表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
120/404

120部:噂

<清州城ニノ丸、政庁>

政庁内にある打ち合わせ用の六畳程の狭い部屋で、生駒三吉から留守の間の報告を受ける奇妙丸。

生駒三吉が人払いをして欲しいというので、最低限の人数として梶原於八が付き添い、三人で密談する。

「熱田での問題とは、なんだったのだ?」

生駒からの報告の中で、熱田の件が一番心に引っかかっていた。

「熱田の商人、加藤家からの報告なのですが・・」

三吉が奇妙丸と膝を突き合わすほどの距離に近寄る。

草薙剣くさなぎのつるぎを手に入れた者が日ノ本を制すという噂が広がり、度々賊が熱田神宮へ押し入る事件が頻発しているようなのです」

神世からの古い刀の名に、奇妙丸も興味をもつ。

「各地の大名が狙っているということか?」

「いえ、大きな声では言えませぬが、将軍様が欲しがっていると・・」

「なんと!」

大物の登場に唖然とする奇妙丸。織田家の担ぐ将軍様が何故?と不思議でならない。

伊勢神宮で八咫鏡やたのかがみを要する北畠氏と、干戈を交える際に、鏡と剣の御膝元で問題があったということか。

生駒が続けて説明する。

「桶狭間以来の信長様の昇竜の勢いは、熱田神宮の加護があるからだという噂もあり、義昭様もそれを信じ始めているのかと・・」

「剣が狙われているのは熱田大宮司の千秋家は知っているのか?」

「惣領の季重殿は御存知かと」

「ここにいる千秋喜丸の従兄弟だな」

「はい」

これは自分にも関わりのある事だと、解決に向けて是非とも熱田に行きたくなった。

「よし、熱田に行ってみるか」

「皆に連絡しよう。広間に清州詰衆を召集してくれ。」


*****


<清州城、ニノ丸政庁大広間>

「というわけで、明日、熱田に出立しようと思う」

「発言よろしいですか、若様」

「どうしたのだ政友殿?」

「若様、私は三ノ丸留守居を勤めまする」

「政友殿?!」

「父・服部右京進友貞の行いを、熱田衆も覚えていることでしょう」

「そうか、私の心遣いが足りなかったな。では、留守居を頼む」

「二ノ丸の備えは森於九に加賀井弥八の二人と美濃衆で、本丸は於八に任せても良いか?」

「畏まりました!」


*****


かつて弥富服部家は、尾張守護・斯波氏に出仕する有力家臣であり、織田家とは同僚である。尾張南西部の河内郡うぐい島ニノ江を拠点に周辺一郡を抑え、木曽川の河口域の流通を支配に置いていた。

織田弾正忠家が台頭するに及んで、対立は激化し、服部家は今川義元と同盟し信長と抗争。義元の西征に応じて、熱田湊を大小の軍船千隻を繰り出して襲撃した過去があったのだ。


*****


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ