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めあリー・アンのハ壊とチェシャ猫の奮闘①

虹色の雨が降り続ける不気味な夜。

明日にメアリー・アンチームとチェシャ猫の戦いを控え、静まり返った城の窓枠に越しかけマシロは足をぶらぶらとさせながら考える。

胸の奥で渦巻く、正体不明の激しい鼓動。

初日に広場で話しかけて来た金髪の男性——真世の顔を見るたびに走る、灼けるような衝動。自分の中に、処理できない感情が存在している。

「……こんなところで何してるんだい、マシロくん」

ふにゃりとした頼りない声。

振返ると、そこには上下黒の服を来た真世が立っていた。さらさらの金髪、吸い込まれそうな黒目、誰もが見惚れる甘いマスク。……だが、その立ち姿はどこか情なく、頼りない。

「っ……!」

マシロの顔が一瞬で朱に染まる。激しい鼓動に胸を押さえ、窓枠から飛び降り声を荒らげた。

「は、話しかけないでくださいっ…自分は、あなたが……あなたを見ると、胸が激しく叩かれて、なんだかおかしくなるのです……! あなたが気になるのです……!」

真世は驚いたように目を丸くする。マシロは真っ赤な顔をして目をぎゅっと瞑り、必死に言葉を絞り出した。

「今まだ感じたことがないこの気持ち…。あなたのことが気になって仕方がないのです! これが……これが『恋』というものなのではありませんか……!?」

痛々しいほど真っ直ぐなマシロからの告白。

真世は顔を赤くし俯く。

「こ、恋…!??マシロくんが…俺に…」

1人でぶつぶつと何かを呟いたあと真世はキリッとした表情をつくりマシロの顔を見返す。

「こんなおじさんに簡単に告白しちゃダメだよ……それれに君のそれって本当に君の気持ちなのかな……?おじさんにはそう見えないなぁ」

真世の黒い瞳が、優しくマシロを見つめる。

「君と出会ったあの場所から君とそっくりの男の子の遺体が発見されたんだ。多分君は彼のーー。だからきっと君自身の気持ちではなく彼の初めて優しくされたときめきを君も感じているんじゃないかな??」

真世はマシロの肩に優しく手を置いた。

「君が俺に感じているのは、恋じゃない。君の気持ちでもない。君の中の遺伝子が、あの男の子の遺伝子が温かい『父性』や『愛』を求めて叫んだ残滓なんだ。君は誰かの恋の残像にならなくていいんだよ」

頭を撃ち抜かれたような衝撃が、マシロの全身を貫いた。

「遺伝子の……残滓……? 自分自身の、感情では……ない……?」

「そうだよ。……マシロくん。」

真世が静かに告げたその時ーー

ガタッ

「誰ですか!??」

置物の影に隠れていたのは日和だった。

「ごめんっ!マシロくんどこだろーって探してたらめっちゃシリアスで隠れちゃった…いきなりいなくなったから心配したよ」

「盗み聞きとはいい度胸ですね………まあいいです。日和、部屋に戻ります」

(日和が自分を心配……?変な感じですなんだかあたたかい)

マシロは片手で自分の胸をもう片方の手で日和の手を引っ張り首を傾げながら歩きはじめる。

「マシロくん…大丈夫?」

「愚問です。……明日、絶対に勝ちますよ。自分と、あなたのふたりで」

「……うん、そうだね。あとね、真世さんはあぁ言っていたけど僕はマシロさんの気持ちが全くなかったとは思わないよ。」

固く結ばれた、2人の本当の絆。

真世は2人の遠ざかる会話を聞きながらポツリと呟いた。

「……よし。俺も、あの子たちの頼れる大人でいないとな」

◆

【翌日:決戦】

『4回目のオ茶カいをハジめるワ、さアさアかき乱シテもっトもットワタシを楽しマせテッ。メアリー・アンチーム対チェシャ猫チーム』

転送されたのは、無数の巨大な歯車が静かに回る蒸気機関の塔。

「ミコト、レイカちゃん、サユリちゃん。下がってて」

金髪を揺らし、真世が自分の超能力『ささやかな身体強化』を全身に巡らせる。そしてライフルを構えると狙撃の姿勢をとり、マシロの戦闘不能を狙い正確なライフル弾を2発撃つ。

だがーーーー。

マシロに当たる直前ぐにゃりと空間が歪み完璧な軌道を描いていた弾丸が大きく逸れてコンクリートの壁にめり込む。

「ぇっっ…」

真世は目を大きく見開きライフルを構えたまま硬直する。今の弾は確実にマシロを捉えたはずだった。それを何かが弾いた??

それを見逃すマシロではない。

「ふふ。全力でいきますよ、おじさん」

感情のこもらない声で笑うと同時に、マシロが地を蹴った。一瞬で真世に近寄ると襲いかかる。

「くっ……!?」

真世は身体強化を極限まで巡らせ、ライフルの銃身でマシロの激しい拳を受け止める。だが、マシロの拳を受けたライフルは真ん中で折れてしまう、ギアの塔の床にマシロの冷たい足音が響いた。

「マヨの弾が逸らされた……!?」

後ろで真世の援護をしようとしていたサユリが眉をひそめる。だが、レイカはこの状況での冷静に自分の超能力『危険察知』を研ぎ澄ませ、敵の様子を探っていた。

(あいつの身体能力と超能力は怪物染みてる……けど、いくらなんでもマヨさんの狙撃弾をあの距離で避けるのは不可能だ。……何が起きたんだ??)

切れ長の瞳を彷徨わせマシロの背後でとまる。質のいいシャツとズボン穏やかそうな雰囲気の男ーー日和だ。

(あいつか………!!あいつの能力がマヨさんの弾を弾いたんだ)


「サユリッお前はマヨさん援護してっ、私があっちの男を狙う」

「了解ッ!」

サユリはすぐに自分の超能力『空間固定』を発動した。空間の特定の座標をピンで刺すように固定する能力ーー不気味な黒い手のような影がマシロの足を地面に縫い止める。

「はっ……!??」

足の動きを封じられ戸惑うマシロの隙を突き、サユリは真世の身体を引き寄せマシロの攻撃範囲から逃した。

一方、レイカは短剣を握りしめ、日和に突撃する。

(こいつの能力は厄介だけど、戦い慣れしてない素人同然。きっと2人同時の防御もできないはず……こいつを潰せばマシロも一気に叩ける!!)

「日和へ手出しさせませんー!」

マシロの顔から余裕が消え、焦りで染まる。



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