71話 子ども扱いですが脈ありでしょうか?
俺は、なにを見せられているんだろう。
目の前には、キスをしている女の子が2人がいた。
その衝撃的な状況は、俺を沈黙させるのに十分なものだった。
その後、文月さんが海に駆け出すと神奈月は、その場に蹲り、動かなくなった。
「お、おーい、神奈月大丈夫か?」
「……そっとして……お願い」
「分かった」
神奈月は、しばらくして、復活した。
少し頬が赤くなっている。
「ったく、無茶すんなよ、らしくねぇ」
「……だって、見てて歯痒かったし」
「お前は、ちっちゃいくせに大人のふりし過ぎだ」
「ちっちゃいいうな」
「まぁ要は、抱え過ぎなんだよ、紫陽花も文月さんも好きなのは分かってる、けど少しくらい俺にも手伝わせろ」
「……えい」
「うわっ、ちょ、なになに!?」
神奈月は、頭を俺の胸にコトンと寄り掛かった。
水着なのもあって、太ももに髪の感触や、頭の温度等が直接伝わってきてくすぐったい。
「あら?顔が赤いわよ、子ども扱いしてた私を意識したのかしら?」
「べ、べっ別に意識してねぇし!」
嘘だ、めっちゃくちゃ意識している。
密着してるから、なんかいい香りするし、すぐ近くに顔があるから、自然に目があってまともに神奈月を見れない。
「へぇ〜そんな事言うんだ」
「ひゃん!」
耳にゾワっと冷たい指の感触がする。
俺の耳たぶを彼女の冷たい指で、引っ張られたり撫でられたりして、全身の鳥肌が止まらない。
「気持ち悪い声出さないでよ」
「ならその指の動きを止めてくれ!」
俺の懇願も虚しく、そのまま耳たぶをいじられたまま時間が過ぎた。
「……ねぇ、桔梗君」
「……どうした?ようやく俺の耳たぶを解放してくれるのか?」
「それは、無理」
「なんでだよ!」
「そんなことより、あのね、その、私の……水着どうかな?」
「お前の水着?……まぁ、似合ってるぞ」
「そ、そう、良かったわ、ビキニなんて似合わないと思ってたから心配だったの」
「自分で用意したんじゃないのか?」
「自分で用意して、タオルで丸まってくるやつはいないわ」
「それもそうか、つーことは紫陽花か」
「正解」
「なるほど、てっきり大人っぽい格好で背伸びしたんかと思ってた」
「……」
「あっ……今のは忘れて」
やばっ、本音が出た。
すると、彼女の細い腕で上半身を押されて、シートに倒れ背中を打った。
そして、上から覆いかぶさるように、彼女が俺を凝視する。
「……子ども扱いしないで」
「お、おう、ごめん」
「……これでも……」
「ん?なんて言った?」
「なんでもない」
「痛っ!なにすんの!」
思いっきり、彼女の平手打ちをくらった。
頬がじんじんと熱くなる。
「あなたがムカつく顔してるからよ」
「酷っ!」
「あの〜お取り込み中非常に申し訳無いのですが〜」
俺達は、驚いて声の方向を見た。
そこには、蓮華がいた。
「あの〜これは、その〜」
「……どこまで見てたの?」
「……押し倒した辺りですね」
「……死ね」
「痛い!」
そのまま俺は、神奈月に馬乗りでボコボコにされるんだった。