118部:帰還
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<清州城二ノ丸御殿>
「冬姫、帰ったぞ」
奇妙丸に向かって、満面の笑みで駆け出してきた冬姫。
「兄上様、お帰りなさい。今回は長かったですね」
奇妙丸の手を取り、すりすりと両方の掌で撫でる。
「うん、木曽川で色々な事があったよ」
「津島は大丈夫ですか?」
「いつもと変わりない」
「それはよかったです」
「桜もお帰りなさい」
桜の手も取り、両掌で優しく包む冬姫。
「冬姫、俺たちも無事に帰りましたよ」
元気よく進言する森於勝に梶原於八。
「見れば分かります」
「あっはっはっはっ」と呂左衛門が笑う。
「こちらの方は?」
初対面の服部政友を見て、また兄上にお供の方が増えていると思う冬姫。
「弥富服部の党首、服部政友殿だ」
「兄上様を宜しくお願いいたします」
「こ、こちらこそ(奇麗な方だ)」
冬姫に見つめられて、思わず赤面する政友。
「私もヨロシクね」
冬姫の真似をして、呂左衛門が政友の手を握っていた。
そこへ二の丸の留守居・金森甚七郎と、生駒三吉が本丸から駆け付けて来た。
「若様、お帰りなさいませ」
「うむ、留守居ご苦労だったな」
「有難きお言葉! ×2」
「何か問題はあったか?」
生駒がずいっと前に出る。
「熱田表で、少しややこしい事が起きています。後でじっくりご相談を」
「うん」
「今はまずお風呂に入られてから、お食事にされてはどうでしょうか」
「そうだな、皆くつろいでよいぞ」
「はい」
奇妙丸の言葉を受けて解散しそれぞれの用事を足すことにする。
「桜は私と一緒にお風呂に入りましょう」と桜を誘う冬姫。
「はい」奇妙丸にお辞儀をして冬姫についてゆく桜。
その後ろ姿を見送る於勝と於八。
「桜はいいなぁ~」
於勝が呟く。
二人の横にいた奇妙丸が気をきかせた。
「お風呂か。風呂の用意をしてくれ於七」
と奇妙丸が金森甚七郎に命じると、甚七郎が「準備しております!」
と胸をはって答えた。
「お主等、一人で入るのが寂しいなら、男衆皆で一緒に入ろうか」
奇妙丸が傍衆の皆で風呂に入る事を提案した。
(え?!)
顔を見合わせる於勝と於八。
「では・」
「はい・・」
自分たちが言った言葉からこうなったので、致し方なしと二人。
「なんだ?不服なのか?」と訝しげに二人の表情を見る奇妙丸。
「いえいえ、そのようなことは」
奇妙丸の気遣いに遠慮がちな於八と、
「お風呂だ、お風呂だ!」
気合で気分を盛り上げる於勝だった。
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