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冒険者ギルドにて ②

舞台はまだまだ冒険者ギルドです。登場する人物も少しずつ増えていきます。

 少年――クルムが冒険者ギルドのマルタ、アルスに拾われ1週間が経った。すっかり1人で歩けるようになったクルムは何をしているのかというと……。



「この書類はこっちの棚に持っていかないと……」

 スタスタスタ……

 トコトコトコトコトコトコ……


「あ、これ掲示板に貼っておかないとだめじゃないの」

 スタスタスタ……

 トコトコトコトコトコトコ……


「アルスさーん、お手紙でーす」

「ああ、少し待ってくれ」

 ドスドスドス……

 トコトコトコトコトコトコ……


「さてと、中身は何かなっと……」

 カサッ、カリカリ……

 じ~~~~~~~~っ


「「「やりづらい……」」」

 こんな感じであった。


 なにが面白いのか、人の後をついて行っては何をするわけでもなくただじっと観察しているのである。用があるのかと振り返ってみても、服の裾をつかみながら首をかしげるだけ。さらに声を掛けてみても、

「あ~~」

 まだ言葉を覚えておらず、会話にならない。その度にギルドハウスの大人たちはため息をついた。


 マルタの見立てでは、この行動はクルムが懐いた人間にしか行わないようである。なぜなら、冒険者ギルドにいる3名、アルス、マルタ、受付嬢をしている若い女性――ヴェリベルに対してと、外の人間に対してでは、クルムがこの行動を取ったタイミングに差があったからである。

 そして、まだ懐いていない人間がクルムに近づくと、懐いている人間の後ろにサッと隠れ、片目だけ出して相手の様子を伺うのである。要するに、懐いたときとそうでないときの反応がとても分かりやすかったのだ。


 ところで、アルス、マルタ、ヴェリベルの3名のうち、クルムが最も早く懐いたのはマルタだったが、次に懐いたのはアルスだった。ヴェリベルは時々クルムに話しかけたり構っていたりしていたものの、懐いたのは最後になってしまったのである。

 この結果にヴェリベルは納得がいかず唸っていたところ、その横でアルスが「なんで俺が先に懐かれたんだろうなあ」と、クルムを抱き頭をなでつつニヤけながら呟き、その声を聴いたヴェリベルは、自分の中で何かがぶちんと何かが切れるのを感じた。

 その後、ギルドハウスから男性の情けない悲鳴が上がった。近くにいた人が駆け込んでみると、ボロ雑巾のように成り果て床に打ち捨てられたアルスと、満足気に笑っているヴェリベルの姿があったという……。


 そんな一幕もあったが、無事ヴェリベルにもクルムは懐いた。そのときのヴェリベルの様子はマルタ曰く「受付嬢やってるときの笑顔より輝いてる」とのことだった。



 そんな日常を送っていたある日。

「お~~い、戻ったぞ~~!」

 男性の太い声がギルドハウスに響き渡った。


「あら、おかえり」

 その声に気付いたマルタが顔を出すと、見知った人物がカウンターにいた。


「依頼は終わったのね」

「ああ、ちと遠いくらいで大して危なくもなかったしな」

 依頼完了の手続きをしながらマルタと男性は親しげに話している。その様子をクルムはじっと見つめていた。



 以前にも述べた通り、アルスとマルタ、ヴェリベルがいるギルドハウスは通称「冒険者ギルド」直轄の施設である。「冒険者ギルド」の役割は大きく2つあり、「各種依頼の受付、および斡旋」と「冒険者の身元管理」となっている。


 前者は都市間の移動を行う際の護衛、盗賊・魔物といった危険要素の排除、その他困りごとの解決などといった、国や市井からの「頼み事」を依頼として受け付け、希望する冒険者に割り振るのである。

 依頼を受け付ける際は難易度、依頼を達成するために何日拘束されるか、等の要素から依頼料が算出されるため、その額を支払わないと依頼として受け取ってもらえない。

 一方、依頼を受ける冒険者は、依頼の内容が書かれた「依頼書」をギルドから受け取り、完了した際に依頼元からサインを貰い、ギルドに提出する。

「依頼書」を確認したギルドは、あらかじめ設定された報酬を冒険者に渡す。このようにして冒険者は危険と引き換えに金銭を得るのである。


 後者は冒険者の身分を「冒険者ギルド」で保証する、というものである。ほとんどの都市ではいわゆる入場税というものをかけており、都市に入るためにお金を支払う必要があるが、都市で発行される身分証を持っている場合は免除となる。

 冒険者という職業はその性質上様々な場所を行き来することになるが、都市に入る度に税金を支払っていたのではたちまち貧乏になってしまう(入場税は意外と高く、安宿に泊まれるくらいの金額を取られる) 。

 そこで、税金を免除する身分証を「冒険者ギルド」で発行することにより、冒険者の負担を減らすのである。

 この身分証は定期的に更新する必要があり、更新をサボった場合は身分証としての効力を失う。効力を失った身分証を無理やり使用した場合は罪人として裁かれることになっており、その際は「冒険者ギルド」お抱えの追跡部隊が出動することになる。

 とはいうものの、依頼を終えて報酬を受け取る際に身分証も自動的に更新されるようになっているため、真面目に活動していればそんな事態に陥ることはほとんどないのであった。



「んで、この子は一体なんだ?お前ら、しばらく見ない間に隠し子でも設けてたのか?」

 クルムがじっと見つめていることに気付いた男性が冗談めかして言うと、

「そんな訳ないでしょ! ちょっと訳あってウチで預かってるのよ」

 とマルタが反論した。

「わかったから、そんなに噛みつくな。顔だちがお前らふたりのどっちにも似てないからすぐに分かるっての」

「全く……」


「何騒いでんだ? ……おお、グレイブ!帰ってたのか!」

 騒ぎを聞きつけたアルスが奥からやってくると、男性――グレイブの名を呼んだ。

「ああ、さっき戻ったところでな。他の連中も荷物の片づけをしてるところだ。……しかし、お前も隅に置けないなぁ、俺らのいない間に子どもを設けるとはなぁ」

 グレイブはニヤニヤとしているが、

「ああ、はいはい」

 アルスは軽く受け流すだけだった。

 クルムはマルタの後ろに隠れながらその様子をじっと見ていた。


 その後。グレイブと行動を共にしている女性冒険者がクルムを見つけるなり、今まで聞いたことが無いような歓声を上げながら(グレイブ談) ものすごい勢いで近寄ったが、あえなく逃げられてしまった。

 絶望にうちひしがれる彼女をグレイブは大笑いしていたが、暗黒オーラ全開の彼女にボロ雑巾にされてしまうという、どこかで見た光景を繰り広げたのであった。

次回はファンタジーには不可欠の"アレ"が登場します。


《今回のまとめ》

・「冒険者ギルド」は色んな依頼の管理と冒険者の身分保障をやってるよ!

・クルムはやっと1人で歩けるようになったって!


お読み頂き、ありがとうございます。

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