第一件 合わない物
最近のミステリって面白すぎる
誘拐からどのくらいの時間が経ったかは子供の親にとってはデリケートな話題である。
「あーあ。これで何件目だよ。まったく最近の警察ときたら、碌な仕事をしないんだから。」
こうやって言っているのは僕の相棒、藍澤蓮香。こんなことを言っているが探偵だ。
探偵と警察なんてほとんど同じだと思うのだが。
最近は警察から探偵転職する人も多いと聞く。その中の1人が彼女だ。
彼女が見ているテレビにはニュース番組が流れている。今月に入って6件目の誘拐事件。7歳から11歳の子供を重点的に狙った誘拐犯。警察が捜査を続けていると報道されているがそのうちの3件はうちの探偵事務所の依頼が来ている。
明らかに多すぎる。人手が足りないと言っても警察から依頼が来るなんてことがあるのだろうか?
そう考えていると時計が目に映る。10時47分。そろそろ新しい依頼者が来る時間だ。依頼者が来るので片付けるように言ってから20分が経とうとしてるのだが一向に片付く気配がない。「蓮香さん!テレビ見て文句垂れてないでさっさと片付けてください!」
僕はこう叫びながらコーヒーを入れるのであった。
「3日前から子供が帰ってこない?」
依頼者の初音華月さん。年齢は48歳のようだ。そんな年には見えないほど綺麗で若い見た目をした人だ。3日前から子供が帰ってこないと言う依頼でここを訪れてきたようだ。行方不明者は初音佳那斗、16歳、高校生。
「高校生なら家出もありうるのでは?」
「それが、前夜までは普通に話していたんです。朝、佳那斗を起こしに行く時ドアが開いていて、部屋の中には誰もいなかったんです。」
何か違和感を感じる。得体の知らない違和感が全身を支配してゆく。僕がもっと詳しく話を聞こうとした時、蓮香が不意に喋った。
「本当にいなくなったの?」
空気が一瞬にして凍る。だが、蓮香は華月に一瞬の動揺が見えたのを見逃さなかった。
「あなた、嘘ついてるよね?流石にその見た目で48歳はおかしいよね。私の目には20代前半に見えるんだけど。」
これだ。48歳にしては見た目が若すぎるんだ。全身に巡った違和感が消えていく感覚が自分でも理解できる。
華月は小さく首を縦に振るとポツポツと語り始めた。
「48歳というのは嘘です。すみません、試してしまいました」
蓮香が身を乗り出したまま考えている。
「けど、消えたことについては本当です。ただ全部を話したわけじゃありません」
僕は横目で蓮香さんを見ると、顔が少し赤くなっていた。自信満々に言っていたことを思い出してしまったらしい
「佳那斗がいなくなった“朝”、部屋は、確かに空でした。でも、ベッドは、温かかった」
「ということは消えたのはすぐ前なのか?」
「じゃあ早速君の家、行こうか。部屋を見れば、理由があるはずだ」
華月が驚いたように、かつ叫ぶように言う。
「依頼、受けてもらえるんですか⁉︎」
「当たり前でしょ。解決しようか、この事件」
そうして依頼主が鍵を取り出すと、僕たちは彼女の家へ向かった。
“朝に空だった部屋”と“まだ温かいベッド”――その二つが、どうしても同時に成立しないまま




