1:神と悪魔
Italy
血で染まった真っ赤な大地。
パズルのようにバラバラになった死体。
意識はあるが体の一部が無い人。
地獄絵図、そこに不相応な一人の女性。
真っ赤な髪の毛、血に染まったモノではない。
真っ赤な瞳、猫のように瞳孔は縦に割れている。
真っ赤な着物、朱に染められた着物の帯は白、そこには長い髭を生やし、長い髪の毛の古代ヨーロッパの初老の男性が刺繍されている。
真っ赤な長刀、その赤は血、切っ先から滴り落ちるも血。
対峙するは、赤黒いローブを着た人、フードを被っていて顔は確認出来ない。
分かる事は、この地獄絵図はこの人物によって描かれたモノ、得物は大剣クレイモア、そして、敵。
二人の男が片膝を付いた状態で女性の後ろに現れる、顔は下を向き、女性より下の階級だということが分かる。
「阿修羅様、あのお二人は?」
阿修羅と呼ばれたその女性は、意識は敵に、顔半面は後ろに向けた。
「ジャパンに、そして別々の場所に」
その言葉を聞くと同時に二人は消えた。
残されるは阿修羅と敵、阿修羅は刀を斜め下に構えると、目を瞑り集中した。
二人の間は静寂、そして一触即発、水が張ったコップのように、何か衝撃が加われば始まる、張り詰めた空気が支配した。
しかしその衝撃は外部の者によって加えられた、阿修羅の隣に現れる一人の男、得物は十字槍、ブルージーンズに白いTシャツといラフなスタイル、右半分には阿修羅の帯と同じ刺繍、それが示すのは仲間。
「神徳は護法神・名は毘沙門天、只今参上!テメェがルシファーと見た」
「空気を詠みなさい」
毘沙門天の乱入により、空気は一気に冷めた。
「面白い、阿修羅に毘沙門天とは、我も幸福だ」
「不幸の間違いだろ?」
「どちらでも構わない、天竜の巫女の血、それだけが欲しい」
毘沙門天は頭の上で槍を構えた、阿修羅は切っ先を斜め下に向け、ルシファーは切っ先を後ろに向け半身になる。
この戦いが神と悪魔の最後の戦いになるハズだった、しかしいくつもの屍を踏み越えたこの不毛な戦いの序章にしかすぎなかった。
Japan
赤子を抱きながら歩くは阿修羅の部下の男、しかし命は尽きかけていた、意識が朦朧とする中歩く、腰は折れ、膝を付き、赤子を投げ出して倒れ、命が尽きた。
男が動かなくなると赤子は大きな声で泣き出す、その瞬間、男の死体は光り始め、水のように溶けると、赤子の手首に巻き付き、腕輪と化した。
もう一人の男も赤子を持ち歩いている、この男も同じように倒れ、命が消えた。
倒れた男に赤子、通りかかった人は慌てて助けを求めた。
「誰か!救急車を呼べ!外人と赤ん坊が倒れてるぞ!」
男は日本人ではない、それは一目で分かる、しかし赤子は日本人に限りなく近い顔立ち、異様な光景である。
神に愛された赤子、悪魔を愛した赤子、この二人が世界を再び朱に染める。
新連載始まりました、『修羅の巫女』は続編モノです、最初は《霊鬼編》、もし良かったらコメントや評価、アドバイス等を頂けると光景です。