66話 黒いフレア生地に包まれたビキニですが脈ありでしょうか?
俺達は、部屋から追い出され一足先に水着に着替えて、海に来ていた。
美しい白砂と青く透き通った海が一面に広がって、景色が非常に良い。
浜辺には、よくわからないヤシの木が植えられていて、南国ムードを醸し出している。
「さーて、適当な場所にパラソルとシートを設営するか」
「了解」
俺達は、ヤシの木で日陰が出来ている所に、パラソルとシートを設営した。
とりあえず、紫陽花達が来るまでパラソルの下で待つことにした。
「さーて、待ってる間にビニールボールでも膨らましておきますかね」
「おっ、ビーチバレーでもやんの?」
「そのつもり、紫陽花達の水着楽しみだな〜」
「それな、その為に海に来たと言っても過言じゃない」
「なぁ、どんな水着着てくるか予想しないか?」
「いいねぇ、まず紫陽花からしようぜ」
「紫陽花かぁ、絶対ビキニはないな」
「それな、つーかみんなビキニじゃなさそう」
「多分、あのーあれってなんて言うっけ、セパレートみたいなのって」
「セパレートって、おばあちゃんが着るやつじゃん」
「違う違う!ちょっと待っててな、今調べるから……あ!これこれ、上着と下着で別れてるやつ、へぇ〜タンキニって言うんだ」
「見して見して、ほうほう……確かにありそう」
「だろ?じゃあ次は、神奈月さん行くか」
「スクール水着」
「お前、殺されるぞ?」
「大丈夫、ちゃんと殺すわ」
「うおっと、びっくりした!」
後ろを向くと、神奈月さんがいた。
しゃがんで全身をタオルで包み隠しながら、桔梗を鋭く睨んでいる。
一方桔梗は、日光のせいか眼光のせいかわからないが、汗をだらだらとかいて明後日の方向を見ている。
「神奈月さん、その格好どうしたの?」
「ちょっと仕返しにあっちゃてね、羞恥心と戦ってるの」
「お、おう?よくわかんないけど頑張れ」
「ありがと、桔梗君、後で覚悟しててね」
「……はい」
桔梗は、静かに頷いた。
そういえば、神奈月さんはいるのに、紫陽花と向日葵がいないな。
「神奈月さん、紫陽花と向日葵は?」
「もうすぐ来ると思うわよ、2人とも水着姿可愛かったわよ」
「ほうほう、楽しみですな」
「ちょっと!ハードル上げないでよ!」
ビーチの入り口から2人がこちらに近づいてきた。
紫陽花の後ろに隠れて向日葵が顔だけ、ひょっこりと出している。
肝心の水着は、2人とも白いTシャツを着てるのであんまり見えない。
だが、Tシャツ襟元や裾からかすかに見える水着の下部や紐がいい味を出している。
まるで、下着のような見えるか見えないかのこの葛藤によるソワソワがたまらない。
「ずるいわよ、私は上に何もきてないのに」
「へーんだ!楓ちゃんだって、タオルで隠してるじゃん!まぁ、楓ちゃんがタオルを取ったんなら、私達もTシャツを脱いでもいいよ!」
「え?ちょ!紫陽花さん!」
「……分かったわ」
神奈月さんは、立ち上がり、タオルをするりと砂浜に落とした。
タオルの生地から、彼女の肌が見えてくる。
そして、黒いフレア生地に包まれたビキニが顔を出した。
腰にパレオを付けて、凄く高級感あふれる姿は、非常に綺麗だった。
つーか、めちゃくちゃお洒落な水着だな。
すげぇ。
俺は、思わず拍手をしていた。
「おおー、神奈月さんすげぇ綺麗だよ」
「……そういうのは紫陽花に言いなさいよ、でもありがと」
「おーい桔梗、お前も見ろよめちゃくちゃ綺麗だぞ」
「じゃあ、お言葉にあまえっ……ぎゃあああ!!」
桔梗が、振り返った瞬間だった。
神奈月さんは、恐ろしい速さで桔梗の両眼を捉えて、指で突き刺した。
「脳内中学生の貴方には、刺激が強すぎるわ、やめておきなさい」
「ぐおぉぉぉぉ!!見られたくねぇなら、目潰しする前に言いやがれ!!」
桔梗は、両眼を両手で押さえながら、その場に蹲った。
あれは、絶対いたい痛いわ。
俺は、桔梗の背中を優しく撫でた。
「さて、じゃあ約束通り見せてくれるわよね、紫陽花ちゃん?」
紫陽花は、額に汗をにじませ、目を泳がせていた。