
「お金がないなら娘をと、どこかに売り飛ばすおつもりなのかもしれません」
(なんと、また大切な領民を、この一件、捨て置けぬな)
「ご店主、もしよければ、お力になりたいのだが。我ら津島の者も商売が自由にできないというのは、聞き捨てならない事なのでな」
「おお、ありがとうございます」
「他にもこのような目にあっている店はあるのか?」
「ええ、私どもばかりではございません」
「それでは、その商人たちの店を教えてくれないか」
「では、番頭に一緒に回るように申し付けましょう」
「有り難い」
こうして、勘九郎は男平八とともに番頭に案内されながら大垣城下を見聞して回った。
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