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14/22

14:敵対


Japan park


阿修羅(あしゅら)と摩和羅女(まわらにょ)は公園にいた、ホーリナーの携帯は全員の居場所が分かるようになっている、阿修羅(あしゅら)は摩和羅女(まわらにょ)を探す時にコレを使えば良かったと後悔した。

公園にいる理由は緊那羅(きんなら)のGPSが公園の中にあるため、もしかしたら携帯を捨てたという可能性もあるが、それも足を追う一つの手となる。


阿修羅(あしゅら)が携帯のGPSのポイントと目の前を見くらべる、そこには緊那羅(きんなら)が座っている、鬼の死体を前にして。

摩和羅女(まわらにょ)はその異様な光景に阿修羅(あしゅら)の後ろに隠れた、阿修羅(あしゅら)は険しい表情で緊那羅(きんなら)を見る。


「来たのね」

「冷静になった?」


緊那羅(きんなら)は腕輪に触れる、得物は納刀された刀、名は羅刹。

緊那羅(きんなら)は羅刹を左手で握ると、振り返り構えた。


「はぁ、それが答えなの?」

「あんた達は私の仇よ」

「悪魔に墜ちるっていうの?鬼を愛した事は誰も咎めない、だから目を覚まして」

「愛した人を殺された悲しみがあんたに分かるの?」


阿修羅(あしゅら)は黙り込んでしまった、確かに阿修羅(あしゅら)に愛した人はいない、だからと言って今の緊那羅(きんなら)のやっている事を肯定する事も出来ない。


「摩和羅女(まわらにょ)、頼んだわよ」

「しかし阿修羅(あしゅら)―――」

「もう緊那羅(きんなら)は緊那羅(きんなら)じゃないの!分かって、摩和羅女(まわらにょ)」


阿修羅(あしゅら)は涙を流しながら腕輪に触れた、得物は長刀、名は夜叉丸。

摩和羅女(まわらにょ)は間合いを取り腕輪に触れる、得物は針、名は針鬼。

阿修羅(あしゅら)は切っ先を斜め下に向け、背筋を伸ばす、緊那羅(きんなら)も構えると低く沈んだ。

先に動いたのは緊那羅(きんなら)、緊那羅(きんなら)は地面を蹴ると鞘走りを利用して横薙に斬る、阿修羅(あしゅら)は軽々と受け太刀すると緊那羅(きんなら)は止まり、睨みあう。


「私は手加減しない、全力であんた達を殺すわよ」

「私達は貴方を全力で連れ戻す」


緊那羅(きんなら)と阿修羅(あしゅら)は間合いを取ると同時に構える、阿修羅(あしゅら)は地面を蹴ると半身になりながら緊那羅(きんなら)を突く、緊那羅(きんなら)は鞘で切っ先を受け止めると抜刀して斬りかかる、阿修羅(あしゅら)は一歩前に出て夜叉丸をずらして柄で羅刹を受け太刀する。

阿修羅(あしゅら)は前蹴りし、緊那羅(きんなら)を突き飛ばす。


「やっぱり強いわね」

「そう?私は貴方と戦えて楽しいわよ」

「戦闘神さまは怖いねぇ、戦いを楽しむなんて」

「運動を楽しんでるのよ」


緊那羅(きんなら)は鼻で笑うと抜刀した、そして左手に鞘を握り右手で羅刹を持つ、阿修羅(あしゅら)は緊那羅(きんなら)の抜刀の型を見たことがない、何故なら緊那羅(きんなら)は阿修羅(あしゅら)の前で本気を出した事が無いから。

納刀は相手の出方を伺った防御的な型、抜刀は両手を使えるタメ攻撃的な型。


「良いこと教えてあげる、この型はステージ5でしか使った事ないの、あんたの事認めてあげる」

「はぁ、認めなくて良いから戻って来て」

「私の首を持ち帰る事ね」


緊那羅(きんなら)は地面蹴る、素早い動きで逆手で持った左手の鞘で殴りかかる、阿修羅(あしゅら)は軽々と夜叉丸で受けるが、阿修羅(あしゅら)の左からは羅刹が斬りかかってきた、何とか腕輪で防御するが力押しされる。


「グッ!」


緊那羅(きんなら)は前蹴りで阿修羅(あしゅら)を突き飛ばすと、鞘で阿修羅(あしゅら)の頭を殴った。


「クハッ!」

「殺気がない、それじゃあステージ4も殺せないわよ」

「緊那羅(きんなら)は、霊じゃ、ない、私達の、仲間」


阿修羅(あしゅら)の頭からは血が流れる、殴られたせいで右目が見えにくくなった。

阿修羅(あしゅら)は服の腕を切り、頭に巻いて応急処置をした。


「この期に及んでまだ仲間なんて温い事言ってるの?私の殺気が分からない訳じゃないでしょ?」


阿修羅(あしゅら)が気付かない訳が無かった、緊那羅(きんなら)の今までに感じた事の無い殺気。

緊那羅(きんなら)は阿修羅(あしゅら)を睨み、構えようとした時、いきなりバックステップをした、そして地面に針が突き刺さる、緊那羅(きんなら)が針の飛んで来た方向を見ると摩和羅女(まわらにょ)がいる。


「あんたはそうやって章吾を殺した、味方にすると心強いけど敵にすると卑怯の一言ね」

「頼む!目を覚ましてくれ、緊那羅(きんなら)!」

「正気よ、コレが私の選んだ道、ただそれだけよ」

「緊那羅(きんなら)、変わってしまったんだな」

「そうかもね」


緊那羅(きんなら)は今度こそ構える、阿修羅(あしゅら)は右手一本で夜叉丸を持ち腕は力無く垂れた、そして体がフラフラと揺れ始める。


「諦めたの?構えなさいよ」

「貴方だけが力を抜いてたと思わない事ね」

「もしかしてそれが本気って事!?笑わせないで、そんな力の入らない無い構えで何が本気よ!」

「そう、それなら行かしてもらうわよ」


阿修羅(あしゅら)は前に倒れるように地面を蹴る、夜叉丸を引きずりながら緊那羅(きんなら)の懐に潜り込む、阿修羅(あしゅら)は右腕一本で全身を使いしなやかに切り上げる、緊那羅(きんなら)は軽々と鞘で防ぐと夜叉丸は弾かれた。


「こんな力の無い斬撃始めて!馬鹿にしないで!」


阿修羅(あしゅら)は口角を上げると、弾かれた反動で左手に持ち変える。

緊那羅(きんなら)は変速的な動きに戸惑うも、阿修羅(あしゅら)のしなやかな横薙の攻撃を羅刹で防いだ。

再び弾かれると左腕を大きく開いて遠心力を殺さずに、左足で回し蹴りを放つ、緊那羅(きんなら)は鞘で防ぐが鞘ごと頭を蹴られた。


「クアッ!」


切れてはいないが腫れている、緊那羅(きんなら)は間合いをとった、阿修羅(あしゅら)の変速的な攻撃について行けてない。

緊那羅(きんなら)の型は防御と攻撃を一貫した型、しかし阿修羅(あしゅら)の型は防御を捨て変速的な型で相手のペースを乱す型、それにまんまと緊那羅(きんなら)はハマってしまった。


「やりづらいわね」

「どう?本能で動いてる霊にはやりづらいけど、頭がある人間相手には抜群でしょ。

それに人間は少しのキズでも動きはにぶる、力は無くても骨にまで達すれば動きに支障がでる、強いでしょ?」

「厄介ね、でもそんなにベラベラ喋って良いの?敵に塩を送るようなモノよ」

「貴方の型は見きった、私の型の種明かししなきゃフェアじゃないでしょ?」


阿修羅(あしゅら)は不適な笑みを浮かべる、緊那羅(きんなら)はその笑みに背筋が凍る思いをした。


「さすが戦闘神、戦いを楽しんでるのね」

「はぁ、違うって言ってるじゃない、別に貴方を斬らないで済めばそれで良いのよ、でもこんなに頭を使って体を動かしたのは始めて、楽しい」

「それが戦闘を楽しんでるって言うのよ、戦闘神様」


阿修羅(あしゅら)はそうかもねと一言いって再び揺れ始めた、緊那羅(きんなら)は阿修羅(あしゅら)に先手を取られるまえに地面を蹴った。

阿修羅(あしゅら)は右手に持っている夜叉丸を逆手に持ち変え、緊那羅(きんなら)の羅刹の攻撃を、体を後に向けながら腕から肩にかけて夜叉丸を沿わして防ぐ、そしてそのまま回し蹴りを放った、しかし緊那羅(きんなら)は羅刹を納刀して防いだ。


「同じ攻撃は何度も通じないわよ」

「そう」


阿修羅(あしゅら)はそのまま鞘を左足で蹴り、右足を軸にして回転する、体制を崩した緊那羅(きんなら)に背を向けた時、夜叉丸を左手に持ち変え逆手で握る。

左足を大きく振って遠心力を付けて斬りかかる、しかし緊那羅(きんなら)は抜刀して羅刹で防いだ。

緊那羅(きんなら)は左手の鞘で殴りかかろうとする、阿修羅(あしゅら)は左足を地面に付けて右足で緊那羅(きんなら)の手を蹴った。


「やるわね」

「ありがとう」


阿修羅(あしゅら)は間合いを取り、緊那羅(きんなら)は腕輪に触れて鞘を戻す。


「摩和羅女(まわらにょ)、手出ししないでね」

「だけど阿修羅(あしゅら)!」

「合図したらお願い」

「阿修羅(あしゅら)………」

「あんたも戦いに溺れたのね」


阿修羅(あしゅら)は笑顔を作ると涙を流した、その光景に摩和羅女(まわらにょ)も緊那羅(きんなら)までも戸惑った。


「こんな苦しい思い、摩和羅女(まわらにょ)にはさせられない」

「阿修羅(あしゅら)、摩和羅女(まわらにょ)は頼んだわよ」

「阿修羅(あしゅら)!緊那羅(きんなら)!」


二人は同時に地面を蹴った、先に仕掛けたのは阿修羅(あしゅら)、先に体を動かし右手は動かさずに回転を始める、緊那羅(きんなら)は羅刹で斬ろうとするが、右腕が凄まじい勢いで振られる、緊那羅(きんなら)は鞘で防ぐが阿修羅(あしゅら)のしなやかな腕の勢いは止まらない、緊那羅(きんなら)は羅刹も使い阿修羅(あしゅら)の攻撃を受け流す。

阿修羅(あしゅら)は勢い余って緊那羅(きんなら)に背中を向けた、緊那羅(きんなら)が斬ろうとした瞬間、阿修羅(あしゅら)は半身になりながら緊那羅(きんなら)の喉元めがけて突きを放つ、緊那羅(きんなら)は間一髪の所で夜叉丸の切っ先を羅刹の鞘に納める。


「へぇ」

「がら空きよ」

「どうかしら?」


阿修羅(あしゅら)は夜叉丸から手を離し、左足で今までより速い回し蹴りを放つ、緊那羅(きんなら)は夜叉丸を抜き、羅刹を納刀させて阿修羅(あしゅら)の足を防いだ。


「馬鹿の一つ覚え?」

「それは貴方」


阿修羅(あしゅら)は足を曲げて、羅刹と腕で出来た空間に足を入れる、腕輪に手を触れ夜叉丸を地面に突き刺し、足を上げたまま踏ん張ると、羅刹を蹴り飛ばす。


「なっ!?」


緊那羅(きんなら)が腕輪に触れるより速く緊那羅(きんなら)の左腕を掴む、そしてそのまま緊那羅(きんなら)の背後に回り込むと緊那羅(きんなら)の左腕の関節を外した。


「グワァァァァァァ!」


そして右腕を取り背後で関節を固めると左腕を緊那羅(きんなら)の首に回し動きを封じる、緊那羅(きんなら)は痛みで汗が流れ胴着がびしょびしょになっている。


「私の、負けね、殺し、て」

「摩和羅女(まわらにょ)!」


摩和羅女(まわらにょ)からの返事は無い、しかし針を投げる準備は出来ている。


「阿修羅(あしゅら)、殺して、くれて、ありが、とう」

「摩和羅女(まわらにょ)!早くして!…………緊那羅(きんなら)が可哀想」

「でも!阿修羅(あしゅら)の腕が!」

「場所は分かるでしょ!?大丈夫、緊那羅(きんなら)の苦しみに比べたら穴の一つや二つ」

「ゴメン!阿修羅(あしゅら)!」


緊那羅(きんなら)は最後に微笑み、涙を流した。

針鬼は阿修羅(あしゅら)の腕を貫き、緊那羅(きんなら)の首を貫いた、緊那羅(きんなら)の全身の力は無くなり、阿修羅(あしゅら)の腕の中で人形のように倒れた。


「摩和羅女(まわらにょ)、どう?」


摩和羅女(まわらにょ)は傷口や脈、そして瞳孔などを見て阿修羅(あしゅら)の目を見る。


「大丈夫、仮死状態だ」

「ありがとう」

「阿修羅(あしゅら)の腕は大丈夫か?」

「神経もあるし動く、ちゃんと痛いから大丈夫よ」


阿修羅(あしゅら)は緊那羅(きんなら)を抱きかかえて立ち上がった、阿修羅(あしゅら)の腕の中で力無く腕を垂らす緊那羅(きんなら)、その表情は喜びに満ちている。

その笑顔は愛する人がいない苦しみから解放された笑みか、仲間を傷付けずに済む安堵の笑みかは、まだ分からない。

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