74話 水溜りですが脈ありでしょうか?
私達は、蓮華と分かれた後、温泉を満喫していた。
大浴場には、私達しかいなかったのでほぼ貸し切り状態で楽しんでいた。
「よし!一通り回った事だし、サウナに行こうか!」
「嫌よ」
「えっ!なんで?」
「普通に暑いのが嫌」
「あの汗をかきまくった後の水風呂が、最高に気持ちいいのに〜」
「私で良ければ一緒に行きましょうか?」
「本当に!よしそうと決まったら、早速行こう!」
「折角だし、なんか賭けたら?」
「ほうほう、それはいいねぇ」
「では、先に出た方が負けで、負けた方は罰ゲームを受けるって事でいいですか?」
「おっ、向日葵ノリノリだね!そうだね、罰ゲームは勝った方が決めるって感じでいい?」
「望む所です」
「では、2人とも位置について」
サウナの前に私と向日葵が構える。
お互いに真っ直ぐにサウナの扉を見つめる。
「よ〜い、どん」
楓ちゃんの号令と共にサウナに入った。
サウナの中は、二段の大きい段差があり、そこに等間隔でサウナマットが敷かれている。
その段差から見て正面に、時計とTVが設置されている。
そして、隅っこに石がくべられた蒸気を出す機械が置いてある。
私達は、一段目の真ん中に座った。
入ってから10分が経過した。
既に息が苦しく、タオルも高熱になっている。
そしてここで、追い討ちをかけるかの如く、隅っこの機械からじゅわぁと音を立てて、蒸気がモクモクと立ち昇る。
汗が肌を伝い落ちていく。
ここで、向日葵が私を凝視してることに気付いた。
「そんなに......はぁ、見つめてるてどうしたの?」
「あっすみません、紫陽花さんの谷間で水溜りが出来ていたので、凄いなぁと思ってつい見てしまいました」
「へぇ?」
自分の胸を見ると、向日葵の言った通り谷間に汗が溜まっていた。
なんか恥ずかしい。
私は、急いでタオルを絞って胸元を拭いた。
向日葵は、依然として凝視している。
え?なんで?そんな純粋な目で見ないで欲しい。
「紫陽花さん!」
「な、なに?」
「どうして、そんなに胸が大っきくなったんですか?秘訣があるなら教えて欲しいです!」
向日葵は、真剣な眼差しで私を見つめる。
向日葵の翡翠色の瞳が、サウナの蒸気と汗で潤んでキラキラと輝いて見える。
それが、向日葵の純粋なイメージを可視化してるみたいで可愛い。
って向日葵に見惚れてる場合じゃあないよ!
「えっーと、胸が大っきくなった秘訣だっけ?」
「そうです!」
「ん〜特に思いつかないなぁ」
「そうですか、では何か変わった事はありましたか?」
「変わった事?」
「胸が小さい時と何か変わった事ってありましたか?ほんの些細な事でいいですよ」
「う〜ん」
変わった事。
なんかあったっけ?
......そう言えば、胸が小さい時はお洒落とかしてなかったな。
男の子みたいな格好して、同級生からも男女って呼ばれてたっけ。
でも、それが嫌になった。
あの時から。
「......蓮華を本気で好きになった」
私は、急いで口を掌で塞いだ。
ゆっくりと目だけを動かして、向日葵の方を見た。
向日葵は、目をキラキラとさせたまま、ほぼゼロ距離って言うほど私に近づくていた。
「その話、もっと詳しくお願いします」
私は、サウナから出て、水風呂に逃げるように飛び込んだ。