表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
織田信忠ー奇妙丸道中記ー Lost Generation  作者: 鳥見 勝成
第十七話(荷之上城編)
102/404

102部:落城

安宅船から橋が降ろされる。

「上陸するぞ!不断衆―!前―!!」山路弾正が叫ぶ。

「おおうっ!」

横一列に盾を並べ、白地に黒で「南無妙法蓮華経」と書かれた胴鎧を着た一団が続々と船を下りる。

背中には「退かば地獄」と大書された小型の旗物を指している。

白い鎧の軍団四百名だ。

その不気味な一団に続いて山路弾正達が下りてくる。山路衆は三隻から一千兵程の人数を繰り出してきている。

目指すは鯏浦城の城門だ。


鯏浦うぐいうら城。

「なんだ奴らは?!」

「あれは、ただの海賊ではない。門徒衆か?」

友田衆が相手の兵力と、先陣を務める白一色の不気味な一団に動揺している。

「城を、城を死守するのだ!」

城門を固く閉じ、相手が射程圏内に入るのを待つ城方。

怯えた若侍一人が、待ち切れず鉄砲を撃つ。

白の軍団は銃撃にも顔色変えず、静かに足音だけを響かせてひたすら城門に向かい前進する。

「撃てー!撃て撃て!」

友田忠左衛門が家来衆に号令する。

生き残りの友田衆百人は、死に物狂いで弓・鉄砲を乱射した。

前列に押し並べた盾を越えて、矢や、銃弾に打ち抜かれた兵が次々と倒れていくが、その死体を踏み越え、後列の者が前に出て隙間を埋め、敵の先陣は迫ってくる。

「信じられん」異様な雰囲気の軍団に驚愕する友田。

あっと言う間に城門、城壁に取り付かれ、盾を梯子に変えて次々と兵が乱入してくる。

予想外の展開に友田衆は軒並み崩れた。

「裏門に逃げろー」

「いや本丸館に立て籠もれ!」

バラバラになって逃走する友田衆。

「フハハハハ」山路弾正の高笑いが響く。

城内至る所で追い詰められた友田衆が討たれてゆく。本丸館に立て籠もった者たちも火を放たれて、逃げ出した者から討たれてゆく。

「もはやこれまでか」

友田忠左衛門は潔く自決した。

(山路家の養成した「不断衆」は北伊勢でも最強の部隊だな・・)

安宅船から様子を見ていた服部党も陸上部隊の山路衆には怖れを抱いた。


高台の頂から、鯏浦城の煙を見る木全又左衛門忠澄。

「友田・・・」

同僚、友田忠左衛門の奮戦も虚しく、海賊衆の圧倒的な兵力の前に一日ももたずに落城してしまった。

もし木全衆が城に残り、友田衆と力を合わせて防戦していても、同じ結果だったろうと忠澄は分析する。

「木全殿!お主は恥ずかしくないのか」

「友田殿を見殺しにしたぞ、瀧川殿に報告せねばな!」

味方の与力の中からも木全忠澄の戦う意欲のなさに批判が出始めている。

「今は、我慢じゃ皆の衆。必ずや友田の仇は討つ。信じてくれ」

忠澄は味方の軽はずみな行動を唯々抑えようとしていた。


*****


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ