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織田信忠ー奇妙丸道中記ー Lost Generation  作者: 鳥見 勝成
第十八話(鯏浦城編)
109/404

109部:服部水軍

うぐい浦を出港した服部船団の大安宅船三隻と、それを守る大小の廻船が船隊を組む。

(船団を構成する大安宅船は40m級、安宅船は30m級、関船が20m級、小早船が10m級である)

流石に鎌倉時代からの歴史を持つ海賊衆で、船団の戦闘隊列を組む素早さも尋常ではない。


「物見の者、周り様子は?」

大安宅船の物見台で見張りをしている家来に呼びかける服部政友。

「川上より織田の旗を立てた船団がやってきます。安宅船の数10隻です!距離は半里ほど」

「荷之上はあきらめよう」

山路弾正が政友の肩をつかんで説得した。

「致し方なし・・」一族の服部衆を思う政友。

(すまぬ右近殿・・)

織田軍に追われ長島に逃れてからは、叔父の右近が自分を当主に据えて支えてくれていた。

荷之上城の留守番を任せたために叔父を危険な目に合わせてしまった。後悔の念が政友の心を締め付けるる。

しかし、一族の為にも自分が弥富服部党を存続させねばならない。

自分が当主を務める代に、鎌倉時代からの家名を消すわけにはいかないと誓う政友。

「流れに乗って逃げ切るぞ!進路を下流へ!」

南方の伊勢湾側を確認する物見。

「大変です!下流にも船団らしき船影が現れました! 距離は一里程先です!」

織田軍の容姿周到さに驚く二人。

「むう!挟み撃ちか」

山路弾正が長島に織田軍を連れていく訳にもゆくまいと判断し政友に告げる。

「大安宅船の通れる川は限られる。伊勢湾に脱出して逃れるしかあるまい」

今はここを脱出して、残った服部党と再起をかけるしかない。

この大安宅船も、弥富服部党の再起の為には、失うわけにはいかない。

「関船、小早船、我船の前列へ!」

部下が手旗と太鼓で船団に指示を伝える。

「二番、三番ついてまいれ!」

続いて、大安宅船にも手旗で合図し連絡させた。

壱番船には党首の服部政友と、陸上部隊の山路衆を従える山路弾正。

弐番船は一門衆の服部政光。

参番船には同じく服部政治が船長を勤めている。

政光と政治は、当主の政友の作戦を理解して配下の者たちに戦闘配置につくことを命じる。

三隻が直列して、下流で待ち受ける瀧川水軍を強行突破するつもりだ。



*****


下流、東の筏川は蟹江城から出撃した瀧川彦次郎の船団がのぼって来ていた。

西の鍋田川からは、海西郡大野の佐治衆を率いる佐治新介益氏が率いる瀧川船団が遡上してきていた。

それに対して、

上流の佐屋川から織田秀成が津島の船団を率いて迫る。

織田家側は、敵船団を四方から責め立てる作戦だ。


筏川の下流で待ち受ける蟹江瀧川船団。

左翼からは大野瀧川船団が合流する。

「瀧川衆、大鉄砲の準備をしろ!」

瀧川(木全)彦次郎忠征が配下に命じる。

手旗の合図とともに、大太鼓が激しく打ち鳴らされる。

「蟹江産の試作品を、こうも早く試す機会が来るとはな」

彦次郎忠征の隣には、梶原於八が立っていた。

「瀧川一益殿仕込みの瀧川衆の砲術、じっくりと見せて頂きますぞ!」

ちらりと於八を見る忠征。

「梶原殿、奇妙丸様はどちらにおられるだろうか?」

「私の予想では、若様の性格的に、うぐい浦の攻略軍の中におられると思われます」

「みずから戦場に?」

「そういう御方ですから」

「鯏浦の方から紫色の烽火が!」

「若様の隠密からの合図のようですね、間違いありません。鯏浦城を確保されたのでしょう」

(父上が心配だが、父上なら不覚をとることはないだろう)

日頃から槍の鍛錬を怠らない自分自身に厳しい父・忠澄を尊敬する彦次郎忠征だ。

「では、今度は我々の出番だな」

気合の入る彦次郎忠征。

今まさに弥富服部党との海戦が始まろうとしていた。


*****


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