15:備蓄倉庫
Japan VCSO Japapn branch office
緊那羅は自分の部屋のベッドに寝かされている、隣には阿修羅と摩和羅女、首元にはあえて傷を残している、阿修羅の腕も然り。
金色孔雀への報告は人間を操る鬼に緊那羅が操られた事にしておいた、二人とも無理があるのは分かっていたが建前だけでも無いしめしがつかない。
緊那羅はあれから2日間ずっと眠っている、摩和羅女や医療班による蘇生術は終っているのでもうそろそろ起きる頃。
しかし起きてから何があるかは二人には分からない、もしかしたら二人とも斬られるかもしれない、それでも二人は緊那羅を信じていた。
「う…………、ううん」
緊那羅はゆっくりと目を開いた、摩和羅女と阿修羅は息を飲み緊那羅を見つめる。
緊那羅は二人を確認すると腕輪に触れようとした、しかしそれより速く阿修羅が口を開く。
「緊那羅、聞いて」
「何を?分かってるでしょ、私は愛する人をあんた達に殺された、この世で一番大切な人を殺された気持ちがあんた達に分かるの!?」
阿修羅はうつ向いたまま黙ってしまった、その時摩和羅女は勢い良く立ち上がる。
「アタシには分かる!アタシのかか様はアタシが殺した!」
「あんたの手で殺した訳じゃ無いでしょ」
「この手で殺した、かか様はある日いきなりアタシに襲いかかって来た、アタシにはそれが理解出来なかった、でも分かる、このままだと殺される、だからアタシは生きるタメにかか様を殺した。
アタシは愛する者を殺す苦しみも、愛する人を無くす苦しみも一遍に味わった、かか様が何故アタシに刃を向けたのか今だに分からない、殺した事を後悔してる、かか様を殺したアタシを恨んでる、でもアタシは必死に生きた、生きたからまた大切な姉様に会えた」
摩和羅女が意味する姉様、それは二人が痛いくらい理解している、緊那羅は腕輪から手を遠ざけると右腕で涙を拭った。
「私は愛する人が死ぬ悲しみは分からない、でも一番大切な人を傷付ける苦しみなら分かる、緊那羅、貴方を殺さないように戦うのは大変なんだから、貴方は私より強い、だから私も本気を出さなきゃ殺される、でももしかしたら殺してしまうかもしれない、そんな中で頭を使って貴方を挑発して、………動けないようにして、もうこんな苦しい思いさせないで、貴方を傷付けるくらいなら死のうとも考えた、それくらい辛かったんだから」
阿修羅はうつ向きながら涙を流した、涙はスカートを握った手の甲に落ちる、姉妹のように仲の良い3人、お互いを傷付ける苦しみはお互いがよく分かっている。
「ごめんなさい、でも私はもう過ちをを犯した、それでもあんた達は私を受け入れられるの?」
「何を言う、緊那羅はアタシの姉様だ、受け入れるに決まってるだろ」
「それに、緊那羅は鬼に操られてた、そう報告書に書いてあったわよ」
緊那羅は阿修羅に抱きつき大きな声をあげて泣いた、摩和羅女はそれを見て抑えていた涙が頬をつたう、それをみて阿修羅は摩和羅女を抱き寄せた、阿修羅は二人の頭に顔を埋めて涙を流す、殺しあった傷を洗い流すように。
3人は落ち着くと身支度をした、まだ任務は残ってる。
3人が部屋を出ると壁に寄りかかってる金色孔雀がいた、3人は軽く目を合わせるだけで素通りしようとした。
「全部聞かしてもらったよ」
金色孔雀はそう言うと阿修羅が提出した報告書をその場で破いた、3人の顔色は険しくなる。
「嘘は良くないな」
「何が言いたいの?罰なら私が受ける、この二人はホーリナーとして正しい選択をしただけだ」
緊那羅は金色孔雀の前に立ち頭を下げた、プライドの高い緊那羅がこういう事をすることは皆無。
「当たり前だよ、緊那羅、君はダークロードに加担した、その罪は重い、それに君のした行為は神を侮辱する行為だ」
「殺すか?記憶を消すか?」
「そんな事は私がさせない、緊那羅は大切な仲間、場合によっては私は緊那羅を助ける」
阿修羅は腕輪に手を近付けた、摩和羅女も同じ、緊那羅はそれを制止しようとするが、それよりも速く金色孔雀が前に出た。
「君達、自分の立場が分かってないみたいだね、ダークロードに加担した緊那羅を独断で追った事、報告書に嘘を書いた事、それを大目に見てあげようと言ってるんだよ」
「そうよ、コイツも鬼じゃない、記憶を消すくらいだろう」
「それがダメなの!」
「どうやら君達にも罰が必要みたいだね」
3人は息を飲む、金色孔雀はポケットに手を突っ込み嫌な笑みを浮かべた、そしてポケットから鍵を取り出す、その鍵が示すのは罰への片道切符。
「備蓄倉庫の掃除頼んだよ」
「「「えっ?」」」
「だからぁ、備蓄倉庫の掃除、これが君達の罰」
「本当にそれだけで良いの?」
「当たり前だろ、君達3人を失うのは日本支部にとって大打撃だ、それにホーリナーも人間だもん、過ちの一つや二つ許すよ、死人も出なかったし」
「良かったね、緊那羅、摩和羅女」
阿修羅が笑顔で二人を見ると、床に座り込んで肩を抱き、歯をガチガチと震わせながら震えていた、顔は青ざめ、表情は恐れに満ちている。
阿修羅は不安になり二人の肩を揺らして問掛けるが返事はない、そして見上げると恐ろしい笑みを浮かべた金色孔雀がいる。
「君達に拒否権は無いよ、阿修羅、二人を連れてきて」
金色孔雀は鍵を人差し指で回しながら歩き始めた、阿修羅は緊那羅と摩和羅女に肩を貸して金色孔雀の後を追う。
地下の多目的スペースの上にある備蓄倉庫、そこは扉越しでも分かるくらいに異様なオーラを放っている。
金色孔雀は鍵を開けると、扉を開けて3人に中に入るように指示する。
3人が中に入ったのを確認すると鍵を閉め、外から灯りを付けた。
「「「イヤァァァァ!!」」」
3人のつんざくような悲鳴、そして大きな物音、扉を必死に叩く音、助けを求める声。
3人のトラウマがまた一つ増えた。
やっと仲直りしました、備蓄倉庫の中身は想像にお任せします、精神力のあるあの3人がトラウマになるくらいの恐怖です。
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