最終話 早く付き合ってもらっていい?
体育祭が終わり、期末テストも終了。
明日は待ちに待った夏休みだ。
今日は成績表を受け取り一学期最後の終業式をしに学校に来ていた関口たち。
「おい関口みろよ!俺の成績!」
「おーすごいすごいよかったなー」
「棒読み!」
「関口と伊藤は夏休みなんか予定あったりするの?」
いつも通りのやり取りをする二人に蒼井が質問した。
伊藤と関口は家が近いというのもあり互いの家事情を知っている仲だ。
伊藤はサムズアップしながらにっこにこの笑顔で言った。
「おう!こいつの家が————」
余計なことを言う前に関口が横腹を軽く攻撃する。
伊藤は倒れこみ悶絶する姿を見て無城と蒼井は苦笑するが関口が代わりに答えた。
「夏休みは結構暇な時間あると思うからみんなで遊びに行こうよ」
「お、まじ!?やった!関口からそれを聞けるのはテンション上がるね!」
「……俺も嬉しい」
体育祭の後、一週間くらいは結構関口たちの話題が大きくかなりの人だかりができていたのだが蒼井たちがいたおかげで大きくならずに済んだ。
そういうのもあり、関口はかなり感謝している。
あまり関口からこういうのは誘わないというのは知っているので蒼井と無城はテンションが上がっているというわけだ。
そして、この話を当然雪河が聞いておりちょっかいを出すように話しかける。
「へ~関口くん暇な時間結構あるんだ~?」
「う、うん……そうだけど、どうしたの?」
「いや~?別に~?どうかしたってわけじゃないけど~?」
そりゃそうだ。隣の席なのでこの会話も聞かれてしまう。
別に聞かれてまずい話ではないのでいいのだが、どこか気になる態度をしてくるので関口も負けじと攻撃をしてみることにした。
「もしかして雪河さんも一緒に遊びたいのかな?」
「……ッ————。」
まんざらでもなさそうな表情をして視線を逸らす雪河。こうなると思っていなかったので関口は少し驚きながらも頬を掻きながら言った。
「まぁ、雪河さんがよかったら……遊ぼうよ」
「ほんと!?やった~!」
雪河の表情はぱーっと明るくなり笑顔でそう言う。
しかしここでプチハプニングというかすれ違いが発生。
関口は皆で遊ぼうという意味合いで言っていたのだが、雪河は違う。
一緒に遊ぶ、イコール二人でという捉え方をしており周りにいた人たちは一斉に察していた。
(((これ、変なすれ違いをしてるよな)))
そして互いの目が合い、すぐに視線を逸らす。
関口は頭をポリポリ……雪河は毛先をくるくるとさせる。
その様子を見て皆がこう思った。
((((早く付き合ってくれないか?))))
もう全員、雪河が関口の事が好きだというのは分かっていた。
一部の人たちはあの体育祭があったから惚れた……とか言っているらしいが、一年生……特にこのクラスの人たちは「まだ付き合わないのか」と思うくらいなので不思議ではなかった。
むしろ好きになるのは時間の問題……もっというなら逆に今まで自覚していなかったのかという意見も見られる。
これも不思議なことに学校の人気者である雪河が好きな人が出来たら人気が低迷してしまう……と周りの人間は思っていたらしいのだが、そんなことにはならず……むしろ好感度が爆上がり状態らしい。
二人三脚での生徒会長との対決、そして相変わらずの容姿で魅了するその姿は人気が低迷するなどあり得ない。
なので全員、雪河の恋はおとなしく見守ろう……という形に自然となったのだ。
◇
終業式も終わり、成績表も貰い終わった関口たちは帰りの準備をしていた。
今日は一学期最後の登下校というのもあり、伊藤たちや布瀬……みんなで帰ることになった。
「何気にみんなで帰るのは初めてか?」
「確かにそうかもな、あっても俺ら四人とかだったから布瀬さんと雪河さんがいるのは新鮮って感じ」
「……確かに」
「朱音は成績表どんな感じだった?」
「ん?オール五だったよ」
「かぁ……さすがね」
高校入学して初めての成績表、そこでオール五はほんの一握りだ。
関口はオール四にちょっと五が入っているくらいだが、それでも十分すごい。
しかし布瀬の成績という言葉を耳にした伊藤は何か企んでいるような笑みを浮かべながら布瀬に話しかける。
「それで~?絵美里ちゃんはいくつだったのかナ?」
「うざこいつ、ぶっ殺していい?」
殺意マシマシの顔つきになりながら二人はいつも通りのやり取りをする。
伊藤はオール三に四が少し入っている感じ。それを見た布瀬はこの世の終わりってくらい落ち込む。
「負けた……私が……こんなやつに……」
「ハッハッハ!お前これから俺に敬語————」
これ以上言ったら殺されると悟ったのか伊藤は言うのをやめて「冗談冗談」といいながら後ずさるようにする。
「あいつらマジでめっちゃ仲いいよな」
「だよね!」
関口と雪河は二人のやりとりを見て微笑みながら言うのだが、伊藤と布瀬だけでなく蒼井と無城全員がそうツッコミをする。
「「「「あんたらがいうな!!!」」」」
「「……?」」
「いや、無理だからね?それはマジで無理があるぞ?」
「だって俺達普通じゃん、ね?雪河さん」
「う、うん……そうだね」
関口が雪河にそう聞くと雪河は毛先をくるくるとし少し不満そうにうなずいた。
小首をかしげる関口に対し、布瀬と伊藤は同時に言う。
「「お前が一番不思議だよな」」
「何が?」
どうして気づかないんだと言いそうになるがそれは野暮という奴だ。
しかし、鈍感にもほどがあるのも事実。こればっかりは仕方ない。関口は今まで女子と付き合った事もなければそういう雰囲気にもなったことがない。雪河もそうだが自分の恋心に気づくまでまだもう少し時間がかかりそうだ。
それでも、伊藤は案外早いかもしれないとも考えていた。
(中学の時からは明らかに変わってきているし……まぁ夏休みには気づくだろ)
というのも、ここ最近の関口の雪河に対しの態度が明らかに変わっていた。
すごい甘くなったというか、熟年夫婦みを感じるというか……それを見ていた人たちは全員雪河の事好きじゃんって丸わかりだ。
伊藤は今度関口に一つ芝居でも打ってみようと考え、振り返る。
すると二人は楽しそうに笑って話しており、それを見ていた人たちは心の中でこう思う。
早く付き合ってもらっていい?
そう思う毎日であった――――。
これでこの話はいったん区切りになりますが、他キャラの掘り下げや要所要所で意外と端折ったりしたりしてるのでもう少し書こうと思えば書けてしまいます。続きも好評だったら書こうと思います。
そうじゃなくても気が向いたら書くかもしれません。
ご愛読ありがとうございました。
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