ハ―ピー2
飛行機にも乗った事が無い俺の初めての航空体験が、まさか異世界で味わえるとは思ってもみなかった。
…俺は今、ハ―ピーに掴まれ空を飛んでいます。
当初はパニックで混乱していた頭も今は驚くほど冷静、周囲の様子を見渡すこともできた。それには理由もある。
「おー手柄ー!おー手柄ー!」
「ずっと見張ってた甲斐があったね!」
「フィー姉ぇ喜ぶ!」
先程からハ―ピー達はこの調子で浮かれている。どうやらすぐに捕食されずにどこかへ運ぶらしい、となると巣があるのだろうか?だが、元々あった巣だとしたらラルが見落とすハズもないだろう。
「うー、重いー!疲れたー!」
「じゃあ私足持つね」
そう言って今度は足を掴まれ水平になった俺の身体、傍から見るととんでもなく情けない格好なんじゃないだろうか。
しかし、食事を与え救ったと思っていた存在に捕食されるとは何とも悲しいものだ。ハ―ピーだけに鳥頭なのか。
いや、これまでが上手くいき過ぎていたのだろう。
俺が死んだら残された皆はどうなるんだろうか、リーヤは、スミスさんは、スィアは、オーウィンは、ラルは、オーク達は…。
「あ、あの!」
思い切って大声を出して肩を掴むハ―ピーに呼びかける。
「んー、何ー?呼んだー?」
「元の場所に返してくれませんか?そうしたら食事を用意します!他の皆さんにもお腹いっぱい食べさせられます!」
「それはー魅力的だけどー…ダメー」
食べ物で釣ろうとしたのがばれたのか、それとも食べ物以外の目的があるのか?
「な、何で!?お腹空いてて俺を餌にしようとしてるんじゃないんですか?」
「まさかー、確かにお腹は空いてるけど恩人を食べるほど歪んじゃいないよ―、ねーみんなー」
周りのハ―ピー達もうんうんと頷き同意していた。
…え、勘違い?じゃあ何で俺は連れ去られているんだろうか?
「それはねー…あー着いちゃったー」
森の中でも目立つ大きな樹、その頂上付近に降ろされた。
其処は、おそらく周囲の木々から採取された枝や葉で作られた大きな鳥の巣に似た場所だった。周りを見渡すとソレと同じような巣が幾つか存在している。
「…ここは?」
「ちょーっと待ってねー、今呼んで来るから―」
俺の質問には答えず、ハ―ピー達は他の巣へ去って行った。
間もなく、1匹のハ―ピーを連れて戻って来た。
「フィー姉ぇ!フィー姉ぇ!こっちこっち!」
“フィー姉ぇ”と呼ばれるハ―ピー、他のハ―ピー達に比べ若干大人びた雰囲気を醸し出している。
…記憶を辿ってみると彼女には覚えがある。間違い無ければラルがハ―ピー達を連れてきた際、初めて介抱したのが彼女だったはず。
「ど、どうしたの?みんな、そんな嬉しそうに」
「にーちゃん連れて来た!」
「にーちゃんって、もう、一体な、にを…」
そこで初めて彼女と視線がぶつかる。
目を見開き口を開けたままの彼女を見つめる事暫く…どうしよう、こちらから挨拶でもするべきだろうか?
「あの」
そう口にした途端、
「…きゅ」
きゅ?
「きゅー」
ハ―ピーの彼女は立ったまま前のめりで倒れたのだった。
「ふぃ、フィー姉ぇしっかりー」
「刺激が強すぎたかな」
倒れた彼女のもとに群がるハ―ピー達、騒がしく誰も俺の事など気にも留めていないようだ。
未だ状況についていけない俺はただ立ちつくすことしかできなかった。
…誰でもいいから説明してください。




