第一章(4):旅立ちの決意と、仲間たちの願い
その時、ルシアン様が私の手を取り、優しい眼差しで私を見つめた。
「セラフィナ、お前のご両親にご挨拶したい。婚約したしな」
そう言いながら、ルシアン様は私の左手の薬指に輝く婚約指輪に、そっと指を滑らせた。
「えっ!? ル、ルシアン様!?」
ルシアン様の突然の爆弾発言に、私は完全にフリーズした。
まさか、まさか、まさかの「ご両親にご挨拶」!?
魔王様が!?
私の顔はみるみるうちに茹でダコのように真っ赤になる。
ルシアン様は、私の驚きを面白がるように小さく笑うと、エリアス様へ視線を向けた。
「エリアス、俺も佐倉花の世界に行くことは可能か?」
ルシアン様の真剣な問いかけに、エリアス様は顎に手を当てて少し考えた。その姿はまるで、難解なパズルを解く名探偵のよう。
「もちろん、理論上は可能さ!私特製ルシアン君のアクスタと宝珠さえあれば、セラフィナ君以外の皆も、まあ行ったり来たりはできるよ。ただね、ルシアン君は元々、佐倉花君の世界にいない人だからねぇ。魂が片方の世界にしかない場合、どうしても空間に微かな歪みが生じるのは避けられないんだ。あんまりゴリ押しは勧めないけど…今回はサービスしちゃう!私が神力でその歪みをきっちり安定させるから、一度くらいなら問題ないさ!」
すると、これまで黙って話を聞いていたアルドロンさんが、目を丸くして口を開いた。
「な、なな、なんと!ルシアンまで、佐倉花の世界へ行くとは!?もし可能であれば、私もぜひ同行したい!この目で、佐倉花の世界のさらなる事象を観察し、新たな学術的知見を得たいと考えている!」
エリアス様が、にこやかにアルドロンさんの言葉を聞き終えると、軽く肩をすくめてみせた。
「おやおや、アルドロン君までそんなに乗り気かい?君の知的好奇心には、いつも感心させられるよ。もちろん、君も一緒に行くのは問題ないさ。どうせなら、他の皆も行きたいんじゃないかい?」
ローゼリアちゃんもキラキラした目で私を見つめてくる。
「セラフィナちゃんの元の世界、行ってみたい!どんなところなんだろう…きっと、魔法とかないのかな?」
「うんうん!魔法はないけど、面白いものがたっくさんあるんだよ!例えば、空飛ぶ乗り物があったり、手のひらサイズの板で世界の誰とでも話せたり!ローゼリアちゃんもカスパール君も、きっとビックリすると思うなぁ!」
私はローゼリアちゃんの問いに、ワクワクを隠しきれない顔で答えた。彼女の純粋な好奇心が、私の胸をさらに弾ませる。
ああ、みんなを連れて行ったらどんな反応するんだろう!?
想像するだけでニヤニヤが止まらない。
カスパール君は、相変わらず腕を組み、ぶっきらぼうな表情をしていたけど、その瞳の奥には、わずかな好奇心が宿っているようだった。
ほらほら、君も行きたいんでしょ?
「ちっ…面倒なことになったな。だが、お前たちだけを行かせるわけにはいかないだろう」
そう言って、彼はわざとらしくため息をついた。その言葉の裏には、仲間を心配する気持ちがプンプン匂ってる。
もう、素直じゃないんだから!
その時、ガイア様が、そっぽを向いたまま、ぽつりと呟いた。
「べ、別に…あんたらの世界のおもちゃなんて、どうでもいいけどさ…でも、たまには、面白いのも、ないわけじゃないから…」
ガイア様!まさかのツンデレ発言!
私とエリアス様は思わず顔を見合わせた。
「え?ガイア様って、ツンデレ…?」
私が思わず口にすると、ガイア様は「なっ!?」と顔を真っ赤にして反論した。
「ち、違う!別にツンデレなんかじゃない!ただ…前にセラフィナが持ってきた『ポカモンのぬいぐるみ』とかいうやつ、あれはちょっと…いや、ほんの少しだけ、可愛かったから…」
照れ隠しのように言い訳をするガイア様に、私たちはもう笑いをこらえるのに必死だった。
可愛いなぁ、ガイア様!
「それで、今回は何を所望されるのですか、ガイア様?」
エリアス様が楽しそうに尋ねると、ガイア様は少し考えて、真剣な顔で言った。
「そうね…『呪物廻戦』とかいうアニメと漫画、それと、『伝説の剣士ゼルガ』っていうゲームを全部買ってきてちょうだい。あと、新しい『たまごっちゅ』も。全部よ、全部!」
まさかの具体的なリクエストに、私たちは再び驚いた。
あのガイア様が、そんなオタクみたいなリクエストを…!
ギャップがすごい!
「わ、わかりました!必ずや!」
私は力強く頷いた。
日本に帰って、ルシアン様やみんなと一緒に、両親に会って、そしてガイア様が喜びそうな、とびきり面白いお土産を探そう。
新たな冒険の予感に、私の胸は高鳴っていた。
これはもう、異世界観光ツアーだ!