めざめの朝
第1章、開幕です。
まずは普段の様子からお届けします。
太陽が昇る。
闇に包まれていた大地をその光であまねく照らし出す。
その光に気付いた生き物たちは、自らの営みを始めるべく動き出す。
「大地の国」の中心部に位置する中央都市。太陽の光が届き始める頃、都市全体が目覚めようとしていた。
中央都市の東側に位置する「冒険者ギルド」直轄のギルドハウス。正面のドアが開き、中から若い女性と幼い子どもが出てきた。
「今日も晴れたね!」
若い女性ーーマルタはつぶやきながら身体を伸ばす。ストレートの金髪が光を浴びて輝いた。
その横で幼い子どもーークルムはマルタの真似をするように、同じ動きをしていた。
「さて、じゃあ朝ごはんにしましょ!」
「うん!」
二人は笑顔を交わしてギルドハウスに戻った。
嵐が吹き荒れた夜、マルタによって救われ、ギルドハウスで暮らすようになってから1年が経った。最初は不自由だった言葉もしっかり喋れるようになり、今ではギルドハウス内の手伝いができるまでになった。
クルムを助けたばかりの頃、名前も歳も分からない状態だったので、「クルム」という名を与え、歳は身長・体重などから医者が推定して4歳とした。喋れるようになった頃に本当の名前と年齢を確認してみたが、
「ぼくのなまえはクルムで、ねんれいは4さいじゃないの?」
と首をかしげながら言われてしまったため、それで通すことにした。
今ではすっかりマスコットとして定着したクルムは、ギルドハウスを訪れる冒険者たちに男女問わず人気だった。
初めのうちは警戒されてしまうものの、やがて自分から寄ってくるようになり、他愛ない冒険譚に目を輝かせるのである。命のやり取りをすることが非常に多い冒険者たちにとっては、まさしく「癒し」であった。
そんなクルムは朝食の後、依頼を確認しに訪れる冒険者の見送りが日課となっていた。
「いってらっしゃ〜〜い!」
と、両手を大きく振って見送る姿に冒険者たちは気力を漲らせるのである。
見送りが終わった後は掃除などの簡単な手伝いをしたり、マルタに魔術を教わったりして午前を過ごす。
そして。
「クルム〜、あそびにいくぞ〜!」
「さそいにきたよ!」
外からクルムを呼ぶ声が聞こえてきた。
「ほら、お友達が呼んでるわよ」
「うん、いってくる!」
パタパタと足音を立て外に出ると、3人の子どもと、ギルドハウスの受付を担当しているヴェリベルがいた。
「クルム、おそいぞ!」
「きょうはなにしてあそぶ?」
「むこうでなにかやってるみたいだよ」
「みんな元気ねえ」
子どもたち+ヴェリベルがやいのやいのと騒ぎたてる。そんな中でクルムは、
「なにかやってるの?」
と、大通りで行われているらしい見世物に興味を示した。
「おおきなどうぶつたちがいっぱいいるんだって!」
「わっかをくぐったりするらしいんだぜ!」
「にしのほうからきた、っていってたよ」
「そういえば昨日本部からそんな話が回って来たわねえ。サーカス……とか言ってたかな」
「おもしろそう!」
クルムが目を輝かせると、子どもたちも、
「じゃあ、みにいこうぜ!」
「みるのにおかねがいるんじゃないの?」
「きょうだけは『むりょう』なんだって」
と、乗り気になった。
「大通りに行くのね?気をつけるのよ?暗くならないうちに戻ってきなさいね」
騒ぎを聞きつけたマルタが外に出てきて注意すると、
「「「「は〜〜い」」」」
と4人は応じた。
「クルムったら最近私とお話ししてくれないから、寂しいなあ」
ヴェリベルがクルムに聞こえるようぼやく。
「ええっ?」
びっくりした顔をするクルム。
「なんだよ、ねえちゃん『しっと』してるのか?」
「なにを〜、そんな生意気なこと言うのはこの口かー!」
ぐにぐに、とほっぺを縦横に伸ばす。
「ふご〜!」
いじられた子どもは手をバタバタさせて抵抗し、その様子を見ていた他の子どもたちは大笑いしていた。
そんな騒ぎが一通り収まると、4人の子どもたちはマルタとヴェリベルに手を振り、勢いよく駆け出す。マルタとヴェリベルは手を振り返しながら見送った。
この世界にもサーカスは存在しますが、サーカスにいるのは全て「動物」です。




