68話 水遊びですが脈ありでしょうか?
「ん?俺なんかしたっけ?」
蓮華は、そう首を傾げて言う。
「……いや、なんでもない!」
私は、蓮華の肩から手を離して、海に駆け出した。
海水を掬い上げて、蓮華に思いっきりかける。
「うおっ、しょっべぇ!」
「ぐふふ、油断したな!向日葵、やっておしまい!」
「え?あ、はい!」
向日葵も後ろから応戦して蓮華に海水をかけてくれた。
「ちょ、顔面狙いすぎだろ!」
「弱点を狙うのは、基本だよ!」
「ふふっ、なんだか楽しくなってきました」
「仕方ない、こうなったら……」
次の瞬間、私は顔面を鋭い水で撃ち抜かれた。
その驚きで、体勢を崩して浅瀬に尻餅をついた。
向こう側でも、パシャンと水音を立てて向日葵が尻餅をついている。
「さーて、反撃を始めようか」
蓮華は、両手にプラスチック製の水鉄砲を持っていた。
両方の水鉄砲の銃口をこちらに向けて構えた。
「あの〜蓮華さん?女の子にそんなことしちゃいけないと思いますが……」
「問答無用」
「あばばばっ、ちょ!しょっぱい!めちゃくちゃしょっぱいって!」
躊躇なく、私の顔面を鋭い水が襲いかかる。
髪と全身がびっしょり濡れてしまった。
「よーし次は、向日葵の……」
「蓮華様、こっちを向かないでください!」
蓮華の声を遮るように、叫ぶ向日葵。
それもそのはず、向日葵は尻餅をついた衝撃で私と同様に海水をかぶってずぶ濡れになってしまったんだ。
つまり、白いシャツが濡れて、向日葵のオレンジ色のVネックビキニが透けて見えているのだ。
普通にビキニを着るより、色っぽい姿になっているので、向日葵は、顔を真っ赤にしてビキニの部分を必死に腕で隠している。
しかし、蓮華の振り向く動作は止まっていない。
私は、とっさに立ち上がり蓮華の目を隠した。
「ふぅ〜間一髪だったね」
「……紫陽花さん、ありがとうございます」
「あれ?俺が悪いの?」
「……まぁ、そうだね、元を辿れば蓮華が悪い」
蓮華が、天然タラシ野郎なせいでね。
本人には、言っても意味無いから言わないけど。
「どゆこと?」
「一生悩んでな!」
「酷っ!」
「向日葵、楓ちゃんのとこ行ってきて、タオルもらってきたら」
「はっ……はい、そうします」
向日葵は、ビキニの部分を隠しながら立ち上がり、楓ちゃん達の所に向かった。
ふぅ〜浅瀬とはいえ、ここで気絶されたら危ないもんね。
「あの〜紫陽花さん?」
「どしたの?」
「いつまで、この状態なのでしょうか?」
「ん?」
よくよく考えると、私このビキニのまま、蓮華に密着してるんだよね?
もっと言えば、露出が一番多い状態の胸を、蓮華の背中に押しつけているんだよね?
……やっちった。
「俺と致しましては、このまま紫陽花さんの胸を堪能したいなと思っております」
「な、何言ってんのこの変態!」
「痛い痛い!目を握り潰すな!」
全く、困った奴を好きになったもんだとため息をついた。