85話 ヤキモチですが脈ありでしょうか?
「ごめんね〜この子下着でリビングとか歩き回る癖があるのわすれてたわぁ」
「いえ、俺は、丈夫なんで全く問題ありません」
「それならよかったわぁ〜」
「ちょっとちょっと!よくないよくない!なんで蓮華が、リビングにいるの!」
制服に着替えた紫陽花は、キャンキャンと子犬のように文句を吠える。すると、筒慈さんが紫陽花の近くによって、頬を片手でぎゅと捕らえた。
紫陽花の頬が指で押し潰されて、あひる口みたいになってて面白い。
「いつもいつも、女の子なんだから下着姿でうろつくなって言ってもやめない子は、少し痛い目を見ないとね」
「……ごめんなさい」
筒慈さんは、顔は笑っているが心は笑ってないような怖い雰囲気を出していた。漫画だったら後ろに『ゴゴゴゴゴゴゴゴ』って出てる。
やばい、この人絶対怒らせちゃダメな人だ。俺も気をつけておかないと。って言うか、今の口ぶりだと俺利用されたんじゃ?まぁ、いっか、いいものを見れたし。
「そもそも、紫陽花が寝坊しなきゃ、こんな事にならなかったでしょうが」
「うぐっ、そ、それは、その通りです」
「もう高校生なんだから、しっかりしなさい」
「や、やめてぇ!友達のいる前での説教は、きついよぉ!」
「嫌だ、その方が効くでしょ?」
「鬼!悪魔!」
水無月親子の説教を横目に、俺は朝ご飯を堪能していた。朝食のメニューは、鮭の塩焼きにじゃがいもの味噌汁と白ご飯。
脂の乗った鮭を、箸でひと口サイズに分けて口に運ぶ、鮭の塩のしょっぱさと脂の甘みが口に広がる。
そして、この鮭の余韻が口に残ってる間に、白ご飯をかきこむ。
いやぁ、うっんまいなぁ。じゃがいもの味噌汁も厚めのいちょう切りで切られたじゃがいもが、ホクホクとしていて、味噌の塩分と相まって美味しい。はぁ〜ほっとするなぁ。
「蓮華君、お口に合ったかしら?」
「はい、めちゃくちゃ美味いです」
「ありがと、おかわりもあるからどんどん食べてね」
「あざっす!」
その後、10分くらいで朝食を食べ終えた。空腹だったこともあって、2回もおかわりしてしまった。人の家で寛ぎ過ぎたな、反省しないと。
「こんなにいっぱい食べるなんて、さすが男の子ね」
筒慈さんは、ニコニコと笑って俺の頭を撫でた。年上の女性は、母ちゃん以外関わって来なかったからな、ちょっと嬉しさと恥ずかしさが葛藤していた。
隣の紫陽花は、ジトッと目を細めてこちらを見ている。なんだあの顔は? 確か前にも見たような……。
「っていうか、紫陽花今日は早く行くんじゃ無いのか?」
「……あっ、そうだった!」
「忘れてたんかい」
「後片付けは、私がやっておくからいっておいで」
「お母さんありがと!」
紫陽花は、バタバタとリビングを飛び出した。
相変わらず落ち着きがないな。まぁ、そんな元気な所が紫陽花らしいんだけど。
「では、俺も行ってきます、すみませんご馳走になってるのに、食器も洗ってもらってしまって」
「いいのいいの、紫陽花をよろしくね」
「はい、任せてください」
「次は会う時は、義理の母として待ってるわ」
「はい、任せて……ってえ!え?」
「蓮華ぇぇ〜早くぅ〜!!」
外から紫陽花の叫び声が聞こえる。筒慈さんは、クスクスと微笑んで俺に近づいた。顔が凄い近くまで来て、少しドキドキする。ふと見える谷間のホクロが目に入り、余計にエロスが増して緊張してしまう。
「冗談よ、半分ね」
「じょ、冗談ですかぁ……ん?半分?」
「ふふっ、ほら紫陽花が呼んでるわよ、行ってらっしゃい」
「は、はい!行ってきます」
俺は、逃げ出すように紫陽花の家から出た。あれが大人の女性か……すっげぇエロい事だけはわかる。その後、階段を降りて紫陽花と合流した。
その紫陽花の姿を見て、あの筒慈さんとのやりとりを思い出す。紫陽花もあんな風にエロくなるのかなぁ……最高だな。
「ちょっと、人のお母さんで妄想しないでよ!」
「ふぇ!?俺が、そんなことする訳ないだろ?」
「絶対してたね、今の顔は性犯罪者の顔だった」
「どんな顔だよ!」
「ふ〜んだ、どうせ私には、魅力なんてないですよ〜だ!」
紫陽花は、ヘソを曲げてそっぽを向いている。
一体俺が何したって言うんだよ。確かに妄想はしたけど、妄想まで奪われたら何も出来ないぞ!
仕方ない、神奈月さん直伝をあれを使うしかない。
「紫陽花は、可愛いよ」
「お世辞はいらないよ!」
「紫陽花は、可愛いね」
「ふん!私はどうせ女の子っぽくないよ!」
「紫陽花は、エロいな」
「そんなこと……って今なんて言った!」
「紫陽花は、めちゃくちゃ可愛いな」
「ちょ、はぐらかすなぁ!」
紫陽花は、顔を徐々に赤らめていく。俺の胸ぐらを掴んでぐわんぐわんと揺らしてくる。ここまで来れば後は畳み掛けるのみ。
「紫陽花は、寝癖がぴょんぴょん跳ねてて可愛いなぁ」
「な!ちょ!そんなとこ見るな!」
紫陽花は、急いで寝癖を両手で隠そうとする。しかし、隠しきれない寝癖がぴょんぴょんと余計に目立っている。
「紫陽花の今日の下着は、素晴らしくエロいなぁ」
「いや!やめて!もう恥ずかしいからやめてよ!」
「紫陽花は……」
「ごめんってばぁ!」
紫陽花は、頭から両手を離して、その両手で顔を隠し、しゃがみこんだ。顔は、真っ赤に染まっており、首から鎖骨までうすっらとピンク色になっていた。流石、神奈月先生が編み出した対紫陽花用話術『褒め言葉責め』だな。効果は抜群だ。可愛い紫陽花を見れたことだし、今日はいい日だな。
「よし、落ち着いたことだし行くか、紫陽花の自転車持ってこいよ」
「……」
紫陽花は、顔を隠したままピタッと止まった。その後、しゃがんだまま俺に近づいて、俺のズボンを指で摘んでクイクイと引っ張る。俺もしゃがめってことかな?俺は、しゃがんで紫陽花の方に耳を寄せる。すると紫陽花は、小声で話し始めた。
(あの……2人乗りで行こうよ)