表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

96/117

94話 ワタポンですが脈ありでしょうか?


 皆が神奈月さんの家に行ってる間、俺はとある場所に向かっていた。

 目的地の家に着いた俺は、早速インターホンを押した。


「……帰れ」


 インターホンからその一言だけ聞こえて、ブチッと切られた。

 再びインターホンを鳴らす。


「……」


 次は、無言で切られた。

 再びインターホンを鳴らす。


「……」


 次も無言だったが、床を強く蹴る足音が聞こえる。

 すると、家の扉が激しく開き、間髪入れずに俺の顔面に飛び膝蹴りが襲いかかって来た。

 俺は、思いっきり吹っ飛ばされて道路に転げ回った。


「ったく、じゃかぁし〜いっんじゃこらぁ!」


 飛び膝蹴りを喰らわせた本人は、激怒しながらこちらを睨みつけている。


「いやいや、まともに応対してくんないのが悪いじゃんか、しかも体罰だし」

「ふん!対して怪我しとらんだろ、それに口で言ってもわからんお前みたいな奴は、痛い目見ないとわからん!」

「はぁ〜これだから暴力教師はいやだ」

「お前、2学期の通知書全部1な」

「ええ!!こんな優等生にそんな仕打ちなくない?」

「お前は、殴った所で通用せん、次から精神面から攻撃することにする」

「酷い……酷い過ぎるよ!こんなか弱い優等生にやっていいことじゃない」

「飛び膝蹴りされて、ほぼ無傷の奴がか弱いわけあるかボケ、それで用件はなんだ?」

「ああ忘れてた、ワタポンに自転車を直して欲しくて来たんだった」

「俺は、業者じゃねぇぞ?」

「そこんとこお願いしやす!」

「はぁ〜ったく、とりあえず見せてみろ」

「流石、それでこそワタポンだぜ!」

「さっきまで、暴力教師っつてた口だと思えない手のひら返しだな」


 そんな訳で、ワタポンもとい石綿先生の自宅にお邪魔する。

 ワタポンは、俺が子供の時からよく遊んでくれた兄貴みたいな人だ。

 口は悪いが、基本的に優しくて押しに弱い。

 昔は、『デスメタル』と言われる手がつけられない不良だったのに、まさか教師になるなんて思わなかったな。

 しかも、生徒指導の先生だから、昔のワタポンを知ってる俺からしたら、説得力のかけらもないんだよね。

 今でも、ワタポンの知り合いから、それで笑われるって言ってたし。

 まぁ、俺もそんなワタポンに憧れて、ガッツリ不良してたから人の事は言えないけど。

 

「折角の休日を潰しやがって、ちゃんと後で働いてもらうからな」

「へいへい、分かってるって、それでどう?直りそう?」

「そんなすぐにわかるか、ちょっと待っとけ」

「はーい」


 ワタポンが、自転車を見てくれている間、俺は携帯電話をいじり始めた。

 しばらくして、家と扉が開いて1人の女の子が飛び出して来た。

 女の子は、寝癖が爆発していて、薄着のパジャマが着崩れて、右肩がはだけていた。


「おじさ〜ん、歯磨き粉の替えってどこっ……え!?卯月さん!?」

「おっ、(ゆかり)ちゃんおはよう〜」

「あっ、ちょ、えっと!失礼します!」


 紫ちゃんは、慌ただしく家に戻った。

 家の中から、激しい足音が聞こえる。

 そして、20分程してまた家から出てきた。

 爆発していた頭も綺麗な茶髪のロングストレートになっており、服装も少し大きめの白いトレーナーに黒いジーンズを合わせていて、しっかりお洒落な格好をしている。


「う、卯月さん、お、おはようございます」

「紫ちゃん、急いで着替えてたみたいだけど、どこか遊びに行くの?」

「ああ、いえいえ、いつも私はこんな感じですよ!」

「そうなんだ?」

「……ははっ」


 ワタポンが、何故か笑っている。

 紫ちゃんは、そのワタポンを鋭い眼差しで睨みつけていた。

 紫ちゃんは、ワタポンの姪っ子。

 訳ありで今は、ワタポンの家で一緒に暮らしている。

 確か、中学2年生で風鈴と同い年だったはず。


「まだ修理に時間かかると思うし、紫の勉強見てやってくれ」

「りょ〜かい」

「ええ!!それはちょっと……」


 紫ちゃんは、困った表情でこちらを見ている。

 額には、少し汗をかいている。

 あれ?嫌だったかな?


「嫌ならやめとく?」

「あっ!えっと……そういうつもりでは無くて!……10分!後10分待ってだけ待っててください!準備しますので!」


 紫ちゃんは、そう言って再び家に戻った。


「ワタポン、俺って嫌われたかな?」

「はぁ〜知るか、自分で考えろ」

「冷たいな!」


 ワタポンが、呆れた表情でしている。

 あれ?そんな嫌われるような事したっけなぁ?

 気をつけないと行けないな。

 10分後、息を切らせた紫ちゃんが家から出てきた。


「はぁ……はぁ……卯月さん、どうぞ」

「お、おう、お邪魔します」


 やっぱり、中学生といえば多感な時期だしな、必要以上に気をつけないとな!

 俺は、覚悟を決めて家に入った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ