1話目 安い男と安酒場。スカートもあるよ
和洋折衷なんでもありです。その時々に書きたいことを好き勝手書く感じです。ロボットは出てくるけど電子レンジは出てこない、そんな世界。
─魔王復活─
と、噂が流れて早5年。数多の腕自慢、名声目当ての中途半端な魔法戦士(名前からして中途半端感が漂う)に『魔物ハンター』から『魔王ハンター』に称号チェンジしたい変な奴等が日夜魔王探し(見つかってないから退治ではない)に勤しんではいるものの、未だに魔王の姿を見たものはいない。最早大半の奴が『魔王って実在するの?』と存在自体を疑っている。
そしてそんな雑な世界で適当に生きてる男が一人……。
「で、魔王はなんでその国を滅ぼしたんだ?」
「あんた人の話聞いてなかったの?! 今言ったでしょ」
「食べるのに夢中で……」
「あんた耳の穴から食べるの? そして脳で消化すんの?」
「バケモノすぎるだろ……ご飯がまずくなるわ……」
普通の酒場に男女が二人。男の方は普通のシャツに長ズボン、申し訳程度に、心臓だけガードする胸当てのようなものを着けて、腰には短めのナイフを2本装備している。防具に関しては、この男のように身軽さを重視するタイプ、言い換えれば人より猿寄りのタイプと、身軽さを捨てて重装備をするタイプ。ここは好みの分かれるところである。
一方女はと言うと、こちらも軽装である。これまた普通の長袖シャツに動きやすそうなフレアスカート、椅子の横に矢が入った筒を置いている。
話は会話の途中に遡る。
そもそもなぜ『魔王復活』という噂が流れたのかと言うと、魔物や魔族にびびりすぎた結果、数百年前に国の周りに出入り口のない塀を築き、自分たちも出られなくなり自主的に鎖国状態を作ってしまった国が滅んだからだ。
『塀ならすぐ壊せるでしょ』
と思うのは素人の発想。この国の王は人並み外れたびびりだった。それだけならまだ良かった。しかしこの王はびびりだったが故に努力家だった。強迫観念に苛まれていたと言っても良い。『当時確認されていたどんな魔物も壊せない』防塞術を編み出し、塀を覆ってしまった。
そもそも、魔族も魔物も昔から存在していた。とはいえ動物と同じで個体差はある。『ある程度経験を積んだ冒険家』が倒せるレベルから『魔物退治で名を馳せた戦士や大魔道士』レベルがどうにか倒せるレベルと差はあれど『人が絶対に勝てない』レベルはいなかった。そこまでびびることはなかったのである。
『それならそこまで頑張らなくてよかったでしょ』
と思うのも素人の発想。恐怖が妄想を育て、妄想は確信へ化ける。『そのうち絶対とんでもないのが出てくる』と王は思い込んでしまった。王の死後、城下の者たちは術に覆われた塀を壊そうとしたが、王のレベルは高すぎた。びびりだったが故にレベルが上がるという『魔物を勇敢に倒してレベルが上がる』逆パターンで強くなりすぎてしまった。その結果、いまだに国民は自主的な鎖国を強いられていたのである。ある意味究極の引きこもり。
そんな『結果的に防塞魔法で当時どころか現在に至るまでぶっちぎりナンバーワン』になってしまった王の国が滅んだ。
『壁を壊そうとして強い魔法を編み出したら暴発したんでしょ』
と、なんとなく納得できる意見を言う者もいれば、
『王はきっとこの魔物の存在を知っていて国民のためにがんばったんだ』
と、ろくに知らない王の性格を勝手に想像して英雄視するものもいた。思うことは人それぞれである。そのうち『それぞれ』が合体してしまった。別々のグループで伝言ゲームをやっていたのに、終点の奴だけ同じ奴だった。そんな感じである。
『あの壁は世界の名だたる戦士や魔道士が物理的に『構成はずし』や『パンク』使いが理論的に壊そうとしたにも関わらず、どの分野でも破壊できなかった。それなのに城内でたまたまそんなにすごい奴が生まれたとは考えづらい。王はきっとこの魔王の存在を知っていた。そして、魔王ならば人以上の魔法が使えてもおかしくない」
いつの間にか王が神格化され『あの壁を壊すのは人間には無理』と言う結論からこうなってしまったのだろうが、魔法が暴発した説のほうが魔王なんかより平和でいいだろ。
そんなこんなでいつの間にやら『魔王探し』が各地でブームになり、今では最早『一山あてる』『珍しい昆虫探し』程度のレジャーとなっているのが実状である。いるかもわからないのに。
「つーかさ、大体はわかったよ。俺が聞きたいのはそんな国なのに『その王が死んだってなんでわかったか』って話」
食べるのに夢中と言いつつ、ちゃんと食べ物を飲み込んでから喋る。猿っぽい見た目の割には常識人らしさを感じる。
「なんでって、寿命を考えれば死んでもおかしくないし」
「だろ。本当に死んだかは観測してないからわからない」
「あんた『俺実は賢いんだよ』みたいな喋り方たまにするけど、それっぽいこと言ってるだけでしょ」
「いや、同じびびりの俺にはわかる。王は今はわからないが、爆発の時点では絶対死んでない」
「なんでそう思うのよ」
「考えても……いやお前みたいな奴には無理か……」
「どういうことよ!」
女がテーブルを両手で叩くようにしながら立つ。きれいなアッシュベージュの長髪が揺れるが、顔は当然怖い。
「俺をまたショック死させる気か!」
「そろそろただのショック死も飽きてきたでしょう。出血多量性ショック死とかたまにはどう?」
女が弓を引くポーズを取ると左手に弓が現れる。普通のショック死に飽きるとは一体。
「大体、魔法で弓も矢も出せるお前が何で本物の弓持ってんだよ」
「私はアーチャーですアピールしてるの! 男ウケいいし!」
女が座り直しながら言う。弓はいつの間にか消えている。きっとハーフパンツなどではなくスカートなのも男ウケ狙いなのだろう。
「ケッ、男ウケ狙うならもっとしとやかにしてろっつの。長髪なのもおかしいし」
「それより、なんでそう思うのよ」
女がさっきの話の続きを促す。なんだかんだ興味はあるらしい。
「ああ、だってさ、『魔物が怖い』って言うのはつまり殺されたくない、死にたくないってことだろ。そんな一念で防塞術を極めるどころか人類の上限を突破した男が不老不死かはわからないが、不死の努力をしないわけがない」
「努力が報われたかはそれこそ観測してないからわからないでしょ。それも含めて全く情報がないわけだし」
「そもそも、その防塞術は本当に内側からは破壊できなかったのか? それもわからないだろ。ただ結果として『一級品の防塞術で覆われた国が内側から爆発して滅んだ』のを見たと言うか、ニュースで知っただけなんだから」
「一体何が言いたいの?」
「暇なら行ってみてもいいかなって」
「あんたなんでこの街にいるか忘れたの?」
「好きだから……この街も……そしてお前も……」
男が女の顔を見つめながら言う。
「街が好きな理由は?」
女が問う。『自分のことが好き』という部分は完全にスルーしている。この顔では無理もない。
「ここらへんは魔物が弱いから……。魔族も出ないし……」
「ついでにびびりだしね」
「だがここで考えてみてほしい。本当にビビリならどれだけ魔物が弱くても戦えないのではないか」
「基本的に倒してるのは私でしょ!」
名前がまだないのは決めてないからです。次までに決めときます。




