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78話 花火ですが脈ありでしょうか?


 みんなで旅館の部屋に戻った後、部屋には真っ白な布団が5セット敷かれていた。

 脇に追いやられたテーブルに、中身がぎっしり詰まったレジ袋を置いて一息ついた。


「ふぅ〜買いすぎちゃった」

「そんなに食べたら太るわよ」

「大丈夫、私太らない体質だし」

「そんな……羨ましいです」

「……全くその通りだわ」


 文月さんと神奈月の顔が、悲しそうに虚空を見つめる。


「毎日運動すればいいだろ?」

「そりゃ、運動はある程度するけど……ねぇ?」

「そうですね、現実は残酷です」

「そんな事ないよ、毎日10kmぐらい走れば太らないよ?」

「そんなの出来るか!あんたはアスリートか!」

「紫陽花さんの元気が有り余ってる感じの一因が、分かった気がします」


 女子達のトークを横目に、買った炒飯弁当の蓋を開ける。

 コンビニのレンジで、温めたので炒飯から香ばしい匂いと湯気が立ち昇る。

 具沢山の少し湿った炒飯を、プラスチックのスプーンですくって口に運ぶ。

 丁度いい塩加減が、口の中に広がって美味い。


「うめぇなぁ、ただのコンビニ弁当のはずなのに、いつもより美味しく感じる」

「やっぱり、旅行の夜のコンビニ飯って格別に美味いよな」

「旅行バフかかってんな」

「ゲームみたいに言うなよ、美味しくなくなるわ」

「こうやって、旅館でだらだらするのも旅行の醍醐味だよな」

「それね!こうやって布団でごろごろするのも、いつもよりリラックス出来るし」

「そうだな、そしてあわよくば浴衣がはだけた姿を目に焼き付けないとな」

「そんな痴漢の眼球は、いらないわね」

「ちょっと神奈月さん?その鋭利なピースの手を近づけないでください」

「やれやれ、抉り取ってしまえ」

「おーい!親友の目が危険に晒されてるのに、寧ろ唆してんだ!」

「つい昼頃に裏切った親友まがいのことなんて知らないぜ」

「一度くらい経験して損はないわ」

「そんなことあるわけないわ!」

「あははははっ!やれやれ〜」

「危ないですよ!」


 どんちゃん騒ぎしながら、次第にみんな次々と疲れて眠りについた。


 しばらくして、目覚めると部屋の明かりが消えていた。

 窓から月の光が部屋を照らして、部屋が結構散らかってることがわかる。


「あちゃ、お熱いこって」


 周りを見渡すと、蓮華が寝てる所に紫陽花と文月さんが仲良く並んで寝ている。

 こりゃ、起きた時一悶着ありそうだな。

 翌朝が楽しみだ。

 あれ?そういや、神奈月がいないな?

 どこにいるんだ?

 俺は、神奈月探していると、部屋にはいなかった。


「ん〜となると外か?気になるし、探して見ますか」


 俺は、引き戸を静かに閉めて、旅館から外に出た。今日は、一段と月明かりが強い。

 そのせいか、砂浜が冷たく光ってるように見える。折角だから月光浴でも楽しみながら探しますかね。

 砂浜に降りると、神奈月が海辺に近くにいた。

 しゃがんで何かしてる。

 隣にバケツが置いてある。

 俺は、神奈月に駆け寄り、話をかける。


「よ、何してんだ?」

「なふっ!」


 神奈月が、変な声を上げて驚く。

 そんな声出せたんか。


「そんな事でこそこそ何してんの?」

「いや、なにも……ってなんでこんな所にあんたがいんの!」

「ふと目が覚めてな、部屋にお前がいなかったから気になってな、それで何してんの?」

「……ちょっとね、花火してなかったなって」

「ああ花火か、そういややってなかったな、って1人でやるこたねぇだろ?」

「……だって、海辺の花火するの楽しみにしてたし」


 神奈月は、人差し指で砂をグルグルと回しながら、明後日の方向を向いている。

 顔が、月光で赤くなっていることが少しだけ見える。

 なんだ、恥ずかしくて言えなかったのかこいつ。


「ったく、仕方ねぇな俺も付き合ってやるよ」

「私は、頼んでないわよ」

「へいへい、じゃあ部屋に帰っときますよ」


 俺は、旅館に向かって歩き出すと、服の裾が引っ張られて動きを止められる。


「神奈月さん?」

「で、でも……どうしても花火したいのなら、別に一緒にやってあげなくもないわよ?」

「……はぁ〜へいへい、一緒にやりたいですよ」

「ま、全く、正直に言えばいいのに」


 おいおい、超大型ブーメラン突き刺さってんぞ。

 そして、2人だけの花火大会が始まった。

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